北アルプスを愛している #旅する日本語

　どうしてもまた会いたいと思う景色がある。

　長野県側から見る北アルプスだ。

　私は小学生の頃、長野県の松本市に住んでいて、毎日北アルプスを眺めていた。朝ごはんを食べる時には朝焼けの空と美しい山を眺めて、晩ごはんを食べる前には夕日に輝く美しい山を眺める。切り立ったカッコいい形をしている。綺麗だねえ、と言いながら見つめていた。

　私はその美しさに魅了されていて、いつまでもここに住んで毎日眺めたいと願っていた。父の仕事の都合で5年ごとに引っ越していたから、その願いはきっと叶わないと知っていた。中学一年の時に引っ越すことになってしまった。離れたくなかった。友達とも別れたくなかった。

　あの山を眺めた寧静な時間を思い出す。北アルプスに雪が積もり一面真っ白に覆われる時。春になって雪が解けて木々が山肌にあらわれる時。いろんな表情を思い出して、また会いに行きたいと思うのだ。

#旅する日本語