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働くひとのキャリア焦燥感~漠然とした焦りはどのように生まれるのか~

仕事を続けていくうちに、「このままでいいのか」という、得体の知れない焦りを抱くことがあるのではないでしょうか。
本書はその焦りを「キャリア焦燥感」と表現し、主に若年就業者を対象にしたアンケートをベースに多角的に分析しています。

こちらの本は坂井風太氏が「組織と評価に悩む若手に薦める6冊」で紹介していた本で、GWの課題図書として読みました(若手と言える歳ではないのですがそこはスルーで…)。


焦燥感の要因とは

この焦燥感とやらはどこから来るのでしょうか。本書では主に4つから挙げています。

  • キャリア探索の停滞

  • 所属組織からの低い評価

  • 友人・知人のキャリアとの上方比較

  • WLBの欠如

キャリアが思い描いているように進まないとき、人事評価などがされないとき、同期と飲んだらすごい仕事していそうと感じた時、家庭などとの両立が図れないとき…といったところでしょうか。
どれも共感できるところですね。
そしてこれらに「切迫感」が増すと焦燥感が生まれ、離転職意思につながることがあるそうです。逆に言うと、切迫しているとは言えない、「このままでいいのかなあ…」程度の漠然としたレベルであれば、転職活動といった行動には結び付きにくい、ということになります。

ワークエンゲージメントとの関係

ワークエンゲージメント(働き甲斐)との相関はどうでしょうか。

  • エンゲージメント高い=ポジティブで充実した心理状態=やりたい仕事がはっきりしない状態(キャリア探索の停滞)でも焦りを喚起しにくい

  • エンゲージメントが低いと切迫感を介して離転職意思に結びつく

  • なお、エンゲージメントが高くても、友人知人とのキャリア比較時やワークライフバランスが充分でないときは離転職に結びつきやすい

ポジティブだと漠然状態でも焦りにならないみたいですね。目先の仕事への熱中が、焦りを抑制するとも見えそうです。
エンゲージメントが低いことによる切迫感はやはり、というところですが、友人との話やワークライフバランスといった仕事外の要因から「仕事はポジティブ、キャリアはネガティブ」という状態に陥ることは見逃せませんね。

若い時の苦労は買ってもせよ、とは言いますし、それがワークエンゲージメントにも(時間差で)寄与しそうです。
しかしある日大学時代の同期から「すごいスケールの大きそうな仕事してる話」(←これが漠然、隣の芝は~の極み)を聞いて闇落ちしてしまう、と。想像に難くないですね。

キャリア焦燥感の緩和要因

一生焦っている、ということも無きにしも非ずでしょうが、おそらくある程度の「波」があるはずです。焦燥感を和らげるのはどのような時なのでしょうか。
様々な要素がありますが、例として以下があるようです。

  • 短期目標の設定

  • 自分の考えや現状の整理

  • キャリア相談

  • 仕事への積極的取り組み

  • 有意義な仕事経験

ポイントは「内省」「仕事への打ち込み」と言えそうです。
目標を立てることや誰かに相談することで内省が促される。こうしたことで視野も広がり、焦りも抑えられる。仕事については前述もしていますが、もやもやしているよりはまずは仕事すること、その中で意義を見出すことで焦りもなくなっていくのでしょう。
一方で、焦りを生み出すのが

  • 社外の勉強会や交流会の参加

だそうです。これは大変に興味深い。知見を得ようと社外に繰り出したら、周りは同い年なのにすごいことばかりしているように見えて(勉強会で話を聞くとより顕著に感じるでしょう)、焦りが増して帰ってくることがありうる、と。用法用量は正しく守る必要がありそうですね。

おわりに

漠然とした焦りの正体、そしてその解消法が触れられる一冊です。
目標を決めて行動し、振り返ること、今の仕事も大事にすることが焦りを減らす第一歩と言えそうです(友人や交流会での話はほどほどに…)。
本書では心理学的な観点や、様々な相関関係も取り上げられているので、一度読んでみると面白いですよ。

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