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【大学編#3】仲間の時間も生きる〜チームメイトを引退させる〜

今日は、結構濃いめな人間物語をお送りします。

慶應大学バスケ部には基本的に“学生主体”でチームを運営していくという大方針があります。そして具体的なそれは、きっとみなさんの想像を超える形で表現されます。

それはなにか?

大学二年生〜三年生になる時期に、現役プレーヤーから学生スタッフに役職転向をしてもらいます。

つまり「選手の道を諦めて貰う」ということです。

同期とのミーティングで決める

この選出については、基本的に同期で話し合いを行い、チームへのベストアンサーを見つけ出します。こう書くと聞こえは良いですが・・。

ただの泥沼の話し合いです。本当に・・。

みんなチームへの思いは同じです。

ユニフォームを着て、コートに立ってチームのために一本でも多くのシュートを決めたいし、一本でも多くリバウンドを取りたいし、一点でも多く失点を抑えたい、そんな目標や覚悟を持って進学し、来る上級生に向けて決意を新たにしているタイミングなわけですよ。

そんな時期に引退宣告をするわけです。

そして、そんな同期の思いを誰よりも知っているのは、いついかなるときも一緒にいた同期です。その仲間を僕たちは面と向かった話し合いで「選手を辞めてスタッフに回ってくれないか」というミーティングをします。

お前は選手に相応しく無い!

この話し合いはかなりの時間と議論をしました。

面と向かって同期への不満や不足している部分をぶつけ合います。

「誰が選手としてコートに立つに値するのか」そんな議論を行います。

細かい言い回しは覚えていないですが、

お前はこういう時にサボっている。そんなやつは選手として相応しく無い!」

こんなやりとりが飛び交います。(結構な修羅場ですよね・・苦笑)

練習前後はほとんどの時間をこのミーティングに費やし、ある時は徹夜で一晩中話し合いを行うこともありました。

仲間の時間も生きる

そんな過程を経て、最終的な結論は出るわけです。この議論でスタッフに回ることを受け入れてくれた同期には心の底から感謝をしています。

実はその理由は様々で、前述の議論で結論が出ることもあれば、怪我の回復を目指しながら治療と並行しながらプレーしたが、その見込みをなかなか見られないことで自らけじめをつけ、スタッフを買って出てくれることもあるわけです。或いは、自身の実力を客観的に判断し、手をあげてくれる同期もいます。

正直、僕はいかなる状況に自分が置かれていても、そんな判断ができる気がしません・・。彼らには頭が一生上がらないです。

そうした経緯を経て芽生えた僕の中での心境の変化は明確でした。

僕の残り二年間のバスケットボールに懸けることができる時間は、自分だけの時間じゃないということです。チームのためにシューズを抜いてくれた同期の分もコートに立ち、何があっても勝利を目指すこと、そして勝利を持ち帰ること、そのためにプレーすることです。

つまり、「仲間の時間も生きる」ということです。

この感覚ってめちゃくちゃ僕の中で新鮮だったわけですよ。なんというか、それまでは「自分の活躍」が一番欲しいものだったわけで、人の活躍を喜ぶことができない自分が現にいたわけですよね。(詳しくは#2)

それが「自分のことは二の次で、チームメイトのために自分のプレーを捧げよう」と考えるようになりました。

それが良いのか悪いのかはさておき、これは慶應大学バスケ部における伝統や文化なのだと思います。それによって毎年継承されてきた「慶應バスケ部にしかできないバスケ」が確かに存在していたわけです。

それから、僕には、自分以上に大切なチームメイトができたことは言うまでもありません。そして、この出来事は僕の中でのリーダーシップに関する考え方にも変化を及ぼしました。

それは次回!

(続く)



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