インド旅行記・プロローグ

「インドに行こうと思うんだよね。」

今から15年ほど前の年始、地元のヨガクラスの後にいつもの仲間でマクロビオティックのレストランでご飯を食べながら、帰省ついでに参加していたレアキャラの空ちゃんが突然そんな事を言い出した。彼女はちょっと天然が入った不思議ちゃん系の人である。

「え?インド?何しに?旅行?」

みんながざわざわしだして、空ちゃんに詰め寄る。彼女によると、インドで1〜2ヶ月間ヨガのレッスンを受けるとヨガインスタラクターの資格が取れるらしい。ヨガ好きの友達と2人で、4月いっぴで出かける話を進めているとの事。私はその話を、まるでテレビのスクリーンから流れるエンターテイメントの様に聞いていた。

家に帰って部屋でぼんやりしながら、「インドかぁ・・すごいなぁ・・・海外ってどんなところだろう・・」なんて事を考えていた。私はそれまで身近な人が海外旅行するという話をあまり聞いた事がなく、また自分でも海外旅行してみたいという勇気も持っていなかった。なんだか御伽話を聞いた様な不思議な感覚で、この日の夜は眠りにつくまでインドについて考えていた。

翌日目が覚めた時、なぜなのか説明はつかないけれど私は「インドに行ってみたい」という気持ちになっていた。ヨガのインストラクターにも興味があるし、何よりもインドという未知の国に惹かれ始めていた。でも・・・と思いとどまる自分もいた。

当時の私は短大卒業後定職に就きもせず、ずいぶん長い間アルバイトだけで生活をしていた。ちょうど一年前に、当時勤めていたレストランで正社員に正規雇用してもらったばかりだった。仕事は好きだったし、やりがいもあった。職場の人にも恵まれていて、とても良くしてもらっていたし、何よりも両親が私がやっと落ち着いてくれた事に喜んでいた。

4月からはレストランの客足も伸びて忙しくなる、長期の休みはもらえない。皆んなに迷惑をかけてしまう。お店を辞めると言ったら、両親はどんなにがっかりするだろうか・・・・と考えて私は一旦自分の気持ちはしまってしまった。しかも別に空ちゃんに一緒に行こうと言われたわけでもない・・・

日が経つににつれて、私の中でインドについての興味はどんどん膨らんでいく。私はインターネットでインドについて調べまくり、本まで買って読みだしていた。1週間後、私はインドに行く事を決めて、空ちゃんにヨガ旅行の仲間に入れてもらえないかと連絡をしていた。

空ちゃんの返事は意外にも二つ返事だった。一緒に行く事になっていた友達が仕事の都合でいけなくなり、キャンセルしたいと言い出した直後の事だった。後に、この理由が仕事の都合だけでは無かったと知るのは、出発当日になってからだった。


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