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ライオンズ、ペナントレース前期を振り返る【6/2】

ペナントレースも前期が終わり、ライオンズは26勝25敗1分けで4位。昨シーズンリーグ優勝したことを思えば、必ずしも満足できませんが、菊池雄星・浅村栄斗・炭谷銀仁朗の3人が抜け、開幕前に想定していた、内海哲也・榎田大樹・松本航の先発投手3人が間に合わなかった事を考えれば、悪くない成績でしょう。

当たり前の様に「前期」と書いていますが、一昔前はオールスターゲームを境に「前半戦」「後半戦」と分けていました。しかし交流戦が始まった現在は開幕から交流戦開始までの約二か月を「前期」、交流戦からオールスターゲームまでの約一か月半を「中期」、そして最後の約二か月半を「後期」とするのが良いのではないかと思い、私が勝手に定義づけしております。


チーム成績


攻撃陣は2018年との比較をすると、打率もOPSも昨シーズンのどの月よりも下回っており、浅村栄斗の後釜として3番を任されたものの、1番とは求められる役割の違いに戸惑ったのか中々調子が上がらなかった秋山翔吾、セカンドを任されたものの打撃不振に陥った外崎修汰、

空いた外野のポジションを埋めるべく期待を掛けられながらも、未だ低空飛行が続く木村文紀と金子侑司など、一人の選手が抜けたことによる悪い意味での波及効果が生まれ、大きすぎる穴を埋めきれていません。

一方の投手陣も先発投手は防御率が5点以上、WHIPも1.50を超え、QS率が40%を割り込むなど、崩壊寸前と言っていいほどの有様。

救援投手も与四球率(BB%)、奪三振率(K%)ともに12球団ワーストと厳しい数字が並んでいます。


個人打撃成績

ここで気になる選手を上げていくと、まずは秋山翔吾。

ここ3年は判で押したように「高い次元」で同じような成績を残しており、その姿はもはやマシーンのよう。
「打率」(2017年).322→(2018年).323→(2019年).322
「OPS」(2017年).933→(2018年).937→(2019年).945

これだけ高次元の成績を残していますが、更に良くなっているのがボールゾーンスイング率で
(2017年)23.9→(2018年)22.5→(2019年)20.9
とボールに手を出さなくなっており、この影響からか四球率(BB%)が
(2017年)10.9%→(2018年)11.2%→(2019年)13.8%と増加。
バッターとしては完成形に近づいているのではないでしょうか。

続いて山川穂高。シーズン60本ペースでホームランを量産していますが、ホームランを打つには打球を上げる必要があり、フライ打球率が
(2017年)55.3%→(2018年)58.0%→(2019年)63.0%
と上がっており、フライボールにおけるホームランの割合が
(2017年)27.4%→(2018年)23.3%→(2019年)31.9%
となっているのはその証左と言えます。

そして現在、パ・リーグ首位打者の森友哉。四球率(BB%)はほぼ横ばいですが、三振率(K%)が減っており、更に手ごわいバッターになっています。
「四球率」(2017年)14.5%→(2018年)12.7%→(2019年)13.1%
「三振率」(2017年)16.6%→(2018年)19.0%→(2019年)13.6%

今シーズンのライオンズはこの3選手が打線を牽引していますが、逆に言えばこの3選手に依存しており、それ以外の選手との二極化しているのは不安です。

外崎修汰の場合は打率が中々上がってきませんが、ホームランを除くフェアゾーンの打球が安打になった割合(BABIP)が
(2017年).320→(2018年).335→(2019年).258
と若干不運な面もありますので、調子が上がってくる可能性は十分あります。

源田壮亮の場合、打率は過去3年間ほぼ同じですが
(2017年).270→(2018年).278→(2019年).271
大きく変わったのが三振率(K%)
(2017年)15.5%→(2018年)15.2%→(2019年)9.5%
過去2年、100個以上三振しており、ボールゾーンスイング率およびスイングストライク率の低下
「ボールゾーン」(2017年)31.7%→(2018年)28.8%→(2019年)26.3%
「スイングストライク率」(2017年)6.8%→(2018年)6.4%→(2019年)4.7%

を見ても、改善に取り組んでいるのが分かります。

ただしこれには弊害もあり、長打力(IsoP)が落ちています。
(2017年)0.82→(2018年)0.96→(2019年)0.51
二塁打こそ11本あるものの、三塁打でありホームランは未だ0本。

辻監督が求める二番打者はつなぎ役であるので、様々なものを犠牲にした上でのバッティングとなりますが、その中でそれだけ「振る」事と「当てる」事のバランスを保つか、問われるところです。

