「ヒトノカタチ」STORY-13:ゆく年くる年323

フェリスさん家のフレイア、レイがレイア一家にお呼ばれした。
「どうも、レイです。よろしくお願いします」
「フレイアです。よろしくです」
「お二人様いらっしゃい。レイアです。よろしく」
「ミイでーす。よろしくねっ」
「アスナです。よろしく」
「すずねです。こちらでもよろしく」
「正です。早速だけど仕込みに入りましょう」
そう言ってレイを正が台所まで連れて行く。
「フェリスさんはいつも毎年恒例の年越しコンサートに行ってしまうからこんなに賑やかな年越しは初めてですね」
「そうかい、まあ楽しんでくれ」
「コドモロイドが2人もいる家庭なんて賑やかでいいですね」
「まあちょっと大変だけどな。でも賑やかなのは楽しいよ」
フレイアとレイアが立ち話をしている。
「でもレイ君またフラッシュバックしないかな…」
ルークが心配そうにしていると、アスナが
「そこは私に任せて!これでも癒やしの力はお墨付きなんだから」
「まあドロイドがドロイドを癒すっていうのも変だけどな」
「そんなこと言わないで!ドロイドにはドロイドなりのやり方はあるわよ」
「そうか…まあなんとかなるかな」
「そんなものよ」
そう言ってアスナも仕込みに入る。

正、レイ、アスナが仕込みの間、それ以外の人はカードゲームに興じている。
「あー、また負けちゃった」
「フレイアさん、意外とこういうのに弱いんだな」
「私の場合思考が人間らしくにパラメーター振ってるから論理的な部分は苦手で…」
「まあ両方が強いミイみたいなのは珍しいんだよね。両方にパラメーターを振るっていうのはコストもかかるし普通やらないよ。元々ミイちゃんは中古だしね」
「んもう、それ言わないで!」
「そのせいで容量がギリギリで拡張する余裕がなかったから安かったんだけど、それが当たりだったからね。まあ、それは幸いだったって言うか…それを受け入れてくれたレイアには感謝しかないと思うぞ。下手すると全リセされかねないし…」
「ん…まあ。でも私みたいな方が人間味があって良いって人も多いわね」
「そうだな。あえてそうする人も多いし…」
「私が本気出したら怖いからね~こういう場だからあえて本気出してないけど」
そんな話をしていると準備ができて呼び出される。
「みんなー、出来たよー」
「はーい」
4人がダイニングに向かう。

テーブルの上には年越しそばの準備ができている。
「いただきまーす」
全員の声が響く。
「うん、つゆが美味しい」
「ええ、いろんなつゆの味を知ってるのでそこからここにある材料を使って再現してみました」
「へえ、レイ君は案外料理には詳しいんかい?」
「戦場でもぬけの殻になった家に入って、台所とかにあるレシピノートを読み取ったりして家庭料理の情報をいろいろ集めてたよ。そうするとみんな家の味だって喜んでくれるし…」
「そうか…無機質なレーションよりは味気があるからな」
「元そば屋だったっていうドロイドから秘伝だっていうゆの配合を教わったこともあったよ。その子は教わった矢先に先代が夜逃げしてそのまま売り飛ばされてしまってそこから動員されて…そして自分が教わった翌日には帰ってこなくて…うっ…」
レイが泣き崩れてしまう。
「あ、フラッシュバックしちゃったか…悪いことしちゃったな」
そうしてるとアスナが
「どう?悲しいでしょうけど、引き継げてあの人は嬉しかったと思うよ」
アスナがレイの顔に手を差し伸べる。しばらくすると顔を上げて
「ご、ごめんなさい。また無様な姿見せちゃって…」
「まあいいわよ。ドロイドだったらデータ流し込むだけでいけるから」
「すいません…でもそんな能力どこから?」
「病院船にいたからこういうトラウマを抱えた子、人もドロイドも沢山見てきてるわ、そのおかげね」
「そうか…」
「まあ落ち込まないで、食事進めましょう」

---カフェ「クロスウィンド」にて
「あー、アスナちゃん家のお蕎麦おいしそう」
「いいなあ、みんなで囲んでお蕎麦なんて」
「モエちゃんはメイアちゃんの家でエリスちゃんの過去の年越しライブの映像見ながら蕎麦食べてるのかな?かつてのエリスファンの恒例行事よね」
「へえ〜そんなことやるんだ。楽しそう」
フィーナとキズナアイがSNSに送られてくる画像を見ながら話をしている。そこにルリが
「へえ、みんなにぎやかにやってるわね」
「うちもみんなでお蕎麦食べようよ」
「そうきたわね、実は近くのお蕎麦屋予約入れてるから、みんなで行かない?」
「えー!行こう行こう!」
「よくこんな時期に予約取れましたね」
「飲食仲間のコネみたいなものよ。みんな着替えて行きましょう」
「わーい!行きましょう!」

---一方、署では
「あー、みんな賑やかにお蕎麦食べてていいなあ、よりによって当番にあたるなんて…」
春香が椅子に寄りかかりながら端末の画面を見つめている。
「まあまあ、こんなもんですが食べましょうよ」
さくらがそういって出前されたお蕎麦を差し出す。
「ありがとう。それにしてもレイアさんがいないのにあんたが起きてるなんて不思議ね」
こさぎも寄ってきて
「実際に何かあった時に対応に当たるのは私たちだからね」
「まあね、初日の出暴走の対処に回されないぶんありがたいと思わないとね」
「そうよね。とりあえず翌朝まで頑張りましょう」
「はーい」

そしてレイアの家では全員でTVの前に集まってフェリスさんの年越しコンサートのライブ配信を見ている。
「いやー、やっぱりいつものフェリスさんの本気だな。いつかは生で聞いてみたいものだよ」
「フレイヤさんも人口声帯だから本気出せばできるよね」
「いえいえ、やっぱり人間にはかなわないですよ」
「でもそのおかげで声はきれいよね」
「ええ、でもそのせいでバッテリーは普通のモデルよりもたないのよね…コンサートで共演することもあるけど、その時は電源ケーブル繋いだ状態で歌うし…」
「そうだよな。憧れる人は多いけどなかなか難しいからね」
「でも、おかげで喜んでくれる人がいるのは嬉しいですよ」
「そうだな、また姿見せてくれるのを楽しみにしているよ」
「へへ…」

そして配信も終わり、フレイア・レイの2人が帰っていくところをレイアとルークが見送りに外に出た。
「じゃ、良いお年をっていうことろかな」
「誘ってくれて嬉しいですよ。また機会がありましたらみんなで会いましょう」
「今度はフェリスさん家にも行きたいね」
「いつでもいいですよ。歓迎してます」
「ではまた〜」
そう言って2人が足早に去っていく。
「…ふう」
そして2人が見送っている。外ではかすかに鐘の音が響いている。
「ああ、こんな形で年越しなんて戦場にいた頃はなかったよ。足を洗って正解だったのかな…」
ルークがつぶやく。レイアも隣で
「それに無事再会もできたんだから、なおさらだよな」
「そうだな、ドロイドを恐れずにこうして生活なんてのもできなかったしな」
「カイ店長からも聞いてるけど仕事はよくやってるっていってたからな。職場が合って良かったな」
「小さい猫にいろいろ言われるのも慣れたよ。さすがに200年以上は生きてるだけはあるよ」
「ま、寒いから帰ろうか。明日はおせちがあるからな」
「そうだな、帰ろうか」
そうして2人は家に帰っていった。

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