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亡き先生が私たちに遺したもの。10年の時を経て再読『僕は君たちに武器を配りたい』

こんにちは、餅田です。

最近、とある本を再読しました。

瀧本哲史著『僕は君たちに武器を配りたい』(講談社)

表紙に序文の一部が載っちゃっているという、見た目にもインパクトのあるこの本。

著者である瀧本哲史さんはエンジェル投資家で、京都大学で客員准教授なども務められていましたが、2019年に47歳という若さでこの世を去られました。

講演を生で聞いたこともありますが、歯に衣着せぬ氏の物言いは、時に聴衆を笑わせたり、時に鋭いナイフのように私たちを刺してきたりと、聴く人を決して飽きさせませんでした。

本書は2011年に出版され、リーマンショック以降の冷え込んだ日本経済の状況下で、若者が生き抜くにはどうすれば良いかを指南するような内容になっています。

とあるきっかけで手元にあったこの本を再読しましたが、10年前に発行された本とは思えないくらい今にも通ずる部分が多いんですよね。

もちろん発行年前後の話は過去のこととなり、私自身ももう若者ではなくなりつつありますが、それを差し引いてもこの2021年に再読して良かったなと思います。

拙稿では要約とも言えぬその上澄みについて(天国から「わかってないな」という声が聞こえてきそうですが)、簡単ではありますが備忘録的にまとめました。

コモディティとなるな

コモディティとは、市場に出回っている商品が個性を失って、「どれを買っても一緒」の状態になっているもののこと。

これが人間でも起きている、と氏は指摘しました。

コモディティ化の最大の弊害は、徹底的に買い叩かれること。

資格TOEICの点数といったものも、数値化できる以上商品のスペックと変わりなく、それだけであればより安く使える人材が採用されます。

そうならないためには、替えのきかないスペシャリティになることが重要だと主張していますが、ここでいうスペシャリティとは「士業になればいい」とかいう単純なものではありません。

やみくもに努力するのではなく、資本主義の仕組みを理解した上で、何がコモディティとスペシャリティを分けるのかを熟知する必要があるのです。

これは10年経っても全く色あせていない格言だなと思います。

「本物の資本主義」と私たちの現在

全国民がスマートフォンをまだ持っていなかった2011年において、氏は本書で「本物の資本主義」の到来を予言しました。

「本物の資本主義」とは、それまでグローバル化に縁遠かった分野も含めて全産業・全地域がネットワークでつながったことにより、資本主義がますます進んでいった形態のこと。

不況が起こる度に「資本主義は終わった」という話も出てきますが、結局どのタイミングでも資本主義が実際に終わる気配はなく、むしろ逆の方向へと向かっています。

2020年代に入った現在も、資本主義の姿を正しく捉え、その枠組みにアジャストしていくことは依然として重要であるといえるでしょう。

投資家的視点で働く

瀧本さんはエンジェル投資家(創業したての企業に対して資金を提供する、親類とベンチャーキャピタルの中間のような存在)ですが、その提言は何も投資家のためにだけ役立つものではありません。

若者が企業に勤める上でも、投資家的に働くことが重要だと氏は説いています。

「投資家的に働く」というのは、トレンドを読んで「この会社は絶対に伸びる」という会社に入り、そこでストックオプションなどで株式を所有したり、業績連動型のポジションに身を置いたりする自分自身の投資のこと。

これによって一会社員ながら企業と利害が一致し、ダラダラと働いて残業代を稼いだり、手を抜いて楽に働いたりすることはなくなります。

お金以外に得られるものとしても圧倒的な違いがあるはずです。

現実味を帯びすぎた「人生は短い」

これからを生きる若者へ、さまざまな「武器」を遺してくれた本書。

そして終盤の「人生は短い。戦う時は『いま』だ」という言葉は、著者没後の今、尋常ならざる重みを持って紙上に鎮座しています。

このコロナ禍を踏まえたお話を聞いてみたかったと思いますが、ご存命ならきっとこう言うでしょう。

自分の頭で考えろ」と。

「日本のベンチャーキャピタルは二流」「公開株を買うのはカモネギ」…氏の言葉にはストレートすぎる表現もありますが、一つひとつの内容が非常に本質的で、その辺のビジネス書とは一線を画している印象です。

それは、中途半端な成功論ではなく、著者自身の投資・起業による「本物の成功体験」に裏打ちされているからなのでしょう。

もらった武器で短い人生を戦い抜きながら、自分も次の世代へ使える武器を遺せたらと思います。

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