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映画『はちどり』

ドア越しに母親を呼んでも呼んでも、返事もそこにいる気配もない。

ウニの母親は頭が良かったけれども家庭の事情で大学に行けなかった。

それで自分の事を何もできないと思い込んで、日常の生活や店の仕事に追われて日々疲れ切っていて、子どものことを気にする余裕がない。

大学なんて本来必要ではない。

学歴社会は崩れかけている。


自分の事を自分で肯定することができないと

人は生きることが苦しくなる。


主人公のウニは中学2年生の14歳。

ソウル大学を目指して父親のプレッシャーを感じながら勉強している兄。

そのストレスから自分の言うことを聞かないウニを殴る。

ウニがこのことを訴えても男女差別があり、長男は優遇されている。

姉は期待されていないことから夜遊びをしている。


ウニは付き合っている男の子がいるけれども

その子と連絡がつかないようになったり

その男の子が別の女の子を楽しそうにしているところを見たり

それからまたその男の子が現れると

仲良くしてくれていた後輩よりも、その男の子といることを優先する。

また今度は

その男の子の母親が侮蔑して仲を引き裂く。

最後にまた男の子が謝って来たけれども

今度はウニが突き放す。

軽く見られていいようにされるのは

まっぴらごめんだ。


橋が落ちた事故に姉が乗るはずだったバスも巻き込まれて

多くの人が亡くなった。

その日の夕食の時

兄がむせび泣く。


母親もやっと子どものことを見るようになる。

亡くしたかもしれない自分の子どもが生きていることを噛みしめる。

生きていることは

それだけで素晴らしいことだと分かったのかもしれない。


子どもは親がきちんと守り支えることが必要なのだ。

親ができない時には

その親を支える人が必要となる。


14歳の感受性の高いウニ。

家よりも、しこりを取る手術をした病院が落ち着くといったウニ。

父親は顔に傷が残ることを悲しみ泣いていた。

自分の事で泣いてくれることを嬉しく感じている。


父親も母親も自分のことばかりを考えている。

気持ちの余裕がない。


この映画監督の中学生の時代では

それくらいの時代だったのだ。

未熟な社会。


あの14歳の時に戻るという悪夢がこの映画の土台となった。

自分で選択できない生きる環境。

どうにもならない理不尽が渦巻く環境。


その中で漢語塾の新しい先生がふわっと支えてくれた。


その先生は

「暴力に黙らないで」と言った。

暴力が日常的にあった時代。

今でもある。


理不尽を受け入れるのではなく

言葉で嫌だと意思表示をすることが必要なのだ。

子どもだからこそ守られないといけない。


社会の考え方を変えていく原動力になる。

激動の時代において

社会が大きく変わってきている。


すべての人が尊重される時代が

必要とされている。

危機的状況を認識することこそ

変革の機会となる。


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