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青みピンクってなんだよ

 世の中には色があふれかえっている。ファッション業界は毎年新しい色を作り出しているんじゃないかってぐらい知らない色の名前を耳にする。それにしても、と宮木透子はクラスの女子の喧噪に囲まれながら考える。青みピンクっていうのは、ピンクなのだろうか、青なのだろうか。ピンクに青色が入るとそれはもうピンクとは呼ばないのではないか。数ある色の中でもピンクが最も苦手な色だ。種類が多すぎる。サーモンピンクはオレンジじゃ駄目なのだろうか。クラスメイトが通学バッグに様々な色のマスコットをつけて、せっかく黒一色であるそれを台無しにしていることに憤りを感じながら、自分の席に着いた。クラスに着いて早々にやかましく聞こえた「青みピンク」なる不可解な色の話をしている3人グループに視線をやりながら、自分の白い制服を整えた。
 女子の制服にはとかく色が多い。セーラー服のライン、リボンの色、ワイシャツの色、スカートのチェック、靴下の色とワンポイント。一体いくつの色を同時にまとわせれば気がすむのか。
 学ランにはあるくせに、本当に黒いセーラー服はなかった。それなら、白だ。
 自分が通えそうな範囲で、とにかく制服の色が単色であること。できればはっきりした色であること。それが透子が進学先を決める際の条件だった。
 
 白百合女学園。いかにも、な名前のこの女子校の進学実績にも、カリキュラムにも一切興味はなかった。制服が真っ白のセーラー服であるというだけで唯一無二の志望校になった。清廉なイメージの白いセーラー服は美しい。が、それはイメージ上の美しさしか考えられていない。この制服を採用する際に教師達は生理のことについて何か考えたんだろうか。


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