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この道はいつか来た道

であってほしくなんかなかった。パソコンに映し出されたグラフを見て、これまで幾度となく味わった焦燥感がまた、やってくる。鼓動が早まり、震えそうになる手をおさえながら、パソコンを操作し、やり直すが、結果は変わらない。

結果がおかしい。合わない。直感と論理に反したグラフが生成されるのを見るのは何度目だろう。いまやっているのは、なんてことない、既存の教科書の簡単なレプリケーションのはずなのに。

集中力が如実に下がっている。
「あーーーーもうっ」なんて喚く私の声を聞きつけ、親切な先輩がやってきて、様子を見てくれる。あれやこれやと、何が原因なのか、問題の切り分けをするアイデアをくれる。が、その問題の切り分けを行う先でも、また別の問題が生じて、失敗の原因がなかなか絞り込めずにいる。

ちらりと、自分のTodo一覧を横目で見る。これをさっさと終わらせてからやろうと思っていたことが山ほど溜まっている。新しい研究のサーベイもしたい、今後必要になる技術もできるようになりたい。新しいプログラミング言語だってまだ学び途中だし、図書館で借りたあの本だって、何度延長申請しているんだろう。

博士課程ももう2年目だというのに、修士の頃と何も変わっていない自分がいる。

そりゃあ、ほんの少しは知識もついたし、論文も教科書もだいぶ読みやすくなった。プログラミングスキルもかなり上達したと思う。
でも、まだまだなのだ。まだまだ一人前の研究者には遠くて、自分の研究を自分で進めていくことが難しい。ふらふらしていて、頭の中がとっちらかっていて、遠回りしたり、しょうもないミスで時間を食ったり、やたらと慌てたり、なんでこんなところで詰まっているんだろうって落ち込んだりする毎日だ。かといって、十二分に、限界まで頑張れているわけじゃない。

この夏休みだって、こんな調子で、やりたいことの1%もできなかった気がする。これまでの長期休みだってそうだったな、と、凹む。来週の指導教官との面談が、怖い。いつだって私の指導教官は優しくて、生徒の気持ちに寄り添ってくれた上で的確な指導をしてくれる最高の師匠で、だからこそ、申し訳なくなる。

お師匠は、「上手くいかない中でも毎日打席に立つことが大事。ホームランを狙ってはいけないよ」と言ってくれた。「大学院は必要なスキルセットを学ぶところだと思うといいよ」とも。しんどかったときに言ってくれたこの言葉を思い返すと、いまでもちょっと泣きそうになって、でもちょっと勇気が出てくる。

やるしかない。から、もう少しだけ、考えてみようかな。
その繰り返しでここまで来て、これで本当によいの、この道でよいのって毎回思っている。またどうせぐるぐる、同じ道の繰り返しだよ、と。

でも、まあ、最後はやるしかないのだ。逃げてもいいんだろうけど、別の道の方が私には合っているんだろうなと思うときもあるけれど、何度同じことの繰り返しでも、少しずつ進んではいると信じて歩いていくしかない。

この道はいつか来た道だけど、でもちょっとは景色が違うところもあるかもしれない。少しずつでも進んでいるはずだから、と自分を奮い立たせ、背筋を伸ばし、深呼吸して、私は再びパソコンの画面に向き合った。

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