自動運転概論
「自動運転」という単語には未来感漂うものの、現実はそんなに甘くない。日本での自動運転の実情と合わせて、国内の取り組み等について整理したい。
自動運転の期待と課題
なぜ自動運転が期待されているのか?
地方部を中心に公共交通を担うドライバーの不足が今後本格化する。自家用車に頼らざるを得ない人々の高齢化も相まって、多くの移動困難者が生じる懸念がある。
自動運転はそういった移動に困る人々や自治体、ドライバー不足の事業者などの多方面から期待されている技術である。
自動運転の課題は?
技術面、製品面、サービス面でそれぞれ課題がある。
技術面は各所で実証実験も行われているが、まだ既存のバスやタクシーと同等に走行できるとは言い難い。一定区間の往復・循環等の単純な用途からの実装が見込まれる。
製品面の最大のネックは価格。ドライバーを雇って運行する方が安ければ自動運転車両に切り替える動機は事業者には生じない。
サービス面の課題は、一般ユーザーの需要性である。ドライバーのいない車両に乗ることへの抵抗感をどう低減するかは今後の実証で検証が進むと思われる。
自動運転レベル
自動運転を説明するうえで、レベルについては避けて通れない。レベル1~5に分類されているが、2~4だけ覚えておけば十分。
レベル1 foot-off(hand-on)
自動ブレーキや、前の車両を追従するACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)のような運転支援機能を指す。
レベル2 hand-off
特定条件下での自動走行
日本で行われている自動運転実証のほとんどがレベル2の技術実証である。
ドライバーは常に運転を監視・操作準備する必要があり、事故等の責任はドライバーに帰属する。
一部では複数台の自動運転車両を一人で遠隔監視する実証が行われており、こちらは将来の社会実装に向けた実証と言える。
レベル3 eyes-off
特定条件下での高度な自動走行
基本的にすべての運転タスクをシステムが担うが、システムが対応できない場合はドライバーの対応が求められる。事故等の責任は原因によりドライバーに帰属する場合もシステムに帰属する場合もあるが、境界が曖昧である。
社会実装については、レベル2からレベル4に一足飛びに進めるべきと考えている識者も多い(ちなみに、私もその方が良いと考えている)。
レベル4 mind-off
特定条件下における完全自動運転
ここからが本当の自動運転と呼べるレベル。ドライバーの役割を担う人がいなくても走行できる状態。
同じルートを往復する程度のものから、ジオフェンスを設定すればそのエリア内である程度自由に走行できるものまで、特定条件には幅がある。どの程度のレベル4なのか、という見極めは必要。
レベル5
完全自動運転
この状況が整う日が来るのはまだ近くない。まずはレベル4で走行できるエリアを広げ、それをつなげていくことができるか。
国内の注目プロジェクト
茨城県境町
日本で初めての自動運転バスを実用化。5年間の計画で自動運転モビリティサービスの社会実装を進める。
定時定路線の運行からはじめ、距離を伸ばしたり、デマンド運行を始めたり、着実にサービスを拡大させている。
福井県永平寺町
こちらも複数年に渡り、自動運転モビリティサービスの実証を行っている自治体。1人で複数台の車両遠隔監視を行っている。
関係省庁の取り組み
RoAD to the L4
正式名称は、「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト」
経済産業省が国土交通省と連携して立ち上げ
自動運転レベル4等の先進モビリティサービスの実現・普及に向けて、研究開発から、実証実験、社会実装まで一貫した取組を行う
関連サイト&資料
自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン
2016年5月 警視庁
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