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腹巻きと私

はじめに

私、26歳(今年で27歳)。
腹巻き愛好家。

腹巻きを着け始めて、早14年。
ほぼ一年中着用している。
(流石に40℃近くになる真夏日は外すこともある。)

「私と腹巻きは一心同体、運命共同体、戦友、etc…。」
親、友達、恋人とは比べものにならないほど
時間を共にする、相棒である。

誤解を招かないよう補足すると、
腹巻きは生活消耗品であるため
代替わりしている。

正確に把握していないが
年一回世代交代しているとすると、
今の相棒は14代目といったところだろうか。

あくまで「腹巻き」という概念と一心同体だということを
理解いただきたい。

出会い

中学生になった私は、
胃もたれに悩まされるようになった。

ご飯を食べてすぐに動くと
胃が重たくムカムカする感覚に襲われ、
生欠伸が止まらず、立っていることがしんどくなるのだ。

この頃から、外食では脂っこいもの、冷たいものを避けるという
中高年層のような食生活を送るようになっていた。

自分のことながら、食べ盛り、育ち盛りの時期に
かなりの痛手を負ったと思う。

特に悲しかったのは、
地元のお祭りで
友達は唐揚げや焼きそばといった屋台メシを美味しそうに食べているのに、
自分は後で苦しくなるからと
食べるのを我慢したこと。

母と病院に出向きお医者さんに診てもらったが、
特段悪いところは無く、体質のせいということで落ち着いた。

そんな私に
ある日母がプレゼントを買ってきてくれた。

胃腸からお腹まで温かく優しく包み込んでくれる、
絶対的な安心感。
シンデレラフィットした奴に
一目惚れというやつである。

そして、心なしか胃もたれが緩和されるような感覚があった。
(※個人の感想です。)

かくして奴は私の相棒になった。

思春期

中学生で腹巻きを覚えた私は、
ほぼ一年中(前述の通り)肌身離さず着用し続けた。

誰にも気付かれることなく、
身体をホカホカにしてくれる特別感。

物理的には一枚余分に覆われているが、
精神的には一皮むけた感覚があった。

奴との共同生活はいい事尽くしと思われた矢先、
問題が発生した。

  • 健康診断

  • プールの授業

これら2つに共通するのは、
他のクラスメイトと一緒に着替える空間の中で、
奴を着脱しなければならないということだ。

私は腹巻き信者であったが、
周りにそれを打ち明けられずにいた。

奴は老若男女問わず、誰でも包み込んでくれると分かっているものの、
やはり古臭いというイメージに囚われていた。

例えるなら、お父さんと一緒に出かけているところを
友達に見られた時のような恥ずかしさ。

ただ、学校に外していくという選択肢は
考えられなかった。
(外したら冷えてお腹を壊すのではないか…と心配になるほど
中毒になっていたため。)

誰にもバレず、どう着替えるか
試行錯誤の毎日を過ごした。

多分、誰にも気付かれていなかったはず…。

現在

そんなこんなで学生時代が過ぎ社会人5年目となったが、
今もなお腹巻きをひっそりと着用している。

長い付き合いなのに、
足蹴にしてごめんなさい。

そんな私は、最近某ファッションサイトで
衝撃を受けた。

20~30代女性をターゲットにしているであろうブランドで、
まるで腹巻き(というか絶対腹巻き)が販売されていた。

説明すると、
シュッとしたモデルさんがパリッとした青いYシャツの上から
灰色の筒状のニット(商品名は「ビスチェ」)を
胸元からお腹にかけて着用していたのだ。

名は伏せられているが、奴が自己主張している…。
奴の時代が訪れようとしている。

これから

小心者の私は、今後も
腹巻き愛好家であることを隠し続けるのだろう。

熟年主婦のような関係になった私たちは
どうこうしたい訳ではなく、
このまま穏やかに過ごしていくことになりそうだ。

温活という言葉が知られるようになった今、
腹巻キストは各所に点在していると信じている。
同志よ、健闘を祈る。

#腹巻 #着用 #相棒 #温活
#創作大賞2024 #エッセイ部門

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