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映画「焼き肉ドラゴン」

いやはや、ほんっとに面白かった!しかし、日曜日の映画館がいっぱいで見れずに(1時間以上前に行ったのにっ)泣く泣く友人との待ち合わせ時間までタリーズで時間を潰す羽目になり、平日の夜にリベンジしたわ。土日って映画ファンからすると受難よね。

舞台は高度経済成長期の大阪。万国博覧会が催された1970(昭和45)年。伊丹空港の近くにある韓国人街。その一角で焼肉屋さんを営む一家のお話。
亭主・龍吉(キム・サンホ)は、妻・英順と長女の静花(真木よう子)、次女の梨花(井上真央)、三女の美花(桜庭ななみ)の三姉妹と一人息子・時生(大江晋平)の6人暮らし。
韓国から日本へ渡り結婚。戦争に借り出され左手を奪われながらも、自力で焼肉店を開き、子供4人を育てるため、貧乏ながらも、家族やお店の常連たちと笑ったりときには喧嘩をしながら忙しくも充実した毎日を送っていた。

……というのが大まかなストーリーです(公式サイトより抜粋)。しかーし、こんな美人三姉妹がいたらまぁ事件よな。噂になってしゃーないで。しかも、ご両親は取り立てて美形ではない。というかブ……ス…寄り…よね? 
映画なのでそこはスルーしましょ。話が進まんのでね。ここよりネタバレ満載ですのでご注意を!

まぁ~~~、とにかく井上真央がすごいのなんのって。この人って大阪人なの?(ウィキペディアによると横浜出身)ってくらい大阪弁がネイティブ。(大阪で生まれ育った女が言うんだから間違いないっしょ。40年もな!)

イントネーションというよりも、佇まいや気迫が大阪の下町女のそれ!
オープニングからガチ切れしての登場。婚約者である哲男(大泉洋)との入籍日に大喧嘩しながら実家である焼肉店に帰ってくる。哲男が役所の人に難癖をつけて喧嘩になり、婚姻届を出さずに帰ってきたことであった。

婚姻届を提出しなかった真の原因は長女の静花(真木よう子)。哲男は昔、静花と付き合っていた。二人で出かけた際に静花が足に大怪我をしたことにより、障害を負ってしまう。哲男はそれでも結婚したいと言い張ったが、静花にフラレてしまった。しかし、哲男はまだ静華のことが好き。そして、静花も哲男のことが好き……。
それをわかっていながら哲男と結婚まで決めた次女の梨花。なんという女心。(あんな狭い家でこんなバトル、私だったら耐えられな~い)

梨花は自分に向けられない哲男の愛情への怒りや悲しみ、姉への嫉妬など、複雑な感情をうまく消化しきれずに怒ってばかりいる。そして、そんな自分に嫌気もさしている。

なんかわかるな~、優等生で優しく美人な姉。姉が望めばすべてが手に入るのに、それを妹へ譲る。これってはた迷惑な行為なんだよね。譲られた方はそれがわかるから余計に虚しくなるし…。誰も幸せにならないのよ…。(迷惑防止条例に指定してもらいたいわ。ホンマに)
そんな複雑な感情を爆発させながら演じきった井上真央。野獣みたいなお色気シーンもあるんだけど、ちゃんと気品があるんだよな。見てよ、この気高さ!花が咲いたようにお美しい。

そして、三女の美花(桜庭ななみ)はエキセントリックを絵に描いたような感じ。自分が欲しいものは欲しい!不倫でもかまわない。自分の決めた愛情に向かって突き進んでいく。その様子がなんとも大阪の下町の女の子らしい感じ。明るくかわいく、そしてワガママ。笑っていても、怒っていても、泣いていてもどこか弾んでいる感じ。これが若さってやつなのか(遠い目になるわ…)。

この二人に比べると真木よう子の演技は、なんというか『大根』と言わざるを得ない感じであった。おとなしいだけの女性という印象。
静花が感情を表したシーンもあったが、あまり心に迫ってこなかった。おとなしい女が牙をむくなんて最高においしいシーンだと思うが微妙でしたな。やはり演技の差でしょうなぁ。知らんけど…。

井上真央さまの凄さに(もはや尊いレベル…)本編の話からは少しずれてしまいました。本筋へ戻ります。

韓国からやってきた親世代と、在日二世として日本で生まれ育った子ども世代。親世代は韓国で生まれ育ち、日本へやってきて、言葉や文化を覚え、そして日本から戦争へ行き、自らの力で生活を立てていった。

子供世代は親が作ったコミュニティーや家を含めた生活基盤があるため、親世代のようなハングリーさはない。

そういった世代間ギャップについては、日本をルーツに持つ親子関係よりもダブルルーツを持つ方が大きいと感じた。そこへ「差別や偏見」がのしかかってくる。物語の中では、そういったことが積み重なり大きな悲劇をもたらすのあった。

大阪の片隅で、笑ったり喧嘩しながら、慎ましくも仲良く暮らしていた家族とその仲間たち。こういった家族がたくさんいたんだろうし、今もいるのであろう。差別や偏見や貧困など、どうあがいても埋まらない溝。『時代の波に翻弄された人生』なんて一言では片付けられないほど、人ひとりの人生は重く、深いのだと思い知らされた作品であった。

#映画 #コラム #感想 #焼き肉ドラゴン #036

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