認知症マフのはなし その1

6/18(木)付け朝日新聞朝刊 関西版
#KANSAI ほんまもん
認知症マフ®︎の普及活動を取材してくださいました。
誌面より長文のデジタル版は有料記事なので会員の方以外は全文読んで頂けないのですが、写真はすべて見ることができます。


認知症マフとは、手元に不安を感じる人が触れたり手を通したりして落ち着けるように、ボタンやリボンなどさまざまな飾りを付けた筒状のニット小物です。
手を入れるとふんわり温かく飾りを触って楽しんだりホッと落ち着くといいます。
イギリスなど海外の高齢者施設や病院でも使われており英語で「Twiddle Muff(トゥイドルマフ)」と呼ばれています。

社会福祉法人朝日新聞厚生文化事業団は2018年から普及活動を開始されました。私は2019年から作り方監修、ワークショップ講師としてマフ普及活動のお手伝いをしています。
昨年末、暮らしに馴染む新デザインのマフ普及を目的としたNPO法人ONBOARD の中の人になりました

マフを日本に導入した
当時の大阪事務所長(現ONBOARD代表)の山本氏によるコラムです


最近はマフが広く知られるようになりボランティアさんが編んでくださったものを全国の介護施設や病院などで実際に導入して頂けるようになってきました
この機会に「私とマフ」のお話をします

朝日新聞厚生文化事業団のMさんからマフ普及に力を貸してほしいとご連絡を頂きお会いした2019年
パーキンソン症候群でこの世を去った亡き義母の長く続いた介護の余韻をまだ引きずっていた頃でした
同居していた義母は私を実の娘のように大事にしてくれて
主婦業のかたわら奮闘していた
ニット作家の活動を誰よりも温かく応援してくれました

Mさんから丁寧にマフの詳細を伺いました。
マフが生まれたとされるイギリスは羊毛原産国、まさにニットの国です
日本人がお米を食べるようにイギリスの歴史の中で人々の暮らしに編み物は素晴らしい文化として根付いています
誰ともなしに手ざわりのよいマフが編まれるようになり
編む人にとっても使う人にとっても
マフが何の違和感もなく受け入れられているのはとても自然なこと 

子供の頃母が編んだセーターを着て育ち
テクスチャフェチが高じて
ニット作家になった私
イギリスのマフのお話はすんなりとふに落ちました

実は日本で最初に認知症マフを作ったのは事業団と交流があった広島のボランティアグループ「だんだん」のみなさんです。
毛糸ではなくフリース素材のマフを提案、実際に作ったものを介護施設に贈呈したのがスタートです。
イギリスのような手編みのマフも普及させたい、と私に白羽の矢を立ててくださいました。

編み方を考えて提案するスキルはあるけど認知症のことはもちろん福祉、介護、医療の知識は全くありません。
はたして自分が役に立てるのかどうか悩みました。

義母の闘病中鼻から栄養補給をすることがありチューブを抜いてしまわないよう拘束ミトンを着けられた姿を見るのが切なかったこと
社会貢献とか関係なく単純に
日本でまだ誰もやってないことにチャレンジできること

これらが決めてとなり
自分のライフワークとして
普及のお手伝いを決心したのでした

いざ引き受けてはみたものの
一体これをどうやって日本で普及させていけばよいのか問題は山積み
正解がない手探りのチャレンジが始まりました

作り方監修にあたり
まず最初に「認知症マフ」という直球すぎるネーミングが引っかかりました
いちおう私もデザイナーの端くれ
イメージを大切に仕事しています

「名前・・・変えません?」
「横文字カッコいいしTwiddlemuffではダメですか?」

強い意志を持って日本での普及活動を始めた山本氏から
「幅広く知って頂くためにはインパクトとわかりやすさが必要」と説得されました

そう、マフは日本ではまだ誰も知らない
毛糸で編んだ筒…
効果も未知数です
イメージは二の次
「それは何⁈」と興味を持ってもらうことが大事

今ではワークショップに参加してくださったみなさんが
地域での普及活動にあたり
「ケアマフ」「手あそびマフ」「なごみマフ」「オレンジマフ」「スマイルマフ」などさまざまな名前をつけてくださっています

「認知症マフ」というド直球ネーミングで走り出すことになるのですが
仕事柄これで普及活動をすると
新たな問題に繋がる可能性が
あることに気づいてしまうのでした

つづく

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