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『ボーダレスネーム』感想

 谷中分室『ボーダレスネーム』1巻を読みました。
 広告代理店で働く女性が漫画を描く話。今は働きながら漫画を描く方ってたくさんおられると思うので、そういう方には共感性の高い作品かも。
 私も親に漫画を描くことを賛成はされなかったものですが、そういう時代はもはや古くなってきていると感じます。

 私はもう20代の初めにケチョンケチョンになったせいで、夢を見ることへの恐れとかそういう段階は通り過ぎちゃいました。やりたくない仕事をやってもしょうがないし、「こう生きれば正解」なんて括りはない時代だと思います。変化が激しすぎて明日のこともわからないのに、夢も見ないでどうする? という感じです。

 広告って、物語の漫画表現とは実は真逆の性質のものなんですよね。広告は他者の言いたいことを汲み取って伝える仕事で、漫画は自分の表現したいことを伝える仕事だから。
 だから、たとえば広告で主に使われるイラストとかっていうのは限りなく個性が抑えられた誰からも嫌われないものが求められるし、逆に物語性を表現する絵なら個性が必要だったりとか。ファッションの広告で、コラボ商品でもないのにバキバキのオタクイラストの女の子が商品を着ている絵を見たら、その絵がいくら可愛くても一定数の人が場違いって思うでしょう。でもそれが広告じゃなくてコミックスの表紙だったら普通ですよね。

 だからこれまで広告を作っていた主人公が、漫画を描きたいのに何を描いたらいいかわからないと悩んだり、やっと漫画を描いたとき初めてもらった批判的なコメントが「キャラの描き分けもできてないし、コマ割も見にくい」なのが、リ、リアル〜!! と思いました。

 しかしそれ以上に、広告代理店勤務だなんてめちゃくちゃ忙しい職種だろうに、その余暇で漫画描くのって相当しんどいことだと思うのですが、それでもめちゃめちゃ楽しそうに漫画描いてるのが、もう最高〜!! わかる〜!! って思いました。漫画を描くことは楽しすぎるので!
 とても面白かったです。

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