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歩いてきた道を見つめて、生きていく、未来へ後ろ向きに踏み出す(なんでもない日に短歌でタイトルをつける日記10/28〜11/3)

好きな歌集から短歌を一首紹介しつつ、毎日の日記を書いています。
週のタイトルは自分で詠んだ短歌になります。ちなみに今週は、ちょうど1年前の日記の中で『葬送のフリーレン』を見て詠んだ一首。

先週は日記を書かなかったから、月火はむりやり先々週のことを挟んでいる(笑)。

10月28日

振り上げた握りこぶしはグーのまま振り上げておけ相手はパーだ

『毎日のように手紙は来るけれどあなた以外の人からである』枡野浩一

もっと本当に握り拳を振り上げたくなる日に、この短歌を選ぶはずだったが、なんとなく今日だと思った。別に振り上げる気はさらさらないけれど、強いていうなら語気が荒くなる程度で、仮にこちらがグーで立ち向かっても、相手はもっとかっちんこっちんのグーなので、こちらが手を替え品を替えとしなければらない、このフラストレーションはどうしたらいいのか。

突然だが、新卒23歳の頭がとんでもなく硬くて辟易している話だ。タチが悪いのは、相手が真面目だから、ってのもある。相手が真面目な以上、こちらも誠実に振る舞いたい。

という思いもある一方で、まだ若いから、新卒だからと雑に受け流したくもなる。翻って、自分はというと、まともなキャリアを築かずに30代後半に入ったおじさんである。それなりに言葉は持ち合わせているつもりだが、説教くさくなるのも避けたい。悩ましい話だ。とりあえず、グーもチョキもパーもいつも準備しておきたいけれど、本当はそもそもじゃんけんすらしたくないんですけど。

先週、帰宅途中にコンビニに寄ったとき、自動ドアではないタイプのドアを支える、ちょうどぼくの腰の位置くらいの背丈のちびっこドアマンがいた。出入店で数人の大人が行き交うところをドアのそばで見送る、おそらく小学校低学年くらいの男の子。

週末の衆議院選挙は、自民党の裏金とそれに続く2000万円問題ばかりが話題になっていてうんざりする。石破首相は「公認していない候補者に金を払ったというようなことはない。自民党の公約や政策を分かってもらいたいという思いで政党支部に出しているのであって、非公認の候補に出しているのではない。選挙に使うことは全くない」と説明し、そのうえで「このような時期にそのような報道が出ることに憤りを覚える。そのようなことは一切しないとはっきり申し上げる。偏った見方に負けるわけにはいかない」などと鬼の形相で宣っている。あの穏やかだった石破茂はもういなくなったのか。

自他の年齢差、立場、関係性に関わらず、誰に対しても同じように接する人間でいたいし、年齢を重ねても、立場や関係性が変わっても、変わらない自分でいたい。
若さは尊い。老いを呪いのように言いたくはないし、呪わないためにも、重ねた年齢に価値を見出される人間でありたいものです。

29日

迷いつつ時は過ぎゆく悔やみつつまた過ぎてゆくえび茶色して

『サラダ記念日』俵万智

選挙関連のニュースで笑えたのは、「お助けください」などと喧伝してまわった愚か者がいたことだ。天下の東大卒というから驚きだ。実質より表層のイメージが優先される時代に、これほど救いようのない選挙活動があるか。

選挙以外のニュースで先週気になったのは、神宮外苑の樹木の伐採についてだ。
結局、始まったのは週明けになってからだったが、ついにこの時が来てしまった。なぜこんなことが平気でできるのか、不思議でならない。神宮外苑にピラミッドでもできるなら、つまり数千年先まで遺る観光資源ができるなら話は別だが、今回の再開発に一体どれだけの価値のあるというのか。これだけ気候危機や環境破壊が叫ばれる時代に誰がどう見ても、悪行である。なぜこれだけ公共性の高い土地で、個人や資本の論理が優先されているのか。愚かさもここまで極まったか、と。

実質を欠くイメージは簡単にスクラップにできる。むしろ、スクラップが前提だからこそ損失を小さくするために軽量化して、ハリボテだらけになっていく。仕事の進行が大幅にリスケされたこともあり、何かとイライラしていて、だいたいすべての怒りの原因は資本主義にたどり着いてしまう。

週末は文学フリマ福岡にも行った。場所を特に確認してなかったために、昨年までの会場だった大丸の前まで来て、会場が変わったことを知って、来た道を戻る。文学フリマは今年も個人の熱気に満ちていてよかったが、まだ心残りもありつつ、汗だくで予約時間ぎりぎりの美容室まで走ることになった。

