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ダイアログインザダークに行ってみたら真っ暗闇が想像より心地いい世界だった話

先日ふとしたことがきっかけで、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の存在を知りました。

↓概要はこんな感じです。

ダイアログ・イン・ザ・ダークは、視覚障害者の案内により、完全に光を遮断した”純度100%の暗闇”の中で、視覚以外の様々な感覚やコミュニケーションを楽しむソーシャル・エンターテイメントです。

https://did.dialogue.or.jp


参加人数は1グループ最大8人。
そこに「暗闇の先生」でもある視覚障害を持っている方のアテンドがついて、真っ暗闇で視覚に頼らない様々な体験をするというものです。


「ダイアログ」とは対話という意味。

対話とか意見交換とかディスカッションとかは正直苦手な部類…!

一瞬ひるんで参加を迷いましたが、他の方の体験談を読んで好奇心が勝り、旦那と旦那のお友達を誘って3人で参加してきました。


※あまりに楽しかったのでちと長いです。約3200字ほどありますが気楽に読んでください。


●いざ「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」へ


我々3人の他にはじめましての5人と、暗闇の世界を案内してくれるアテンドさんが今回の暗闇の大冒険のメンバーです。

まずは明るい場所で集まり、「白杖」を一人一本貸してもらいます。
目の不自由な方が使っている白と赤のあの杖ですね。

後で使ってみて分かるけど、これがあるのとないのとじゃ暗闇で得られる情報量が大違い…!

直接触っているわけじゃないのに、
「あ、ふわふわの床から硬い床になった」
「でこぼこしてる」
「この当たった音は木製のなにかだな、あ、こっちは竹!」
ってな具合に白杖があるとまわりの解像度がぐんとあがります。
この白杖を体験できるだけでもいい経験かもしれない。



さて、入り口のドアを通されまずは小さな部屋へ。

この段階ではわずかな灯りがついていて、誰がどこにいるかが分かるレベルのほの暗さです。

アテンドさんに、

●白杖の使い方
●空いている方の手で物を探るときは、手の甲で
●自分の行動を『しゃがみまーす!』『立ちまーす!』と声に出して実況すること

の3つをレクチャーしてもらったところで、
「じゃあ灯りを消してみるね!」
といよいよ真っ暗闇に…


いや想像の10倍暗い。

さっきまでそこにいたはずのみんなと急に距離がぐんと引き離されたような感覚になり、確かにその場に9人いる、なんなら隣の人との間隔は30センチぐらいで密集しているはずなのにめちゃめちゃ孤独です。

そしてなんとこの段階でお互いに自己紹介。
ダイアログインザダークでは、お互いをニックネームで呼び合います。

眼鏡の人、若い人、背が小さい人、優しそうな人、自分より年上っぽい人…

そういう見た目からの第一印象はここから先は一切なし。
あるのは声色と各々のニックネームだけ。
とってもフラットでニュートラルで不思議な世界のはじまりです。


●暗闇で「夏祭り」…だと…?


ダイアログインザダークは季節によってテーマが変わり、暗闇でできる体験がその都度変わります。今回のテーマは「夏祭り」。

まだ「夏祭り」が開催中なので、体験した内容を事細かに書かないようにしておきます。


「夏祭り」にまつわる様々な出来事をみんなで体験していくわけですが、この広大(に感じる、ほんとに)な真っ暗闇の中、常に声を出してアピールして周りに存在を認知してもらわないとこの場から自分が消えてしまいそうで怖い!!

