「ヒトノカタチ」STORY-22:それぞれの道

ーーーある日曜日、レイア、ミイ、アスナ、マシュの乗った車がシンジュク方面へ向かっている
「まあ、今回はちょうどよかったところだな。みんなが古代ゲームフェアに行くからな」
「ええ、ルリさんから何か古代ゲーをモチーフにしたお菓子なにか作れない?って持ちかけられたんで、一応配信されているやつとかも手を付けてみたんですけどよりリアルに再現されたものも見てみたいなと思いまして」
レイア、マシュが話をしてるとミイも
「えー、ちょっと食べてみたいな〜」
マシュが声を掛ける
「やっぱり興味ある?またモニターしてくれるとありがたいかな」
「うん!是非とも!」
そう話をしている間、レイアがアスナに
「今回、あんたは古代ゲームショップ「PLAY」のお手伝いだよな」
「そうですね、なんかリンちゃんがメンテ入っちゃったりキリト君も忙しいしで人手が足りないっていうから、急遽ちょっとお手伝いお願いできない?って話が百合子さんからルリさんにあって、それで行くことになったのよね。自分が指名されたのって、やっぱりレン君の意向よね?」
「だろうな。ルリさんもわざわざレン君が来る日にシフト入れたりするから、考慮してるんだろうけど」
「……やっぱり、私のことまだ気になってたりするのかしら」
「そうなのかな。まあルリさんも新発見をいち早く流してほしいって思惑がありそうだし」
「そこはレン君と私のつながりをうまく利用してるのかな」
「お陰で古代ゲー界隈では聖地の1つになってるって言うし、いい関係になってるんだろうな」
「それにしてもレイアさんも結構詳しくなってますよね」
「まあミイの相手してると自然と覚えていってるんだよね。マスターとしては」
そう言うとミイが
「へへ、お姉ちゃんも最初こそ困惑してたけど楽しんでるじゃん」
「まあな、ちょっと課金は痛いけど」
「そんなこと言って〜楽しんでるんだったらいいじゃん」
「ま、ほどほどにな」

ーーー会場につき、待ち合わせ場所で待っていると百合子とレン、アルルがやってくる。

「どうも、来てくれてありがたいです」
「アスナちゃん〜待ってたよ〜」
レンがアスナの胸元に入る。それを百合子が
「ちょっと、今回はあくまでもお手伝いだからね。そこは忘れないでよ」
「でも考慮はしてくれたんでしょう?」
「ま、まあね。ルリさんとこはお得意様だし」
そしてミイとアルルも
「久しぶりー元気してた?」
「また会えてよかった〜」
そんな再会をしてると
「ところで眼鏡かけてる人は?」
「ああ、今回古代ゲーフェスに行きたいって言ってたマシュさんだよ」
そうレイアが軽く紹介するとマシュも百合子に近寄って
「どうも、フジヨシダでケーキ屋やってるマシュです。よろしく」
「こちらこそよろしく」
「つまらないものですけど、これどうぞ」
そう言ってマシュが箱を渡す。
「えー、いいですか?いただきます」
「まあご挨拶代わりってとこで」
「お約束どおり招待者パス渡すわね、レイアさんとミイちゃんにも」
「あ、ありがとうございます」
「どうも、ありがとうございます」
「わーい!良かった〜」
3人が喜んでると。
「じゃ、準備に入らないといけないから、また会場でお会いしましょう」
「おう、頑張ってな」
そう言うと百合子とレン、アルル、アスナが会場に入っていく。
「まあ良かったよ。ちょっとしたコネがあって」
「ええ、こんな形でお世話になって……ありがたいです」
「そろそろ入場列ができる頃だよな。行こうか」
「わーい!行こう行こう!」
こうしてレイア、マシュ、ミイの3人も入場列に向かっていく。

