~一筋の優しい光~映画「ムーンライト」
ムーンライト……暗い闇の中に一筋の光が、一人の孤独な少年の人生を柔らかく照らしてくれるような切なくも美しい映画であった。主人公は、寡黙で控えめな黒人のシャロン。そんなシャロンの幼少期・少年期・青年期を描いた作品。
シャロンには父親がおらず、母親に育てられていたが、母親は恋人とともに麻薬に溺れ、”普通”の生活を送ることさえままならなかった。さらにシャロンの言動から”おかま”と罵られ、クラスメイトなどからいじめを受ける日々。
ある日、シャロンはいじめっ子たちから逃れるため廃屋へと駆け込んだ。そこへ麻薬の売人であるフアンがやって来て見つけ出されてしまう。その場所は麻薬の隠し所であり、危険な地帯だったため、フアンによって助け出されたシャロンは、フアンとその彼女のテレサによって保護された。そこでお腹いっぱい食べること、安心して眠ることができる清潔な寝床、そして何より自分の話を聞いてくれ、気持ちに寄り添ってくれる居場所を得ることができた。
しかし、高校生になっても、いじめや生活困窮はエスカレートする一方で、いつも俯きながら目立たないように生活を続けるシャロン。そんな時に、子どもの頃から唯一友だちであったケヴィンと再開する。優しく、男気もある性格のケヴィンは女子からもモテており、やんちゃな男子グループからも一目を置かれる存在に成長していた。
現状の過酷な社会に溶け込むケヴィン。高校生が自分を誇示するためにはケンカが強い、異性からモテるというのは最大のポイントである。そのあたりを上手く活かすことができる器用なケヴィン。しかし、自分のセクシャリティも含め、どうやっても社会に溶け込むことができないシャロン。そんなシャロンの生きづらさを敏感に察知したのもケヴィンであった。
とある事件が起こり、シャロンは生まれた町を去り、別の町に移り住み、子どもの頃からは想像できない程に体を鍛え、危険に身を晒しながら、一人孤独な生活を続けていた。
そんな時、ケヴィンからの一本の電話がかかってくる。そこから宝玉のラストシーンへ……。
あ~~~~~、もう全部言いたい、言ってしまいたい……。しかし、野暮なことはしたくないので、この写真だけ貼っておきます。
ケヴィンよ…、キミが男女問わずモテるのがよくわかるよ。絶妙なタイミングで自分でもわかっていなかった、一番必要なものを与えられたら……。それはそれは人生で最高の宝物となるんだろう。つらくても孤独でもそれさえあれば生きていけるような思い出……。本当に胸に染み渡ってくる。
人種差別・セクシャリティの問題・貧困・虐待・育児放棄・麻薬など、色んな問題が複合的に描かれているが、派手さや脅かすような演出はなく、終始一貫して静謐な空気感で撮られている。映像の美しさにも目を見張るものがあった。そして、何よりシャロンを見つめる人々の視線の柔らかさに胸が鷲づかまれた。
最近、男性のゲイのカップルが里親になったというニュースがあった。子どもに、その時に必要な愛情やお金・時間などが、例え身内でなくとも、与えられるのではいいではないか。「いいよ、いいよ!問題なし!!」と、この映画を見るとより一層言いたくなる。
いろんな愛情の形があって、それを受け取ったり、与えたりしながら生きていきたい。
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