「ヒトノカタチ」STORY-21:ピンクライフ

---カイ店長とルークが車で現場に向かっている
「さて、いい機会だから今回はちょっと特殊な現場を見せてあげよう」
「特殊な現場……ですか」
「『第一秘宝館』っていうところを知ってるかい?」
「ああ、妹が時々1人で行ってるところですね」
「今回はそこからの依頼じゃ」
「そこって、大規模なドロイド風俗ですよね。それでよく行ってるっていう……」
「あんたは行ったことないのかい?」
「あまり興味はなくて……」
「でもドロイドたちとよくやってはいるんだろう?」
「ま、まあ……そうなんですが」
「そうかい……まああそこは性だけでなく、さまざまな欲望を仮想体験できる総合テーマパークだからな」
「ええ、なんかいろいろやってるって……」
「かつて開拓時代は生殖に関して厳しい統制があった。むやみに交雑するとまずい部分があったからな。そういうこともあって性欲を埋めるためにドロイドたちが活躍していた。そんな歴史があるんじゃがな」
「その辺は定着支援教育やドロイド取扱主任者の教材にも出てきましたね」
「本来性器というのは複雑な機構なのでつけないほうが割安になるんじゃが業務用途でもない限り不思議と付けたがるんじゃな。まあドロイドに求めるものの1つなんだろうな」
「そうですよね、年齢設定関係なく付ける人は多いですし……」
「アンタも戦場の慰問でそういうドロイド風俗の出張が来たことはあるだろう?」
「そういうのは見たことありますね」
「利用したことはあったかい?」
「いえ、当時は人形とヤるなんて考えたこともなかったですし……」
「まあそんな流れがあってこういう施設があるわけじゃ」
「店長はそんなところ利用してたりするんですか?」
「うちらは地球人類ほど性欲はないからな。まあ多頭飼いするとあっという間に増えるがな。元々自然の厳しいところで住む種族だからな……」
「ところで、今回呼ばれた理由って?」
「話によるとRSCの不具合があるとのことじゃ。本来ならあのような施設ならちょっとした修理やオーバーホールまでできる体制にはなってるんだが、それでもRSC本体はいじれないんだよ。それができるのはこの辺じゃワシも含めて数名だけ。それで白羽の矢が立ったんじゃ」
「そうですか……」
「まあいい機会だから色々見せてやろうと思って同行させたんじゃ。アンタもドロイド整備士の資格を取って実務経験を積めばできるようになるぞ」
「まあ……そのうちにですね」
「そうか……さて、そろそろ着くかの」

こうして施設の裏側に車が止まり、2人が降りて鉄の扉の前に向かう。そしてインターホンを鳴らし
「もしもし、カイじゃが」
『カイ様ですね。お待ちしておりました。連れの識別子も一緒に提示してください』
2人が身分証カードをかざすと扉が開く。中に入ると入った扉が閉まる。
「随分、厳重ですね」
「中のドロイドが逃げないようにこうなってるんじゃ。逃げるとまずいことになるからな」
もう1つの扉が開き、中に入ると扉が並ぶ廊下に出る。
『ピット104番で準備ができております。お入りください』
そう案内に誘導され104と書いてある扉の前に立つと、扉が開く。2人が中に入ると
「一通り、修理のための装備は揃ってますね。うちのメンテルームと同じだ」
「そう、他にも同じような部屋が複数あるぞ」
そうしていると修理対象のドロイドが運ばれてくる。ルークはドロイドを凝視して
「……すごい、リアルだ。これ本当にドロイドなんですか?」
「そうじゃよ。閉鎖空間で運用するものだから外観規制がないので、特段リアルに作ってあるんじゃ」
「へえ〜本当に動き出しそうというのはこんな感じですよね。まあ通常のドロイドでもそうですけど」
「そうじゃな。こういうより人間らしい行為をするためにここまでのものが要求されるんじゃ」
「それで入口が厳重だったわけですね」
「その通り。逃げたりでもしたら一大事だからな。もっとも制御は外部制御だから逃げられないがな」
「でも、外部制御でなぜRSCにかかわることが?」
「こういう個体でもRSCは個別に装備する必要があるんじゃよ。それは取扱主任者の勉強で学んだだろう?」
「ええ、でもそういう現場って限られるって……」
「まあそうなんだけどな。さて、作業に入るぞ」
「は、はい」

