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『しあわせな日々』と歌

高校演劇の地区大会審査員を毎年やっている。

全校が終わった後に審査員の講評という時間があって、僕はルーマニアの劇場で聞いたこんな話をした(うろ覚えだから間違っているかもしれない)

両親が出稼ぎに行かなきゃならないルーマニアの家族の姿を描いた「ファミリア・オフライン」という作品には、子役が登場する(もちろん専業なんかではない)。この作品において、雪が降るシーンがあった。ある上演で、その子役は突然、その雪を拾い上げると、とことこと、人形でつくられた弟のところに持っていくという演技をした。演出家が「なんで雪を持っていったの?」と聞くと、その子役は「だって、弟は雪は見たことがないから見せたかったんだよ」と言った。

「想像力」と聞くと、この話を思い出す。頭の中で空想することではなく、それが人を突き動かしてしまうことこそが想像の力だ。

稽古がいまいちうまくいかないのは、ウィニーの「歌」に対する想像が及んでいないからだ。

「歌うのが早すぎるのは致命的」
「歌は心の底からやってくる」
「歌えウィニー、お前の歌を」

なぜ、彼女は歌うのか? 歌は、彼女にとってどんな意味があるのか? 何に似ていて、何に似ていないのか? もしも歌ったら、何が、どう変わるのか?

困ったらいつものように、語源を調べる。そろそろ、そういう辞典が欲しい。

(形声)音符は哥(か)。
説明哥(か)が歌(か)のもとの形です。哥に、口を開いて立つ人を横から見た形の欠(けん)を加えた字が歌です。歌とは神への祈りの文を入れた器のを木の枝で殴(う)って、祈りの実現を訴えるときに出す声です。
用例「歌曲」(かきょく:うた)・「歌舞」(かぶ:うたと舞)。
解説日本語の歌(うた)は、「拍(う)つ、訴(うった)う」と関係があるようです。詠歌(えいか)の詠は、声を長く引く歌いかた、歌は強くせまるような歌いかた、唱(しょう)はみんなで勢いよく合唱する歌いかたです。
https://japanknowledge.com/articles/kanji/column_jitsu_09.html

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