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ワインフェスと弱肉強食の夜

先週はオーストラリアに来て初めて、平均して平日7時間以上働いた1週間だった。

テイクアウト店では巻き寿司製作担当(通称「ローラー」)の研修のため朝7時からのシフトが入り、回転寿司レストランでは夜6時からのシフトが入ったためである。この朝夜シフトコンボは各店舗のマネージャー同士の勘違いによって爆誕したもので、さすがに人権がないのでは…と訴えた結果、来週以降回転寿司で働く場合は昼の時間にシフトを入れてもらえることになった。

無職である不安に押し潰されそうだった1月前半の自分たちには想像すらも出来なかったことだが、こう平日にしっかり働くようになると、お休みの日がシンプルにめちゃくちゃ嬉しい。

かくして、先週末に休日浮かれポンチと化した我々は、土日にホバートにて行われるワインフェスなるものに参加することにした。
今回はそのワインフェスの楽しい思い出と、同じ日に起きたある事件について書き残しておこうと思う。

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ここに来るまで全く知らなかったのだが、タスマニア島はワインがとても美味しい地域らしい。たしかに少し車を走らせるとブドウ畑は色んなところにあるし、水もおそらく綺麗なのだろう。

会場となっていたロイヤル・ボタニカル・ガーデンではちょうどビートルズのコピーバンドが演奏をしていて、ステージ前で老若男女が思い思いにステップを踏んでいた。日本ではなかなかお目にかかれない、おおらかで開放的な光景である。

草むらに座って食べたパエリア
バンドの声掛けに応じて踊り出す人々

ビートルズコピバンによる約1時間にわたるステージを堪能した我々は、日が傾き出した21時頃に帰路に着くことにした。「おじさんおばさんになってもあんな感じで楽しみながら踊れるようになっていたいね」などと他愛もない話をしながら市内にあるバス停まで歩く。そして少し薄暗くなった公園を通っている時に、事件は起きた。

公園にいたおそらくホームレスと思われる女の人が、突然走って追いかけて来たのである。

最初は何が起こったか分からず、とにかく走り出した夫についていこうと必死だった。しかし足が思うように動かない。自分の思い描く速度に足が追いつかなかった結果、かなり派手に転んでしまった。

これだけの怪我をしたのは、大学1年生の夏に大学のプログラムでアイルランドに行った際に、乗っていた自転車が横転した時ぶりである。
話が逸れるが、その時一緒にいた友人に対して咄嗟に「I’m bleeding!」と発することが出来て、人間は追い込まれたら大学1年の夏休み時点で「bleed=出血する」を瞬時に言えるんだ…と妙に感動したのを覚えている。その時ぶりのbleedingである。

自分の縄張りから追い払うことが目的だったのか、転んでも追撃されなかったのは不幸中の幸いだったが、やはり生き物の本能として「追いかけられる」ことの恐怖は何にも代え難いなと実感した。ライオンに追いかけられるシマウマの気持ちが少し分かったような気がする。やはり世の中は弱肉強食、弱い者より強い者が、遅い者より速い者が勝ち残るのだということを走りながら本能的に感じた。

直後はとにかく恐怖と怪我の痛みでただただ呆然としていたが、時間が経つにつれ、「自分の足がもつれて転んだ」という事実そのものが段々としんどくなってきた。

いくら人間が知能を発達させることで生存競争を生き抜くことを選んだといっても、やはり生物としての強さ、ひいては強靭な肉体を手に入れるに越したことはないのでは…と、「筋肉はすべてを解決する」思考に傾きつつある今日この頃である。

まずはそれ以前に、夜道や人気のない道を避けるなどの基本的な自衛を行った方が良いというのはもちろんなのだが、早速今週からは筋トレも開始し、生物としての強さの底上げにも注力していきたいと思っている。

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