邪なキャンプでカップ焼きそばを食う人生など、気持ち悪い
youtubeでキャンプの動画を観ていると
キャンプ行きたいな、と思った
キャンプなんて行ったことないのに。
正確には幼いころ近所の人たちと近くの
川にキャンプに行った覚えはあるね
なんか暗い中で飯を食って寝て朝になって
帰ったことしか記憶にはないけど
いや、そういえば朝食の時隣のおばちゃんが
夜通し女の幽霊がテントの周りを歩き回って
怖かったという話をずっとしていたな
「あなたたち気づかなかったの」
ってまるで僕と弟が鈍感だ、バカだと言わんばかり
の言いぐさで子供ながらちょっとムカついた
そんな思い出。
その時弟はちょっとしたケガをしたのだけれど
その原因も女の幽霊にあるのだ
と隣のおばちゃんは繰り返し主張していた
うちの弟がその女の幽霊になにか失礼な
事でもしましたか？
なぜ見も知らぬうちの弟がケガをさせられなきゃ
いけないのか、説明していただけますか
と食って掛かろうと思ったくらい僕もマセたガキ
だったな、と何十年も経ったいま辟易している
だったらキャンプなんて行かなくてもいいでしょ
そうだね、なぜ行きたいと思ったんだろう
養う家族などいないのだから
家族サービスなんで必要なくて、だから
キャンプに行くとしても僕一人で行くのだ
一人でキャンプに行って一人でテントを設営して
一人で火を起こし、一人で飯を作り、食って
寝るのだ
ああ面倒くさい
面倒くさいし暑いじゃん
あれ？
さっき一瞬、「キャンプ行きたいな」って思った
あの気持ちはどこから来たのだろうか
集団行動は苦手だ
よっぽど気の知れた人であっても
僕は素の自分を出せないでいるから、多分その
相手に合わせてちょっと装った自分を演じることになる
相手の思い描く僕のイメージにできるだけ
合わせようとする、そういう性質が昔からある
家族にですらそうなのだ
だから多人数になるといったい誰に合わせればよいのか
分からなくなって結局、何もかも面倒くさくなり
早く帰りたいな、とか考え始めてしまって
ちっとも楽しくないのだ
そうか、僕が見たキャンプの動画はソロキャンプ
だったから、一人になりたいと思ったのかもしれない
そう思う端からその説は即否定された
だってもうこのところずーっと僕は一人なのだ
孤独と言い換えてもいいかもしれない
それなのにわざわざ荷物を抱えて山の中だか
海辺だかに出向いてその孤独を噛みしめる必要は
きっとないはずだ
じゃあアレだ 山の中で一人で
大自然の中で一人で、思いっきりエロを楽しむのだ
そうだ、露出だ
生まれたままの姿になって自然と融合し
降りそそぐ星空の下で宇宙と溶け合うのだ
どうだろ？そういうのって実際
どこかで誰かが見ているからこそ楽しいのじゃ
無いんだろうか？やったことないからわかんないけど。
それに虫とか刺されたら嫌だしな
スズメバチとか、マダニとか、ヤマビルとか
ああ、想像するだけで想像したくない
却下だ
うん、でも分かってる
本当は分かっている
一番気持ちの悪いことを僕は思ったのだ
ここで文字にすることすら躊躇われるような
邪な妄想をしたのだ
きっと僕はあのyoutube動画で観たような
ソロキャンプをしている男の人と一緒に
キャンプをしたいと思ったはずだ
決して自分一人ではなく、あの人たちの
誰かと一緒にテントを設営し火を起こし
湯を沸かしてコーヒー淹れたり、飯を作ったり
ランタンに火を灯して、宵闇に紛れていろんな
話をしたりしたいと思ったのだ
今までの人生の中に無かった体験を
してみたい、まさかの自分がそんな恥ずかしいことを
思い描いたなんて、にわかには信じられないけれど
きっとそういう思いだった
素の自分をひた隠しに生きてきたから
偽装した自分で友人たちと楽しむことが苦痛で
いつの間にか輪を抜け、孤独に生きていたけれど
本当は屈託なくそういう体験をして生きたかった
そう言うことじゃないか？
ああ気持ち悪い
そんなことをうじうじと考えている自分がとても
気持ち悪くてちょっと今正視できないな
だってきっと、その焚火を囲みながらも
一緒にキャンプしている人の腕の血管とか
ふくらはぎの張りとか、かがんだ時の尻の丸みとか
絶対に視姦してるに決まってるもん
ほらだから、そういうとこに自分の性癖を持ち込むな
とうんざりした気持ちになるけど、でももうそれは
性（サガ）なのだろう
だからこそ、今まで避けてきたのだし
きっとこれからもそうして生きていくのだ
ああもう面倒くさいな俺
そんなことよりさっきスーパーで見かけた
ひろしという名のカップ焼きそばを買わなかったこと
後悔しているよ
ひろし、と言えば舘ひろしか玉木宏しか
浮かばないけど彼らだと焼きそばにしては美味しそうじゃないな
ああ、キャンプと言えば「ヒロシ」って人もいるけど
それなら元TOKYO No.1 SOUL SETの川辺ヒロシが良いなあ
おしゃれそうだし、ああでもだったら焼きそばってより
パスタとかだよね
とか、どうでも飯倉片町
なーんか思いのほかつまんない人生に
なっちゃったな
うーん、これはあの女の幽霊のせいじゃないよ、たぶん
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