Nikki （4/24～4/30）

月曜日
大学の教授という存在が未知すぎて興味深い。ひょっとしたら「教授をしている人」とスーパーですれ違ったりしたことはあるのかもしれないけど、教授としての役割を果たす人々と空間を共有しているということがおもしろすぎて、学食で見かけても自販機の横で見かけても「教授がコッペパンたべている！」「教授が水分補給している！」みたいな感動を味わう。彼らが専門分野について語るとき、よく分からないけどこの人すごい人なんだなと思う。すごい人が一緒にコッペパン食べてるのおもしろすぎる。

火曜日
600円分の学食を毎日食べることができるミールクーポンというものを利用している。事前に代金は払っていて、スマホでミールの画面を開けば支払いができるようになっている。こうなってくると元を取るべくなるべく600円ギリギリを攻めたくなるのが貧乏人根性である。ただ600円というのが絶妙で、ラーメン大盛りを食べても400円程度にしかならず、そもそも私は大盛りを食べることができない。あまり食べすぎると次の講義で爆睡するのが目に見えている。日々いかにして適切な量で600円ギリギリにできるかということに苦心している。先日友人がうどんにケーキ、牛乳という奇怪な組み合わせで580円という快挙を収めた。友人は「奴隷だよ。私たち、ミールの奴隷」と言った。

水曜日
村野四郎「鉄棒（二）」の詩と図書館で再会する。中学校三年のとき、通っていた学習塾のテキストで読んだ。はじめてあの詩を読んだときに座っていたプラスチックの椅子の尻に感じた座り心地の悪さがよみがえってきた。テキストには載っていたけど、「受験に詩はまず出ないので」ということでスルーされていた。こういうことが勉強なんだなとそのときは思った。今はずいぶん違う勉強をしている。どう思うか、思ったことをそのまま言ってみろと言われたり、一週間かけて考えてこいと言われたり、なんなら何をしろとも言われなかったりする。いちいち戸惑いながら、でも手応えを感じる。

木曜日
一限の教授が朝弱いらしく、なんかめちゃくちゃしんどそうにしている。「君たちはまだ起きられるだろうけど、断言する。君たちが卒業する頃には、君たちは僕のように朝起きられなくなっている、間違いない」という嫌な予言。
第二外国語の発音が難しい。私の発音がよほど酷いらしく（発音が違うと全く違う意味の言葉になるらしい）、私の発音練習を聞いてもらうたびにTAさんがツボっている。最終的にはいつも爆笑している。笑ってもらえるうちはたぶん大丈夫だろう。徐々に真顔になられたらつらい。日々TAさんに笑いを提供している。

金曜日
謎の微熱がでたりひっこんだりするのが謎すぎて病院へ行く。喋り方がギャルな感じを受けるお医者さんに診てもらう。免疫が爆下がりしてるときにプチ風邪くらったんじゃないの、しっかり休みなよ〜とのこと。全体的に明るくてすごく雰囲気のいい病院だった。ギャル効果か。帰りにお医者さんのものと思しき靴が下駄箱に置いてあった。ヒョウ柄だった。
自分で挙手したのはいいものの、結局言葉に詰まってしまって上手く説明できなかった。根気強く教授が言いたいことを拾い上げてくれて、いい着眼点だと言ってくれた。いつも人の歩み寄りに甘えてしまうことがつくづく嫌になるが、下手くそなりに人とちゃんと話したいと心の底から思う。

土曜日
お友達と課題をするなど。
親戚の体調がすぐれないという連絡が来た。今にもどうにかなりそうという訳ではないらしいが、彼はたいへん癖が強いので彼の看病は大変だろうと思う。やはり当たり散らかしているようだ。看護師さんって偉大だなとも思う。浅浦の兄弟は彼のことを「戦後日本における急激な経済発展によって生じた歪みの擬人化」と呼んでいる。実の祖父に向かって凄まじい形容だとも思うが、確かにそう考えると今の彼の人格が彼の育った時代背景を伴って立体的に浮かび上がるのである。頑固じじいではないが、根本的にわかり合えないでいる。生きる時代の違いだから仕方ないと思っている。そういう違いを目の当たりにして、もろに傷つくことは減った。けどなかなか難しい翁だし、孫も孫で素直ではないのだ。

日曜日
遮光カーテンのサイズが小さいようで、毎朝差し込む光で六時前後に起きてしまう。休みの日ぐらいもうちょい寝かせてくれよー、と思っていたら鶯の声が聞こえて、跳ね起きて窓を開けた。まあ姿は見えないよね、と平安貴族みたいなことを思った。結局二度寝した。
地元のお友達からLINEがきた。「ねえ」「げっぷでた」。そうかい、としか言えない。静かな部屋でげっぷがでて恥ずかしかったので、隣に座った知らない人の顔をまじまじのぞき込んでいかにも「おまえいまげっぷしたろ～？」という表情を浮かべることでげっぷ疑惑を擦り付けることに成功したと言う。訳が分からない。近況を報告しあう。訳の分からない近況ばかり報告される。
半日ぐうたらして過ごす。寝たら頭の痛みがとれて明らかに体が軽くなった。新生活の疲れがどっと出たみたいだ。午後から買い物に出かけたり、課題を片付けたりした。部屋の掃除はできなかった。