ーーー

そうして開場し、それぞれ各々が動いていく。
「それ!向かうわよ~」
ミイが早歩きして目的のブースに向かう。
「ちょっ……待ってくれよ」
レイアがその後についていく、そして目当てのブースに並び
「良かった~買えたよ」
「良かったな、今回は新しく発見されたゲームのカセットだよな」
「そう、今回独占供給で、配信ないっていうから」
「それをどう遊ぶんだい?もしかして実機復元品に手を出すつもりかい?
「うーん、そうしたかったけど互換機で我慢する」
「まあ実機復元品に手を出すと沼だからな……」
「とりあえず、目的は果たせたから挨拶回りしてくる~」
「そうか、じゃあ昼ぐらいに入り口付近でな」
「はーい」

レイアが「PLAY」のブース前までやって来る。
「やあ、調子はどうだい?」
「おかげさまで順調よ。ありがたいことに」
百合子と立ち話してるとレンが
「あ、ありがとうございます。マスターのルークさんによろしく伝えてください」
「おう、伝えておくから心配ないよ。心置きなくベッタリしてくれ」
「へへ……」
そう言ってるとアスナも
「良かったわね。こう2人でいられるのもマスターのおかげだから、感謝しないと」
「分かってる。感謝しかないです」
「そう、伝えておくわよ。また機会があればご一緒したいって」
そこに百合子も
「ルリさんにもよろしくって伝えてね。また次の解析の成果が上がりそうなところだから、希望があれば流してもいいわよ」
「はい、ルリさんもよろしくって言ってましたので」

ーーー一方、マシュも会場を回っているが……
「ふん、いろいろ回ってみたけど奥深い世界ではあるわね」
そう考えてると1つのブースに目が向く。
「おや、お菓子売ってるブースがあるわね、焼き菓子中心でイベントとかではよく見かけるタイプだけど……」
そう見ていると店員が寄ってくる。
「いらっしゃいませ〜……」
ふと店員と目が合う、すると……

「……え?」
「……まさか?」
お互いに向き合う、そして
「久美ちゃんじゃない?なんでこんなところに?」
「マシュさんだよね、そちらこそなんでこんなところに……」
2人が思わぬ再会に声を上げる。
「今何やってるんだい?」
「今は会社員やってるの。でもどうしてもお菓子から離れられなくてお友達の店を手伝っててよくイベントに来てるの。マシュさんはなんでここに来たの?」
「まあ、お得意様の依頼があってその下調べかな」
「とすると、まだどこかの店にいるの?」
「今は親の店を継いで店も大きくしたよ」
「そうなんだ!」
2人で立ち話をしてると誰かが後ろから久美を引っ張る
「あのー、お姉たま、こんなところでお茶濁さないで下さいね」
「あ……ごめんなさい。じゃ自分はイベントが終わったら帰れるから終わったらまた会いましょうね」
「わかった。連絡先教えておくよ」
2人はお互いの端末を合わせて連絡先を交換した。

ーーー

閉場間際、レイア、ミイ、マシュの3人が「PLAY」ブースの前に集まっている。
「どう?イメージできた?」
「ええ、おかげさまでいい刺激になりました」
百合子とマシュが立ち話してるとアルルも
「マシュさんとこのシュークリーム、美味しかったよ〜」
「それは良かったです。お取り寄せもやってるんで是非とも」
「わーい!また食べたい!」
一方ではレンとアスナが名残惜しそうに
「じゃ、またお会いしましょうね」
「う、うん……ルリさんとルークさんにもよろしく」
そして百合子が
「もう片付けに入らないといけないから、また機会があればお会いしましょう」
「おう、また今度な」
「ミイちゃん、また遊ぼうね」
「うん!また遊ぼう〜」
そうして4人が会場を後にする。