中村剛也の場合、山川穂高同様ホームランバッターであるにも関わらず、ゴロ打球率が増え、フライ打球率が減っているのは気がかりです。
「ゴロ打球」(2017年)38.0%→(2018年)46.1%→(2019年)50.0%
「フライ打球」(2017年)55.1%→(2018年)46.1%→(2019年)41.3%

また今シーズンはライトへのホームランが多く、その度に「本当はレフトへ打ちたいんだけど」とコメントを残している様に
「レフト方向」(2017年)44.0%→(2018年)46.1%→(2019年)42.4%
「センター方向」(2017年)35.9%→(2018年)39.0%→(2019年)28.8%
「ライト方向」(2017年)20.1%→(2018年)14.9%→(2019年)28.8%

ライト方向への打球が格段に増えています。

意図してライト方向へ打っているのであれば問題ありませんが、意図しないのであれば問題あり。レフトスタンドへ放物線を描く中村剛也らしいホームランが増えるかどうかが今度のカギとなるでしょう。



個人投手成績

ここでは平井克典についてのみ書きたいと思います。

前期における最大の関心事は「平井克典使い過ぎ問題」でした。

28試合 31.1in 対戦打者132人 投球数561球 被安打25本 被本塁打0本
奪三振32個 与四球17個 与死球2個 失点8 自責点8
【防御率2.30 WHIP1.34 K%24.24% BB%12.88】
回跨ぎ回数12回 回跨ぎ割合42.9%

登板試合数の多さも問題ですが、それ以上に気がかりなのは回跨ぎの多さ。

フリーアナウンサーの加藤暁さんがブログに書いていますが、辻発彦監督からも小野和義投手コーチからも「回跨ぎの可能性がある」との起用法を示唆されていることが紹介されています。

しかし現在の起用法を見る限り、可能性ありといったレベルではなく、回跨ぎを前提とした起用法では?と思えるほど。
これがポストシーズンであったり、シーズンの最終局面であればスクランブルでこういう起用も分からなくはないのですが、開幕からこの調子で起用し続けていれば、どこかでパンクしてしまうのでは?と危惧するばかり。

加藤暁アナも5月21日の監督インタビュー時にあえて平井克典の起用過多に関して事を触れるなど、機会があれば聞いてみたかったのかもしれません。


この起用法は3年前の2016年、牧田和久に対して行ったのと酷似しています。

50試合 78.2in 対戦打者312人 投球数1184球 被安打54本 被本塁打3本
奪三振43個 与四球16個 与死球10個 失点15 自責点14
【防御率1.60 WHIP0.89 K%13.78% BB%5.13%】
回跨ぎ回数21回 回跨ぎ割合42.0%


開幕から5月末までに区切って見ると、よく似た起用法となっていることが良く分かります。

2016年の牧田和久
21試合 42in 投球数612球 回跨ぎ13回 回跨ぎ割合61.9%
2019年の平井克典
27試合 30.2in 投球数550球 回跨ぎ12回 回跨ぎ割合44.4%

これを見ると当時の牧田和久は今年の平井克典以上のイニング数と回跨ぎをしており、驚きと言うか唖然としてしまいます。

このペースで起用し続けた場合どうなるのか?と考えた場合、危惧されるのは怪我。

牧田和久の場合は6月14日に右ひざを痛め、16日に登録抹消。

この日敗れて、自力優勝の可能性が無くなると、田邊徳雄監督は
「もう見えないもんな。うちはうちで切り替えてやっていくしかない」
と白旗宣言。

このシーズンは牧田和久がフル回転することで何とか5割をキープしていたチーム状況でしたので、離脱した時点で使える駒は残っていませんでした。


そして今シーズン、チーム状況としては5割を行ったり来たりしており、似ていると言えば似ていますが、この時と違うのは首位とは2.5ゲーム差しか離れていない事。

この表にもある様に平井克典が凄いのはこれだけ投げているのに、奪三振率(K%)、スイングストライク率(SwStr%)共に高い水準を維持していること。そう考えるとこの数値が落ちてきたら黄色信号が点滅と見るべきでしょう。

今シーズン復活を遂げた増田達至も一昨年と比べればまだ完調とは言えませんが、昨シーズンと比べると復調しているのが分かります。

逆に今シーズン不調で二軍落ちしている野田昇吾はこの数値がガクッと落ちていますし、K.マーティンもこの数値が落ちたことで安定感を欠いた投球を繰り返しています。
ですので、K.マーティンに関して「コントロールが悪くなった」との言われ方がされていますが、実は昨シーズンもコントロールは悪くて、ランナーを出しても三振で抑えていたのが、今シーズンは空振りが奪えない。だから三振も獲れなくて、苦労していると言ったところです。

