見出し画像

等級制度の考えと違いを学べる!「等級制度の基本書」

以前、「人事評価の教科書」を紹介しました。

人事制度はおおよそ「等級」「評価」「報酬」の3つからなる、がいわば王道とも言えますが、前回の評価に引き続き、今回は等級制度についての本です。同じく労務行政から出版されています。

等級制度の違い

さすが「基本書」というだけあり、等級制度として主流となっている

  • 職能資格制度

  • 職務等級制度

  • 役割等級制度

について紹介されています。本記事でもここにフォーカスしていきます。

職能資格制度

職能資格制度は、高度経済成長期から存在する、個々の職務遂行「能力」に目を向けたものです。
「能力」というと、またあいまいさを生みますが、これは徐々に能力が向上していくだろう、さらに言うと、能力は衰えることはない(だから給料も下がらない)、という終身雇用、年功序列を前提とした考えのもとに存在します。
また、職能「資格」であるため、資格と役職が分離されており、本人の能力が上がれば昇格ができる、というものです。
これはデメリットを伴うもので、部長級の資格の人があふれている、しかしそんなに部長のポジションはない、という際に「部長補佐」などというポジションを新設する、さらには不要な職務を増やしてしまう、という問題点もあります。

職務等級制度

職務等級制度はその名の通り、「職務」のレベルに応じて等級が決まるものです。このため、先述した不要なポジションが生まれる、といったことは起こりません。所謂「ジョブ型」もここに入るといえます。
しかし、職務がなくなるということは仕事がなくなる、すなわち極端な話、クビになることもあり得ます。実際は配転することなどがとられるわけですが、例えば営業部長から経理部長へ異動した場合、両者の職務価値が異なるれば異動後には賃金が改定されることになります。
また、そもそも「経理部長」のポジションが空かないと異動はできないため、職能資格制度に比べて昇格機会が限定されます。これが職能資格制度であれば、営業部長と同じ等級のまま「経理部スーパーバイザー」的なポジションを作る、という対処法(荒業?)もできるのでしょうね。
加えて、「営業部長」「経理部長」がどのような職務内容、レベルであるかを示す、「職務記述書」の作成とそのメンテナンスも必要です。

役割等級制度

最後に紹介されているのが役割等級制度です。
「役割」とは能力に引き続きあいまいさを生みやすいワードですが、英語で表すと「Mission」になります(そのため、ミッショングレードとも言われます)。与えられた「役割」(これは会社のビジョンなどからブレークダウンされたもの)をこなせるかどうかで等級が決まります。ここが職能資格制度(遂行能力で決まる)や職務等級制度(職務価値で決まる)との違いです。いいとこどりに見える一方、特徴がない制度であるため導入しても効果が見えづらい、と言えます。

終わりに

「職能資格」「ジョブ型」「ミッショングレード」…なんとなく聞いたことはあるけれど、横断的に見たことは(個人的には)初めてであり、学びのある本でした。本書では実際の導入に向けたスケジュール、ポイントまで一連の流れが触れられています。これから導入を考える方にも、とりあえず違いを知りたい方にもおすすめの一冊です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?