「ヒトノカタチ」STORY-6:家族の形

---フジ学園高等部1年B組教室の昼休み
メイアが弁当箱を取り出して昼食の準備をしていると、隣の席のモエが近づいてくる

「ねえ、昼食一緒に取らない?」
「いいよー、たまにはいいよね」
そう言って2人が机を突き合わせる。お互いに弁当箱を開いて見せあいっこする。
「ふーん、人間の食事と変わらない気もするねえ」
「いや、母星の食材とかこういうところだとなかなか手に入りにくいし、人間の食べ物だけだとカロリー足りないからカロリーブロックで補うのよ」
「あの、ものすごい脂っこいお菓子みたいなの?」
「そういうのが多いけどいろいろだよ。うちはマシュさんとこのやつよく買ってるから甘いよ」
「売れ残ったケーキとか使って作ってるんでしょう。聞いたことある」
「そうそう。おかげでロスが少なくなってありがたいって」
「へえー、そうなんだ」
そんな話しながらお互い食事を進める

「ところで、メイアちゃんの家族ってどんなんだっけ」
「母とドロイド1体と…お父さんは…」
「エリスちゃんの乗っていた宇宙船に乗ってたんでしょう?エリスちゃん最後の動画を撮ってたって」
「…うん」
「あ、触れたら悪かった?」
「ううん、いいよ。そういうモエちゃんは」
「うち、かたっぽ夫婦だから…お母さんがドロイドでお父さんが生身なの。自分は赤ちゃんの頃身請けされて、精子こそお父さんのだけど卵子はだれかの他人よ」
そう言ってタブレットの写真を見せる


「へえー、お父さん案外可愛い感じじゃん。お母さんも可愛い」
「えへへ、お母さんは独身時代に中古でお迎えしたって言ってる。そこからそのまま夫婦という形にして自分が生まれたみたいね」

---かたっぽ夫婦…片一方が人間で、もう片一方がドロイドという組み合わせで(お父さんが人間でお母さんがドロイドという形か、その逆、さらには同性カップルもある)人間の子供を育てるという形態のこと。どちらかの人間から精子または卵子の提供を受けてもう一方は第3者から提供を受ける、または両方とも第3者の提供を受ける形。さらには社会維持のために誕生しある程度成長した個体を引き取り育てるという形式もある(この辺の話は第4話とインターミッション4でも触れてるのでそちらも参照)

「お母さんがドロイドって言われたのはいつぐらい?」
「もう幼稚園の頃ぐらいには気づいてたけど、言われたのは小学校の頃だった」
「お母さんが人形だって知って、どう思った?」
「あまり気にはしなかった。どんな形でもお母さんはお母さんだから」
「そうなんだ」
「ところでさ、最近カフェでバイト始めたからちょっと来てみない?」
「えーどこの?」
「駅前の「クロスウィンド」っていうところ」
「えー、モエちゃんの制服姿見てみたい!シフト教えて!」
「う、うん…次の土曜日の昼間入ってるから来てもいいわよ」
「わーい、楽しみ〜!」

---その週の土曜日、カフェ「クロスウィンド」にて
「いらっしゃいませー」
メイアが入店すると4人のメイド服を着ている店員が一斉にあいさつをする。
「あ、来てくれたんだー」

「わー、メイド服姿のモエちゃん、すごくかわいいー」
「えへへ、そう言ってくれると嬉しい」
そう言ってると1人が寄ってくる
「この子、お友達?」
「そうですー、紹介するわ、メイアちゃんです」


「私はマスターのルリ、よろしくね。あと2人はドロイドよ。左側がフィーナちゃん、右側がキズナアイちゃん」

「フィーナです。元々はマスターの家事手伝いドロイドだったんだけどね。よろしく」

「アイちゃんでーす。よろしく~」
「みんなよろしくね~」
「でもみんなメイド服なのに最初の挨拶は「いらっしゃいませ」なのね。「おかえりなさいませ、お嬢様」じゃないんだ」
メイアがそう言うとルリが困惑した顔をして
「い、いや、うちはそういう店じゃないから。アキハバラの店だったらそういうのもありだけど」
「ふーん、でも可愛いからありかな」
「ま、ゆっくりしていってね」

メイアがテーブルに案内されて座る
「そういえばここのテーブルってみんなゲーム台よね、変わってるような…」
「これ?マスターの趣味よ」
「そう、私自身古代のゲーム好きだからさ、こういう台置きたかったのよ」
「へえ、やっぱ変わってるー」
そんなやり取りしながらメニューを見てるともう2人入店してきた
「いらっしゃいませー」
「よう!またミイが来たいっていうからな」
「こんにちわ〜また来たよ」
来たのはレイアとミイだった
「いらっしゃい、最近復元できたっていうタイトルが入荷したけどそれ目当て?」
「うん!」
ミイとルリが話すと該当のテーブル台に案内した。
「ミイちゃん、ここの常連さん?」
「そうね、古代ゲーつながりで知り合い同士でもあるわよ」
フィーナとメイアが話してるとミイが顔を向けて
「あ、メイアちゃんだ。珍しくこんなところに来てるんだ〜」
「…こっちも知り合い?」
「そう、家が近くっていうのもあるけどちょっと色々あってね」
「ふーん、ところでオーダーは決まった?」
「あ、アイスミルクティー下さい」
「はい、承知しました」
「うちはアイスコーヒーで、ミイは?」
「いつものケーキセット、アイスティーで」

皆それぞれの時間を過ごしながら
「モエちゃん、ここでバイトするきっかけって?」
「うん、やっぱり古代の写真とか動画見ててメイド服に憧れてかな」
「へえー、そういえばここってドロイドとお話しできる?」
「予約制でできるわ。アイちゃんが一番人気よ」
そう言ってるとドロイドの2人が迫ってくる
「お待ちしております」
「うん!機会があればね」

「ごちそうさまでした~」
「じゃまたねー、今度お話しましょう」
「お待ちしてます」
3人が会計して店を出る
「じゃ、どうせ近くだから一緒に帰ろうか」
「あ、ありがとう」
そうして3人が車に乗り込んでいく

3人が車の中で話をしている
「ミイちゃん、ケーキセットなんて子供の割には渋いわね」
「そうかな?マシュさんちのケーキだから好きなんだけど」
「へえー、あそこのケーキってマシュさん所のなんだ」
「そうだよ、意外と有名だと思ったけど…」
「マシュさんは親から店を継いでからいろんなところに出るようになったね。なんかショッピングモールに出るとかって話もあるらしいよ」
「ええーすごいじゃん」
「ああ、ルリさんところもケーキを供給してくれるようになって助かってるって」
「ふーん。まあマシュさんところのカロリーブロック美味しいし、また食べに行きたいな」
「メイアちゃん、今度また一緒に行かない?」
「うん!」
「ははは、また楽しみが増えたな」

レイアの家の近くまで来た
「じゃ、またねー」
メイアがそう言って家に向かう。レイアとミイも向かっていく
「楽しかった~また新しいのが入ったら行きたいな」
「そうかい、でもほどほどにな」
そうして2人は部屋に入っていった。


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