三茶のコメダ珈琲

就活生時代、何人かの方々にOB訪問をさせていただいた。

当時僕は出版業界や映画業界が第一志望で、
その業界に就職した直属の先輩が1人しかいなかったので、

出版業界、映画業界に就職した知り合いいませんか?

と、片っ端から先輩たちに連絡していた。

それでもなかなか見つからず、OB訪問をした人数は、周りの人たちに比べたら少ない方だったと思う。

結局就職した今の会社の先輩にも2人しかOB訪問しなかった。

そんな数少ない出会いの中で、僕が未だに猛烈に憧れている人がいる。

その人は、僕と地元が近いサークルの先輩の地元の友人で、某大手出版社に就職している、学生時代の僕からみたら神の様な存在だった。

その人は当時すでに地元を離れて三茶に住んでいたので、僕は埼玉の果てから遥々三茶へ向かった。

恥ずかしながら人生初の三茶である。
地下鉄の駅から出るとどでかい交差点で、もう何がなんだか分からなくなった。大学の入学式で感じた、まだここが自分の場所ではない感覚に気後れしてしまう。そんな中

先輩はロードバイクで颯爽と現れた。

Tシャツ1枚のその姿があまりに三茶に馴染んでいて、明らかにその街で浮いていた僕は圧倒されてしまった。

その人が放つ言葉はどれも端的で筋が通っていて、迷える仔羊だった僕の心にまっすぐ入ってきた。

面接はミスらなきゃ受かる。

その人はその言葉を本気で口にしていた。
当時は これが天才か…? としか思わなかったけれど、今となったらなんとなく理解できる。

一瞬で終わったのに、濃厚な1時間を過ごして、お会計で奢っていただける空気になった時、

その人があまりに理想的だったので、僕はOB訪問で抱えていた永遠の疑問をぶつけた。

OB訪問て、学生の都合で社会人の方に会っていただいて、お話していただいて、お金も出していただいて、意味がわからないです。
僕が払います!

するとその人は僕の顔も見ずにこう言った。

だったら、キミがOB訪問された時、必ず奢ってあげて下さい。そうやって経済は回ってるのよ。

そして僕の方を向いてもう一言。

そのために、学生がOB訪問したいと思える企業に受かってね。

それから5年。
僕は業種と大学の繋がりからか、毎年10回以上のOB訪問を受けているが、もちろん全てのOB訪問で奢っている。

自分が受けたOB訪問の5倍くらいは学生と話しただろうか。

ちょっと経済を回しすぎである。

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