“おしゃれ”という最大の武器。
高校1年のとき、“おしゃれ”に目覚めた。
私の高校は制服がない。ゆえに一部のなんちゃって制服とジャージ勢を除き、生徒の大半が私服を着ている。当然私は私服で登校していた。
GW明けのある日、見ず知らずの子に突然声をかけられたのだ。
「あなたが着ているニット、めっちゃいいね!」と。
とても驚いた。自分の選んだ服を誰かに褒められるのが初めてだったから。しかもそのニットは私のお気に入りだった。
“自分の選んだ服を褒められる”ということは、自分のセンスまで認めてもらえたような気分だ。私がいいと思うものを他の人に理解してもらえたことが嬉しかった。
そこから私は一気に“おしゃれ”に夢中になっていく。
『Seventeen』や『JJ』などの色んな雑誌を読んだり、放課後にショップへ寄ったりして自分がいいなと思う服のイメージを膨らませていた。
すると徐々に自分の好みのクセが見えてきたのである。
モノトーンやモスグリーン、ネイビーなどの落ち着いた色味が好きだということ。
シンプルだけど、ヒトクセあるデザインが好きだということ。
スカートよりもパンツ派だということ。
自分の好みを知ることでおしゃれがますます楽しくなっていった。
また、別の発見もあった。
それは思ったよりも自分の脚は長いということだ。
私は身長が170㎝と高く、骨格ががっちりとしている。ゆえに大きくてゴツい体がコンプレックスだった。
しかし、私服になってからなぜか私の脚の長さを褒めてくれる人が増えたのである。恐らく、制服でなくなりスカートからパンツスタイルに変わったことや私がスキニー・ハイウエストデニムを好んで履いていたことなどが原因だろう。
何はともあれ、おしゃれによって自分の長所に気付けたのはラッキーだった。
大学生になるとおしゃれの幅が更に広がっていく。
アルバイトで稼いだお金を、自分の欲しい服やファッション小物につぎ込める。また、校則がなくなったことで髪を染めるのも自由だ。
加えて、実家を出たため親から服装についてとやかく言われることもない。
元々ショートヘアや茶髪に強い憧れがあった。ごついイヤリングをつけ、ライダースを着てみたいとも思っていた。
だからこそ、お金が入り次第それらを全て実行していた。髪を切ったり染めたり、気に入った服を着たり...。自分の好きなファッションを身にまとうだけで、自分がなりたい自分になれるのが楽しかった。
大学生活では幅広いファッションに挑戦していた気がする。
そして去年。
コロナ禍と就職活動のせいでどん底にいた私を救ってくれたのもまたおしゃれだった。
9月頃、先輩から「気分転換に髪を切り、とびっきりお気に入りの1着を買ってみたら?」と勧められたのだ。
当時の私は生きること全てに気力を失いかけていた。正直なにもやる気が起きない。服も髪もぼさぼさだ。それでも先輩のアドバイスである。とりあえず一度実行することにした。
するとどうだろう。ただ髪を切り、気に入った服を着ただけなのに心の底から元気になった。私は就活の『黒髪・スーツ・パンプス』という鉄則に囚われすぎて、いつのまにか自分の好きなものまで封印していたのだ。
久々にするおしゃれは心底楽しかった。この時、おしゃれは自分を元気にしてくれるのだと改めて実感したのだ。
だから現在の私は「いつ何時も自分の好きなものを着て、自分のしたいおしゃれをする」ことを心がけている。
私がおしゃれをする理由。それは間違いなく「自分のため」だ。
好きな服を身にまとい、良いなと思った靴を履いて、自分用のご褒美に買ったミニバッグを肩から下げる。そんな自分が大好きなのだ。
ありのままの自分には正直自信がない。でも、好きなファッションを身にまとえば、それが鎧になり自分を守ってくれる。
「自分って無敵だな」と思えるし、何となく不思議なパワーが湧いてくる。
おしゃれこそ自分史上最強の武器だと私は思うのだ。
だから私は今日も好きなファッションを身にまとう。
最高の自分であるために。自分自身をもっと好きでいるために。