「……うーん、これはT60型のRSCの不具合からくるものじゃな。通常ならネットワークによるファームアップで直るものじゃが、今回はネットワークでできない部分に不具合があるからオフラインでファームアップする必要があるな」
「ネットワークによるファームアップができない部分での不具合となると厄介ですね」
「そうだな、こういう部分はむやみにいじれない部分だからな。今回はそこに不具合が出てしまった形じゃ。まあ原因がわかれば簡単な部類じゃな」
「そうですね。こういう場合はサービス端子からファームアップすると……」
「そうじゃ。上の4番の装置を取ってくれ。背中からサービス端子にアクセスする」
「はい」
そういって装置を渡すと背中に当てる。そして端末を操作すると。
「よし、接続は完了。ちょっと時間はかかるがファームアップを始めるぞ」

しばらくして端末がファームアップ完了を知らせる。
「よし、完了だな。再起動するぞ」
そういって端末を操作する。
「あ……あ……」
ドロイドが不思議な挙動を見せる。そして目を見開くと
『ナンバー20538、完了』
そう言って部屋の隅にあるカプセルに入る。カプセルが閉まると中で様々な挙動を見せている。
「これ、うちにもあるのと同じ点検システムですか?」
「そうじゃ。ここにあるのはより細かい検査ができるやつじゃな」
しばらくして点検が終わり、ドロイドがキャリアに乗って運ばれる。
『点検完了、修理完了しました。ありがとうございました』
「こちらこそよろしく」

2人が部屋から出ていく。
「せっかくだからドロイドがどんな動きをしてるか見てみないかい?」
「ええ、ちょっと興味はあります」
そう言うとカイが廊下の窓を指し示す。窓からはドロイドが各部屋に運ばれていく様子が見える。
「へえ、こんな感じなんですね」
「そうだな。部屋には客が待っているからな」
見ていると裸のドロイドが機械に通り、服を着せる様子も見える。
「瞬間着替えですね」
「こういうところ独特の装置じゃな。面白いものじゃろ」
「ええ、面白いです」

しばらく見てから2人は外に出る。そして帰りの車の中で。
「どうだったかい?こういうことろも悪くはないだろ」
「ええ、行ってみたくなりましたね。まあ妹がよくそのへんの話はするのですが……」
「お礼にタダ券2枚をもらったから、それで一緒に行ってみないかい?」
「ぜひ、喜んで」

そして業務も終わり、ルークが家に帰ってくる。そして食事も終わり
「まあ今日はそんな現場だったんで……」
今日の話をすると
「おお!ちょうどよかった。次の週末行こうかと思ってたよ。2枚あるなら今度一緒に行こうか。うちのドロイドとやるのとはまた違ったシチュエーションが楽しめるからな」
レイアが嬉しそうに話す
「そうですね、2人でだと一緒に入ります?」
「まあ今回は初めてだから個別に入ろう。ちなみに2人で入るとまた違った世界があるぞ」
「どんな世界があるのかい?」
「もう選びきれないほどたくさんあるよ」
「そうか……楽しみが増えたな」

ーーーそして週末「第一秘宝館」に向かう車の中で
「どうだい、ホームページ上で色々見てたみたいだけど、楽しそうだろう?」
「そうだな、本当にいろんなバリエーションがある。ハマるのも無理はないかな」
「まあ自分は管理する立場から来てるというのもあるけどな」
「それは言い訳だろう?」
「いや、あそこにはたまに仕事で行くこともある。それで余計顔が通ってるんだよ」
「そうなのか。まあそうだと余計なのかな」
「ま、そんなところだな」

そして入口近くで車が止まり、2人が降りる。車は勝手に駐車場に向かう
「新規入会は1番だ。俺は予約してあるから5番から入る。じゃ楽しんでくれよ」
「ええ……楽しんできます」
そうしてお互いに入口から入っていく。

ーーー

しばらくすると2人が出てくる。
「おう、楽しめたかい?」
「ええ、十分楽しみましたよ。こんなところならもっと早く来たかったよ」
「今度は2人で入るシチュエーションに行こうかな。兄さんとやるなんて楽しみだよ」
「そうだな。また楽しみは増えたな」
そんな話をしていると車が着く。そうして2人は車に乗り込み施設をあとにしていった。


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