真っ暗闇での一番最初はバス停に集まるイベント。
(暗闇でバス!?とお思いかもしれませんがそれは来てのお楽しみ)

「こっちだよー!」と呼んでくれるメンバーの声を頼りによろよろと集まります。

みんなが「あった!バス停だ〜!」「ほんとだ〜!」と盛り上がる中、人の集まる方角にただ寄ってきただけで何のことか分かっていない私。

普段ならまわりに合わせようとわかったふりをしてその場をやり過ごしていたところで、その場でもそうするつもりだったのですが、なぜかとっさに

「どこにあるの?教えて!」

と言葉が口から飛び出てきたことに自分で一番びっくりしました。


そばにいたメンバーの一人が「こっちだよ!」と私の手を取ってバス停に導いてくれます。
真っ暗闇の世界ではお互いが触れることに1mmも嫌悪感がなく、むしろ頼もしくてほっとするのがとっても不思議。

自分から助けを求めて人の力を借り、導かれた先で指先がバス停の時刻表の部分に触れた時、自分の中でずっと閉めていた扉が開いたような、何かが吹っ切れた感覚がありました。


●真っ暗闇、けっこういいかもしれん


真っ暗闇での動作もだんだん手と足の動く範囲が大きくなり、バス停以降不思議と「失敗しても大丈夫」「助けてくれる人がいる、教えてくれる人がいる、声をかければ答えてくれる、大丈夫」と積極的にトライアンドエラーを繰り返せるようになりました。

真っ暗闇でこれは意外なメリットだな、と思ったのが意思決定がスムーズになること。

「●●と✗✗があるけど、どうする?」となった時に、お互いの顔色を伺わなくてよくなる(というか見えない)というか、変な気を使わなくてよくなるのがとってもいい。

「●●にする?」
「いいね!」
ってな具合に、純粋に相手の声色だけを聞いて判断する感じというんでしょうか。
相手の表情や態度といった余計な情報がなくなって、受け取る情報がすごくミニマルなのが楽で心地良い…!!

普段いかに目から入る情報に振り回されて疲れているのかを実感しました。



●見えない、けれど確かに見える


そこからはみんなで肩につかまりながら竹林を一列で歩いたり、縁側に座って畳の香りを感じたり、その他夏祭りらしいことは一通り全部やってみんなで大笑い。

アテンドさんが帰りのドアを少し開けてくれて光が入ってきた時、え…?もう終わりなの…?帰るの…?もっと遊ばないの…?と最初あんなに怖かった真っ暗闇から出ることをめちゃくちゃ寂しく感じました。


明るい世界に戻ってきたら、みんなで丸テーブルを囲み、夏らしく絵日記を描きながら真っ暗闇での出来事を振り返ります。

メンバーの1人は身内の方から勧められて今回ソロで参加した方だったのですが、「終わったあとみんな親戚みたいになるって聞いた」と言っていてまさに言い得て妙でした。



全くの他人の状態で8人+1人集まって、
真っ暗闇の中で初対面とは思えないほど壁のないフラットで楽しい友達になり、
終わってダイアログインザダークの建物を出た時からまた他人に戻って、
おそらく一生で二度と会うことのない人たちになる。

みんなであれだけ一つのことで盛り上がって楽しく遊んだけど、
帰っていく場所はみんなそれぞればらばらで、
お互いのことはニックネーム意外何も知らない。
初めて会ったみんなの顔もきっと次の日には思い出せなくなっているんだろうなぁ。

それでも、
道が分からなくてつかまらせてもらった人の肩が手のひらにじんわりと暖かかったこと、
みんなで輪になる時につないだ隣の人の手が緊張ですごく冷たかったこと、
見えない世界で手や腕、服などどこかがお互いに少しふれているだけですっごくほっとしたこと、
バス停と縁側と花火と竹林と屋台が確かにそこに見えたこと、
みんなで屋台で買った駄菓子を見せっこして「でっけぇ!!」と笑ったこと、
こんなにたくさん誰かの手と手にふれあったことはずっと忘れないと思います。


暗闇の外に出たらまたいつものパーソナルスペースのある暮らし、お互い触れないように気を使う暮らしに戻るけど、
「声でお互いにつながって、触れて確かめ合う」
これが人と人の、というより生き物のコミュニケーションの本来の姿なのかなと感じました。

(そう思うと、ハグとか握手の文化がちょっとうらやましくもあり)

真っ暗闇の世界は想像のななめ上をいき、フラットでやさしく、けっこう心地いい世界であった一方で、
「見ず知らずの人達とものすごく仲良く遊んだけど、あれは夢だったのか…?」
みたいなすご〜〜〜く不思議な体験をした一日でもありました。

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