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呼応してる?

森田真生『数学の贈り物』より

実感を表現に写し取ったり、逆に表現にしたがって実感を更新したり。その往復こそが、創造行為の醍醐味だろう。
ところで、表現が実感を牽引するのはいいが、実感が表現を手元にひき寄せ続けることも重要である。
でないと、表現はすぐに空疎になる。
現実にしたがって何かを表現することもあれば、生まれてしまった表現に、現実の方が鍛えられていくこともある。


恩田陸『蜜蜂と遠雷』より

・・・おおかたの演奏者は作曲家の意図を理解して、曲の方に自分を引き寄せていく。作曲家が何をイメージしていたのか、当時の時代背景や、作曲家自身が何からインスパイアされたものなのかを調べ、作曲家のイメージに近づけていくというアプローチがほとんどである。
この子は逆だな。曲を自分に引き寄せるというか・・・
曲を自分の世界の一部にしてしまう。曲を通して、自分の世界を再現している— どんな曲を弾いても、何か大きなものの一部にしてしまっているような。


〝個性〟とは、こうして生まれるのだろうな。
そしてそれこそが真の意味での〝リアル〟であり、〝クリエイティブ〟と感じさせるのかもしれない。

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