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オランジ

古着を買った後は疲れたのでお茶でもしようと言うことになった。

彼女的にお茶なんて行っても大丈夫なのかを確認したら
飯はダメだと言われたが、
お茶は言われていないから平気だ、との事。

理解のある彼女さんなのか
理解が出来ない彼氏なのか。

コメダ珈琲や珈琲館など殆どのお店が満席だった。
でもラッキーな事にちょうど行ってみたいと思っていたワッフルのお店「オランジ」に空席があったので
良い機会にオランジでワッフルを食べる事にした。


僕達は少し寒いけどテラス席に座った。
特にテラスの空気が好きとかそう言うのではない。
なんとテラス席ではタバコが吸えるのだ。

どこもかしこも禁煙のこの時代に
電話ボックスみたいなのに詰め込まれる事なく
席でタバコを吸えるのは本当にありがたい。



店員さんに「しばらくしたらメニューを持っていきます」と言われたので
しばらく二人で席についてタバコを吸いながら待っていた。

しかし待てども待てども店員さんは来ない。
お互い3本ほど吸っても来なかったので
軽く店の中に入り
「メニューお願いします」と伝える。

その30分後くらいに店員さんがメニューを持ってきてくれた。



ここのお店はとにかく待ち時間が長い。
席に着くまでの待ち時間ではない。
席についてからの待ち時間だ。
こんなに待っていたら日が暮れてしまうというくらい待つ。

メニューを持ってきてもらった時、
ついでに灰皿もお願いしたんだけど
灰皿が来るまでもしばらく待つ。

その後も注文を聞いてもらうまでもしばらく待った。


僕と友達は同じ商品を注文。
俺はトッピングで生クリームを山盛りにしてもらった。

注文してから料理が来るまで待っていたら
本当に日が暮れていた。


まず俺のワッフルが運ばれてきた。
凄くオシャレだし美味しそうだ。

…だがどことなく生クリームが山盛りではない気がする。


続いて友達のワッフルも到着した。
山盛りでは無いはずの友達の生クリームは
山盛りでトッピングをお願いした俺のソレと同じくらいの量が乗っていた。


俺は感情を声に出さない事は得意だが
表情に出さない事は苦手な自覚がある。

この時も恐らく「あれ?俺のクリームトッピングされてなくね?」って表情をしてしまっていたんだと思う。


店員さんが俺の方向を見た後
「お待たせしてしまったので、こちらのワッフルにも生クリーム山盛りトッピングをサービスさせて頂きました」
と言う。


僕はこの時、店員さんに妙な仲間意識を覚えた。
この店員さんも、感情を表情に出さない事が出来ないタイプの人間だ。

伝票を見て、俺のワッフルを見た時の
あの表情は、9割型
「トッピングの生クリーム忘れた!」の表情と
「トッピング忘れたの多分バレてるな」の表情だと考えて間違い無いだろう。


俺と違う所は頭の回転の速さだ。
もし俺がトッピング忘れた事がバレてると気付いたら
テンパりながら「申し訳ございません」を繰り返して生クリームを乗せに一度店内に戻るだろう。

しかし店員さんはすぐさま
「こちらにもトッピングをサービスしました」という言葉を僕達に投げかけたではないか。

良心とかそういう問題ら置いておいて、
俺は普通に「おお…」と感心してしまった。


僕達は「ありがとうございます」とお礼を告げ、店員さんは店内に戻る。


友人と顔を見合わせて小声で話す。
コレはトッピングを忘れたのか否か問題、及び
やっぱり俺達だけ待たされ過ぎたよな問題について。


書いていなかったけど
俺達より後に入店してきた隣の席のお客さんは
俺達より先にメニューをもらっていた。

俺達より後に来た別のお客さんも
俺達より後に注文したのに俺達よりも料理が届くのが早かった。


やっぱり
このお店が色々待つお店なのではなくて
俺たちが諸々待たされる客なんだなと言う事が
先程の店員さんの「お待たせさせたので…」発言で明るみに出た。


正直多少イラっと来てもおかしくない案件だとおもう。
でもこの店員さんの抜け方、誤魔化し方が個人的に凄くツボで
しばらく友達と二人で談笑した。


キッチリした対応を求めるなら
キッチリした街に行けば良い。
俺達が遊びに来てるのは良くも悪くもキッチリしていない、楽しい街下北沢だ。

この街でまで店員さんが全部キッチリしてたら
なんだか世界中のどこにも「キッチリ」からの逃げ場が無くなった気分になり
息苦しさを感じる気がする。
それになんか少し寂しいしつまらない。

別に特別下北沢が好きな訳ではないし
そんなに下北に詳しい訳でもないけど
やっぱり下北沢は、キッチリから少し離れてくれてるくらいが心地良い。
丁度このくらいの抜け方、丁度良いキッチリからの距離。

一通り笑ったり、今度別の友達にイタズラでもしようなんて話をしながらワッフルを食して会計へ。
レシートを確認すると、僕の分のワッフルも、友達の分のソレも
どちらもトッピングされていない料金で登録されていた。

僕の分もトッピング代をサービスしてくれた可能性も充分にあるけど
僕と友達は「やっぱりトッピング忘れたんじゃねえかよ」と断定して
店を出てからまた笑った。





こうしてこの日の出来事を書き起こしてみて。
あれだけ沢山笑ったけど
別に何一つ面白い事が起きていないという事に気付いた。
トッピング忘れる事が面白いなんて、そんなイカれた感性を
生憎俺は持ち合わせていない

でも、
久しぶりに中学時代からの友達と会って
中学時代のあの、何が起こっても面白かった頃のバキバキの感受性に
一瞬だけ戻れてたからあんだけ笑えたんだろうなぁと思った。

またこう言う中学生に戻れる日を何度でも過ごしたい。



P.S
日記の縦軸が「待たされた」ってなってるせいで
批判的に見えたら申し訳ないので弁解。
おしゃれな雰囲気だし、タバコも吸えるし、なによりワッフルがすごく美味しくて
素敵なお店でした。
















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