むりやり自己肯定するとしたら、向こう見ずで前のめりに走るより、常に後ろ髪をひかれながら走る人間でありたい。

30日

冬のあなたと夏のあなたが抱きあっているような雲 騒がしく照る

『カミーユ』大森静佳

本当は、今週から忙しくなるはずだった仕事がリスケになって、時間を持て余している。

この日記に何度も登場した境界知能っぽい彼が辞めて、入れ替わりで入ってきた中年の体臭がヤバい。ヤバいとしか言いようがないくらいヤバい。
つねに発酵したようなニオイがキツめに漂っていて、ぼくの嗅覚を急襲する。あれは過失じゃ済まされない。ぼくは鼻が弱いので、すっかり参っている。
もはや労災と言っても過言ではない。

週末は大雨らしい。冬と夏が抱き合った結果、秋は圧殺されそうだ。

31日

駄目じゃないけどハロウィーンにナマハゲの仮装していくような感じ

『私は日本狼アレルギーかもしれないがもう分からない』田中有芽子

職場近くのローソンが全力でハロウィンを楽しんで、店員がコスプレしていて面白かった。ハロウィン自体にはまったく興味を持ったことはないが、この店の感じは好きだ。ぼくもナマハゲで参戦しようかしら。

境界知能っぽい彼ととともにこの日記に何度も登場しているサイコパス系ナルシストがシゴデキすぎてヤバい。もう開き直って、全力で頼ろうと思う。
というか、派遣先の職場でも自分の勤めている部署は急拡大フェーズで、この先のその急拡大を考えると、なんかいけ好かないから、とか言ってられないような感じになりそうだから、諦めたと言った方がいいかもしれない。

11月1日

さびしさはさびしくなさの顔をしてゆぶねにひそんでたりするのです

『音楽』岡野大嗣

体温のこもった短歌だと思う。水面に映る自分の顔を叙情的に過不足なく詠み込んでいる。じっくり咀嚼して好きになる短歌もあるが、やはり目にした瞬間からグッとくる短歌を詠みたい。この一首はまさにそうだ。
さて、とくに短歌とは関係ない話だが、最近は弟夫婦の第二子出産を間近に控えて、弟と姪が実家に泊まりにくることが増えている。 この日のハイライトは何と言っても、2歳の姪が「じいじ」(ぼくにとっての父親)に「お金は大事」と言ったことだ。 「じいじ」がその辺に放ったらかしにしている現金を姪が触っていたので、「じいじ」に持って行って「お金は大事」と言うように仕向けたのが、成功した。
しかし、成功したかのように見えた姪っこによる「じいじ説教」大作戦だったが、姪が寝た後、じじいはまたその現金をリビングのテーブルに置きっぱなしにしていた。 このじじい、昼は近所の公民館で家鍵もろとも鍵を原付バイクにさしたまま、その場を離れて井戸端会議をしていたらしい。先月はスマホを酒の席に忘れて、帰宅後に気づいて探し回っていた。モノの管理の甘さに、家族一同ほとほと呆れているところだが、姪のかわいさをもってしてももうどうしようもできないようだ。

さびしさと秋刀魚の光を思い出す 戦争のニュース悲しく響く
(なんでもない日に短歌でタイトルをつける日記10/15~10/20)

去年の10月のとある1日の日記がよかった。
この半月後に生まれた甥が今日1歳の誕生日を迎えた。プレゼントに動物と植物の図鑑えほんを贈ることにする。

2日

思い出に降ってる雨を晴らそうとまずは蛇口を締めてまわった

『ひとさらい』笹井宏之

夜中から続く雨かやむのを待って外出しようかと考えていたけれど、雨がやんだ頃には外出するのが億劫になって、家で『夜ふかしの読み明かし』のシークレット読書会を見ながら、自堕落な1日を過ごした。個人的に、昼の部は哲学対話が、夜の部は読書会がとくによかった。

先週の日曜日には、『ほんのれんラジオ』に触れた過去の日記に、同ラジオの編集部からコメントをもらって嬉しかったし、去年の今頃の日記はほぼ毎日のように、その日に聞いたPodcastを記録している。またその試みを再開しようかしら。

3日

恵みにも災いにもなりうるくせにあなたの中を流れてる水

『すべてものは優しさをもつ』島楓果

朝、先月から読んでいた朝井リョウの新刊『生殖記』をやっと読了した。朝井リョウお得意の群像劇ではないものの、群像劇という形で活きていたメタ視点は不思議な視点に形を変えていて、そういう意味では朝井リョウらしさは存分にあるものの、兎にも角にも奇妙な一冊だった。あんまり他人に薦めることはしないだろうけど、強いて言うなら自己啓発や成長みたいなキーワードに未だに飛び付いてしまう若者には、いい一冊かもしれない。
でも、それは別の朝井リョウ作品でもよさそうだが。

日中は福岡PARCOで開催中のBOOK MEETS FUKUOKAを見に行く。とくに目当てはなかったが、7月に買った『NEUTRAL COLORS』という雑誌のバックナンバーを発見して、まとめ買いした結果、そこそこの出費をしてしまった。

夜は『海に眠るダイヤモンド』の第2話を視聴する。短歌は第2話の内容に寄り添う一首を選んだ。秋ドラマは個人的にいまひとつ盛り上がってなかったが、とりあえずこの作品だけは間違いなさそうだ。

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