GOJIRA:2015年インタビュー

フランスのプログレッシヴ・メタルバンド、GOJIRAがLOUD PARK 15出演およびSLAYERのサポートアクトとして初来日した際のインタビューです。LOUD PARKでのステージの直後にジョー・デュプランティエ(vo,g)に話を聞くことができました。タイミングとしては5作目『L'Enfant Sauvage/ランファン・ソヴァージュ~野性の少年』(2012年)でようやく日本デビューを果たして、それから3年を経てようやく決まった来日ですね。

SLAYERのサポートでは見られず(前座なのに1時間もやったとか)、LOUD PARKも30分という短い時間でしたが、ライヴはものすごくかっこよかったのを覚えています。緻密に練り上げられた楽曲を、たしかな演奏力に裏打ちされたソリッドかつ豪快なプレイでかっ飛ばしていく様が、めちゃめちゃ痛快でした。本人たちもものすごく手ごたえを感じたようで、インタビューも終始にこやかで前のめり。加えて地頭がいいのか、質問の意図を汲んでいろいろ話してくれるタイプでしたね。

正直に言うと、GOJIRAはシーシェパードを支持しているバンドということもあって、実際に会うまでは日本に対してどういうスタンスかわからず、ちょっと身構えて取材しました。バンド名は日本のゴジラ(GODZILLA)から取っているけれど、著作権の問題から綴りを現在のものに変えたという逸話がありますが、同時にシーシェパードの抗議船の名前でもあるんですよね。でも話してみると、日本の文化にはずっと興味があったと言っていたし、「自分の政治や信念については曲に込めているから、ステージではとにかく熱いライヴをやりたい」という旨の発言から、決して押しつけがましいスタンスではないということが伝わってきたのが印象的でした。(逆に、日本のファンへのジョーなりの気遣いだったのかも)

GOJIRAは翌2016年に『MAGMA』をリリースしましたが、この作品の日本盤化はなく、インタビューも実現しませんでした。恐らく『L'Enfant Sauvage』の日本での売上が、レコード会社の基準に達しなかったのかなと思います。日本デビューと初来日でいい流れができていただけに、もったいなかったですね。その後文中にあるEPのリリースはありませんでしたが、先日、5年ぶりのアルバム『FORTITUDE』を4月30日にリリースすることとともに、新曲“Born For One Thing”のMVが発表されました。これが前作では後退気味だった激しさを取り戻した印象で、アルバムへの期待を一気に高めてくれる佳曲で思わずニッコリ。日本では全盛期を完全にスルーしちゃった感じですが、またライヴを見たいバンドのひとつです。

text by MOCHI

translation by Mariko Kawahara

――大阪、東京でSLAYERのサポートを務め、LOUD PARK 15に出演…初めての日本ツアーでのライヴをひとまずすべて終えて、いかがですか?
「もう、なにもかも最高だった!本当によかったよ。SLAYERのオープニングをやってからこんな大きいフェスにも出られるなんて、初めての日本で、僕たちが自己紹介をするには最高の機会だったと思う。自分たちのツアーで来るよりも、何倍もいい結果が残せたんじゃないかな。見てくれたお客さんたちの反応もよかったし、とにかくいい感じだったよ」

――バンドのfacebookで見たんですけど、日本に着いて、まずプリクラを撮ったみたいですね(註:投稿からしばらくして削除されたみたいです)。1週間近い滞在で、日本のカルチャーにも触れられましたか?
「あぁ、Instagramやfacebookにアップした写真だね。なんていうか、自分たちが日本に来てどれだけ興奮しているのか、言葉では表現しきれないくらいなんだよね。“楽しんでる?”って聞かれたら、“楽しんでるんじゃないよ。超楽しんでる!”って答えなきゃならないくらい。もう、楽しみすぎって感じかな(笑)。僕たちは、以前から日本についてすごく興味と好奇心があった。常々行きたいと思っていたし、特別な感情を持っていたよ。こうして実際に来てみたら、こんなにもたくさんの人がいて、自分たちの知らない言葉を話して、知らない文字を書いて、知らないものを食べて、暮らしているんだと実感した。しかも初めてなんだから、余計にだよね」

――楽しんでもらえたようで何よりです。僕も今回、GOJIRAのライヴは初体験でしたが、予想や前評判の100倍すごかったです。とにかく激しくて熱いステージでしたね。
「初めて観た人からそう言ってもらえて、本当にうれしいよ。僕たちはいつもステージではすごく激しく動き回るんだけど、音楽をプレイすることに興奮して、我を忘れてしまうんだよね。医者からは“ムチウチになってしまうかもしれないから、あんな激しいヘッドバンギングはやめなさい”と言われているんだけど(笑)。やらずにはいられなくなるんだ」