そんな中、面白い存在が森脇亮介。ランナーを背負った場面や勝ちパターンではプレッシャーなのかまだ結果を残せていませんが、高いスイングストライク率(SwStr%)は魅力です。2ストライクを取ってからの決め球に苦労している感はありますが、彼の成長次第では平井克典の負担を減らす役割を担えるのではないでしょうか。

どちらにせよこれ以上、平井克典を無理をさせるのは怪我を回避させる為にもやめていただきたいと切に願うばかりです。
ここまで無理をさせないとペナントレースを戦えないほど戦力が枯渇しているとは思えないので。


まとめ

攻撃陣に関しては秋山翔吾・山川穂高・森友哉に次ぐ4人目の選手が出てこないと打線に厚みが出てこない。期待したいのは外崎修汰。この選手が打率.250以上打ってくれないと話にならないので、それが6月中なのか、オールスターゲーム前後までかかるのか、それともさらに先なのか、打撃陣におけるキーポイントになるでしょう。

また辻監督が我慢に我慢を重ねて起用し続けていた、木村文紀と金子侑司ですがここまで結果が出ないと違う選択肢を選ぶことも必要となってきます。

木村文紀に替わって、5月25日の試合からスタメンに抜擢した戸川大輔は4試合連続でヒットを放ち、5月31日にはプロ入り初のホームランを放つなどアピールしています。

中島大輔さんのツイートにもある様に自主トレにも同行した柳田悠岐選手を参考にしたバットスイングは非凡なものを感じますし、守備面での不安はありますが今後も見てみたい選手です。

そして出番に恵まれず二軍落ちとなった愛斗ですが、その後二軍では9試合に出場し、うち8試合でヒットを記録。
9試合 32打数 12安打(二1 三1) 1HR 10打点 2四球 1死球 4三振
【打率.375 出塁率.429 長打率.594 OPS1.022】

と猛烈にアピールしています。

確かにクセのある打撃フォームであり、スイングは気になるものの、モチベーションを下げずにアピールしていることろは好感を持ちます。

もしもう一度チャンスが与えられるなら、見てみたい選手ではあります。


投手陣は30%台に落ち込んだQS%を改善させないと、全ての投手にしわ寄せがきますので、その為にもカード頭を任された今井達也と髙橋光成の若き先発投手に頑張ってもらわなければいけません。

その中でも髙橋光成は5月31日に行われた試合で3年ぶりとなる二ケタ奪三振を記録。その前に登板でも7イニングを投げて8奪三振と三振が奪えるようになってきたのは好材料。

また5月は救世主的な存在となった十亀剣にも期待したいところ。

取材をされた中島大輔さんのツイートに私が引用ツイートをしたところ、ご本人から詳しくお返事をいただき、とても感謝しております。

私なりに「1・2・3・4」と「1・2・4」のリズムを解釈すると、
「昔からバッティングもピッチングも「1・2・の・3」でタイミングを取るのが良い選手に共通していると言われており、ダメな選手は「1・2・3」と『の』がない」
「『の』が無い奴は『(才)能』が無いんだ」と言われてきました。

上の言葉は野村克也さんの声で脳内再生していただければ、雰囲気が伝わるかと思いますが、これは野村克也さんに限らず、プロ野球界では格言的に言われていた言葉です。

つまり投球フォームに間を取る事と目一杯投げる事をやめ、70%の力感で投げる事で球速は落ちているものの
(2017年)145.1キロ→(2018年)145.2キロ→(2019年)141.2キロ
スイングストライク率は
(2017年)9.0%→(2018年)8.3%→(2019年)9.1%
と向上しており、ボールの投げミスなどが減っているのではないでしょうか。

先発投手陣を見ると経験の少ない若手投手が多いので、経験豊富な十亀剣にこの苦境を救ってもらいたいものです。


週明けから始まる交流戦においてライオンズは一度も優勝したことが無く、毎年5割とやっと超える程度。特に今シーズンはパ・リーグが大混戦となっていますので、ここで差を付けられるとリーグ戦が再開した時、その差を詰めるのは至難の業になります。

そうならない為にも現場は粘り強い戦いを。フロントは先発もしくは外野を守れる外国人選手の見つけてくるぐらいの対策を講じてもらえればと思います。


では👋👋

ライオンズを中心にあれこれ思った事を書いてます。