「ちょっと、話をしたい人がいるから付き合わせていい?」
「いいよ、誰なんだい?」
「製菓学校時代の同期に偶然会場で会っちゃって、その人と……」
「わかった、まあ車だから時間に余裕はあるからな」
そう話をしていると久美ともう1人がやって来る
「またお会いできたわね、マシュさん」
「おう、また会えたね」
「隣の人たちは?知り合い?」
「ま、まあね……知り合いで、お得意様だし、いろいろあってここに来るのに付き合ってもらったのよ」
そう言ってレイア達も挨拶をする。
「どうも、レイアです。よろしく」
「ミイでーす。よろしく」
「アスナです。よろしくお願いします」
「よろしくね。皆さん」
「ところで会場にも一緒にいたこの子は?ドロイドだよね?」
「そう、私のパートナーよ。名前は真夢ちゃん」
そう言うと真夢が挨拶をする

「どうも、真夢です。よろしくです」
「よろしくー」
ミイが真夢に飛びつく。
「やっぱりドロイド同士だと仲良くなるのも早いよな」
「まあ真夢ちゃんはこれでも意識は大人なんですけどね。でも子供らしさも併せ持ってるっていう感じかな?」
「ま、立ち話もなんだから近くのカフェにでも入るかい?」
「そうですね」

ーーー

5人が近くのカフェに入り、それぞれ注文して話し込み始める。
「親の店はどうしたんだい?」
「それが……自分にはどうしても後を継げる自身がなくて、父が亡くなった後店畳んじゃったんだよね……」
「そうか……」
「店大きくしたって言ってたけど、どんな感じかな?」
「まあ、こんな感じかな」
そう言って店と従業員の集合写真を見せる。
「えー!本当にここまで大きくできたんだ」
「まあおかげさまでショッピングセンターへの出店も決まりそうだし、順調に行ってるよ」
「この長耳の人は?男の子っぽいけど」
「その人、自分のお婿さんなんだよね」
「えー!まさかハウ族の人と結婚したの?」
「そう、ちょっとした縁があってね。逆プロポーズしちゃったよ」
「へえ〜でもハウ族って食費すごいかかるって聞くけど、大丈夫なの?」
「まあうちはケーキとかのロスを加工してカロリーブロック作ってたりするから、そんなに困らないんだよね」
「ふーん」
レイアも話しかける。
「ところで、2人の関係って?」
「まあ製菓学校時代の同期で、ライバルって感じかな」
「もうマシュさんったら、単純に仲良しよ」
「まあ案外久美ちゃんとこにはよく手伝いをしてたりして、仲良しなのは確かだけどね」
「レイアさんはどんな関係?」
「まあお友達とともにお得意様かな?レイアさん家族総出でうちのファンだし」
「何やってるんですか?」
「警察官やってるよ。ロボット部だからかかわりがあるし」
「そうよね〜ドロイドもいろいろいるみたいだし。ときのそらちゃんもいる!」
「おかげでその子は人気者だよ。SNSとかでも取り上げられるしいい宣伝になってるよ」
「ふーん、ちょっと来てみたいな。マシュさんとこのケーキの味も久しぶりに味わってみたい気もするし」
「いいわよ、いろいろ変わってるところもあるけど是非とも来てほしいかも」
「じゃあ、またお会いしましょうでいいかな?」
「じゃ、また連絡するわ」

---そして翌週の土曜日、新しい「Sponge」の店の前に久美がいる
「……ちょっと、緊張しちゃうわね」
そんなことを思ってるとマシュが店の中から出てくる。
「ようこそ、新しい店舗へ」
「本当に綺麗な店舗ですね……」
「まあな、とりあえず立ち話も何なんだから店に入ろう」
「は、はい……」