――GOJIRAの音楽はは「プログレッシヴ」とか「テクニカル」という言葉とともに紹介されることが多いですよね。だからもっと淡々とプレイするのかと思っていたので、余計に驚きました。
「ありがとう。僕たちの信念や、政治的な姿勢なんかは、すべて音楽に込められているからね。ステージ上では、いちいち曲にどんな意味があるのかを説明したりするよりも、激しくて熱いライヴをやりたいんだ。なんたって、僕たちは激しいロックバンドなんだからさ。まぁ、そのせいで母親に口汚い言葉使いを叱られることもあるんだけど(笑)」

――セットリストも、キャリアをまんべんなく総括するような内容でしたね。
「たしかに『ランファン・ソヴァージュ~野性の少年』(2012年)が出て1年くらいは、新しい曲を中心にセットを組んでいたんだけどね。でもリリースからもうだいぶ時間も経ったことだし、それに初めて日本でやるんだしさ。新しい曲ばかりをやるよりは、まずこのバンドのことを知ってもらうことを優先したんだ」

――ではその『ランファン・ソヴァージュ~野性の少年』(2012年)というアルバムを、今はどう思いますか?
「すごく難しい質問だなぁ。どのアルバムも、僕にとっては子どものような存在というか、自分の一部という感じなんだよね。それを客観的にどうと言うのは難しいよ。でもひとつあげるとしたら…サウンドのプロダクションがあまりよくなかったかもしれない。音を詰めこみ過ぎたような感じがするんだよね。もしできるのなら、もう一度マスタリングでいろいろと調整したいな。とはいえもう出てしまったものだし、今は次の作品をどうしようか…ということに、もう頭が向いているよ」

――GOJIRAといえば、ジョーとマリオ(ds)の兄弟のコンビネーションですよね。弟がバンドの屋台骨を支えているのは、ジョーとしても安心感があるのでは?
「たしかにそうだね。PANTERAやSEPULTURA、昔のARCH ENEMY、それに日本だとマキシマム ザ ホルモンもそうだけど、やっぱり兄弟は同じDNAを持っているし、サウンドがすごくタイトになりやすいんじゃないかな。GOJIRAも、マリオこそがバンドの要だと言われることが多いんだけど、それには同意するよ。まぁ“…僕は?”と思うこともときどきあるけど(笑)」

――『ランファン・ソヴァージュ~野性の少年』をリリースした後、EPを出す予定でしたよね。ただ曲を保存していたHDDがクラッシュしてデータが消えてしまったとは聞いていますが、その後作業の状況はどうですか?
「そうなんだよねぇ…(苦笑)。クラッシュしたHDDから、どうにかファイルはリカバリーできたから、楽曲のデータはあるんだ。でも制作から時間がしばらく経ってしまったこともあって、いろいろと手直ししたい部分も出てきていてさ。だから時間こそかかっているけど、そのうちリリースは必ずするよ。4曲のうち、1曲(“Of Blood And Salt”)はイギリスの音楽雑誌の企画で公開したんだけど、デヴィン・タウンゼンドやMESHUGGAHのフレデリック(・トーデンタル/g)なんかが参加してくれているんだ。ほかの曲にもいろんなゲストが参加してくれているから、近いうちにぜひともみんなに聴いてほしいね」

――ではそのEPを出してから、次のアルバムを…という予定ですか?
「あぁ、ゴメン、言葉が足りなかったね。この次は新しいフルアルバムを出して、それからそのEPを出すつもりでいるよ。アルバムを来年(2016年)の前半…夏くらいまでに出して、その後あまり時間を空けずにEPを出したいと思って、いろいろ計画しているところなんだ」

――次のアルバムは、どんな内容になりそうですか?
「これまでの僕たちから、とても自然な進化をすることができたと思う。“これはGOJIRAの最高傑作だ”と言えるものになるっているはずさ。すごく興奮しているし、こんなものができてうれしいよ。これまでとは少し違った部分もあるけど、間違いなく僕たちらしさもある作品だと思う。全体としては、これまでよりももう少しすき間を生かした、キャッチーな曲もあるし、エピックな感じの曲もあるし、短めの曲もある。いろんなタイプの曲ができているけれど、ちゃんとまとまりがあるよ」

――次のアルバムやEPをリリースしたら、また日本に戻ってきてくれますよね?今度は自分たちのツアーで。
「日本のみんなには、僕たちの音楽をぜひもっと楽しんでほしいね。もちろん、それを引っ提げてまたライヴをやりに戻ってきたい。ただ自分たちとしては、もちろん今度のアルバムはいい作品だと思っているけど、聞いてくれるみんなが同じ意見を持ってくれるとは限らないからね(笑)。今からあんまりあれこれ言い過ぎて、変に期待させるようなこともよくないと思う。もし君が“前のアルバムの方がよかった”なんてSNSに投稿するのを見たら、ものすごくショックを受けるだろうしさ(笑)」

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