「ヒトノカタチ」EX1:頭脳労働

いつものレイア家の夕食、3人が食卓を囲んでいる、そんな途中…
「おや?メールが来たか」
レイアが着信に気づいて端末を見る。
「…おっ、久しぶりに順番が回ってきたぞ、ミイ」
ミイが顔を上げる
「えっ!頭脳労働やるんだ!」
「そうだよ、しばらくぶりだから今夜やるかい?」
「うん!」

頭脳労働というのはドロイド分散処理業務…要はドロイドの頭脳をネットワークで繋ぎ、分散計算をさせることである。
当然処理量に応じて報酬が支払われるので、一般的に仕事をさせるのが難しいコドモロイドの数少ない稼ぎ頭としてコドモロイドのオーナーに人気がある。そのためなかなか順番が回ってこないことも多い。大人型もコドモロイドも搭載される頭脳の性能に差はないので、体が小さい分計算に伴って出る熱の処理などで有利なため、コドモロイドが好んで使われることが多い。

そして風呂が終わった後、いつもなら寝る時間の時に風呂桶に水が溜められる。レイアが準備をしている間にミイは裸になる。
「じゃ、入って」
そう言うとミイが水風呂に入る。おもむろにレイアがミイにケーブルを繋いでいく。
「それじゃ、始めるぞ」
そう言うとレイアが端末を操作すると、ミイが急速に生を失っていき、ブランとした格好になる。そうするとレイアがミイの体を完全に水につける。
「これだけありました」
正が氷の入ったたらいを持ってくる、そして氷をおもむろに風呂桶に入れる。
「頑張ってな、おやすみ、ミイ」

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そして朝、レイアが端末を操作すると風呂桶からあぶくが上がってきてミイが体を起こす。
「ぶはぁ!!」
「おはよう、ミイ」
ミイが起きると付けていたケーブルが外される。
「おはようございます」
「“夢”は、見たかい?」
「んー、見た記憶があるけど覚えてない」

“夢”というのは計算している最中やその後に思考プログラムが夢を見ているような状態になることである。通常は外部計算プログラムが内容に関しては消してしまうのだが、まれに残ってしまう場合もあり、それで何をやっていたのかが分かることもある。

「今回は結構ハードな内容だったようだな、水がぬるくなってるよ」
「そ、そう?どうりで体が火照ってるわけだ」
「さ、とりあえず体をふいて着替えて、朝ごはんですよ」

3人で朝食の食卓を囲む
「ねー、今回何やったのかな?」
「今回はどうやら”キューブ”の中の記憶の再現化処理みたいだったね」
「へえー、もしかして”古代のゲーム”の内容だったりしないかな?」
「はは、そうだといいかもな」
「それはそうと、次の古代ゲー新規配信、報酬が出るからちょっと余裕出るし課金してもいい?」
「ああ、今回もお疲れ様だから度が過ぎなければいいよ」
「やったー!」
「ははは、いいマスターに恵まれて良かったですね」
「まあ、それぐらいが丁度いいってとこかな」
こうしていつもの朝が過ぎていった。


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