「いらっしゃいませ~」
店内にいる従業員が一斉に挨拶をする。
「あら、ドロイドばかりかと思えば人間のウェイトレスさんもいるのね」
「えへへ……人間代表です」
なるみが照れくさそうに話す。そして2人がテーブルに着く。久美がメニューに目を通していると
「気になるのはあるかい?」
「ええ、それなら日替わりセットでお願いします」
「かしこまりました〜」
なるみがオーダーを取っている
「どうだい、雰囲気は悪くないだろ」
「そうね……いかにも今風のカフェって感じで」
そんな話をしているうちにケーキとドリンクが運ばれてくる。しばらく無言で食べ進めるが……
「うん、やっぱり昔と変わらない、マシュさんとこの味かな」
「そうかい、良かったよ」
「新しいテイストも盛り込みながら基本は変わってないのはすごいよね」
「まあ、これでも父の跡を継いだあと好き勝手やってる方なんだけどな。店を大きくしたのもそうだし」
「そう……私はどうしても親の味は超えられないと感じちゃったから……」
「でもやっぱり、あんなところでやってたっていうのはお菓子作りに未練はあるんだろう?」
「ええ……」
「……うち、来ないか?」
しばらく沈黙が走るが……
「……え?」
「ちょうどショッピングセンターへの出店にあたって人手が欲しいんだ。お菓子が分かってる人間が必要だからちょうどいいと思うけどどうだい?」
「……ええ、こんな私でよければ」
「もちろん新製品の企画とか、そのへんにはガッツリ関わってもらうよ。単なる雑用じゃないからそこは心配しないで」
「よ、よろしくお願いします」
2人は手を掴み合っていた。

ーーーそして数週間後、店の朝礼にてマシュが
「じゃ、新入社員を紹介します。まず久美さんと真夢ちゃん」
「久美です、よろしくお願いします」
「真夢です、よろしく」
「この2人にはもうすぐ開店するコウフのショッピングセンターの店舗担当になります。そしてメイコさんとマヤちゃん」
「メイコです。よろしく」

「マヤです〜よろしくお願いします」

「メイコさんはドロイド管理担当でエリカさんとパートナーになります。そしてマヤちゃんは新しいウェイトレスさんで、うゆりちゃんのパートナーになります」
「どうもエリカです。よろしくお願いします」
「ど、どうも」
「うゆりです〜よろしくお願いします」
「うゆりちゃん。よろしくね」
「じゃ、各パートナーで打ち合わせよろしくお願いします。それでは今日も頑張りましょう」
「はーい!」
一斉に挨拶をした後、それぞれ持ち場につく。

ーーーそのまた数週間後コウフのショッピングセンター店舗の開店日
「ようやく、この日が来たわね」
「ええ、大変でしたけどやりがいのある仕事を任されてありがたいです」
マシュと久美が話をしている。そして話が終わると
「初めまして、ノワです」

「初めまして、ここの責任者になります久美です。早速だけどパートナー紹介するわね」
そう言って奥からドロイドを1人連れてくる。
「初めまして伊織です。よろしくお願いします」

「初めましてノワです。今後ともよろしくね」「そしてこちらが私のパートナーになる真夢ちゃんです」
「真夢です。よろしくお願いいたします」
「真夢ちゃん、こちらこそよろしくね」
「早速だけどミーティングしましょう。みんなで来て」
そう言って久美が3人を引き連れてミーティングを始める。一通り終わると開店の時間が迫ってくる。
「さて、もうすぐだわ。みんな定位置について」
「はい!」
そして開店とともに人が流れてきて、あっという間に行列ができる。各人が忙しく動き回る。

しばらくして客の流れが落ち着いたところで、マシュが全員に声を掛ける。
「ご苦労さま。まあ初日としては予想以上にいい出来だったよ」
久美が照れくさそうに
「あ、ありがとうございます。なんとか回すことができました」
ノワも
「ありがとうございます。疲れたけどなんとか切り抜けられました」
「ご苦労さん。ドロイドとも上手く連携できて良かったよ」
そしてマシュもノワに声を掛ける
「ノワちゃん、よくやってくれました。そしてドロイドの2人も」
そうすると真夢と伊織が口を揃えて
「「ありがとうございます」」
「はは、こんなところにもドロイドらしさが出てくるな」
「もう、そんな事言わないで!」
真夢がちょっと膨れっ面をして迫る
「まあこれも褒め言葉だからな、さて、自分は店に戻るよ。営業終了まで気を抜かないで」
「ありがとうございました!」
4人がマシュを見送っていた。


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