マガジンのカバー画像

古典ハリウッド映画

86
運営しているクリエイター

2022年3月の記事一覧

『仕組まれた罠』

監督:フリッツ・ラング

グレアムの腹の読めなさがいいな。オーウェンとの関係も分からないし、殺人シーンが省略されているから、彼女が殺人に対して何を感じているのか掴みにくい。でもそれが映画全体の面白さに直結していないような気はする。

『翼に賭ける命』

監督:ダグラス・サーク

この映画に於いて、一対一の関係は存在し得ない。整備士と飛行士、その妻の三角関係を取ってみてもそうだが、ハドソンとマローンのキスシーンにおいても、唐突に扉が開き、仮装した第三者の視線が介入してくる。飛行士と妻だけでなく、それを支え、かつ嫉妬するものたちが描かれるから、単なるドラマ以上の奥行きがある気がする。死亡フラグビンビンに立った飛行士が死のフライトをするシーンがとんでも

もっとみる

『秘密指令』

監督:アンソニー・マン

眠気を吹っ飛ばす面白さ。全編サスペンスフルであるのはもちろん、そんなに暗くして大丈夫なのか心配になる照明。余程プロットに自信があるのだろう。刑務所の鍵を開けるところ、枕下のブラックリスト、隠し部屋の平行モンタージュ等々、ただでさえ面白いシチュエーションが闇の中で展開されていく。闇に浮かび上がる民衆の顔のクロースアップは、顔を抽象的なものではなく完全に物質的な概念に押し上げ

もっとみる

『危険な場所で』

監督:ニコラス・レイ

自己憐憫が過ぎるというか、あまり好きではなかった。ただ二人が初めて出会うシーン、ジムの顔に女性の声が被さってくるのだが、なかなか切り返さない。結局室内に入って初めて顔がわかる。孤独だったジムの顔に重なる声だけの存在(メアリー)が、ジムを癒していたのだろうか。帰り際一人で渋谷を歩いている時に、「周りに人がいる方が孤独を感じる」という台詞を思い出した。孤独感はみんないつも持って

もっとみる

『ラスティ・メン/死のロデオ』

監督:ニコラス・レイ

夫婦はそれぞれ、"幸せな家庭"を求める。しかし夫はロデオに魅せられ、のめり込んでいく。ミッチャムはそんな彼にかつての自分を重ね合わせる。告白シーンにおいては、それまで扉の向こう側には決して行けなかったカメラが壁を越え、ミッチャムの真意が明らかになる。ミッチャムがロデオに向かう時の二人の切り返しにグッとくる。遺体がある部屋の扉は閉められ、夫婦は"幸せな家庭"へと向かうラスト。

もっとみる