「ヒトノカタチ」STORY-17:クレプトマニア

---パトカーで現場である大型スーパー「Large-B」に向かうレイアとさくら
「ったく、あそこしょっちゅう万引きにあってるよな、防犯システムダメダメなんじゃないか?」
「まあまあ…でも、今回はちょっと違うみたいですね」
「今回はドロイドの影があるって話だからな。だからうちらに声がかかったわけだし」
「そうですね、まあ相手がわからないと何とも言えませんし」
「そうだな、当然違法改造だろうし、下手に能力改造されてると戦闘部隊の出番になるし」
「そんなことにならないといいですけど、ね」
「ま、そうならないことを祈ろうか」

そして現場に着き、レイアが防犯センターで話を聞く
「まあ、決まってある時期に売上データと実在庫が合わない時がある、と」
「そうなんです、毎週金曜日にいつもそんなことが起きて…」
「防犯カメラに写ってはないのですか?」
「いつもそれらしい影は見えるのですが…これですね」
そう言って画像を確認する
「うーん、一見すると怪しくないように見えるけど…こうなると決まって起きるわけだ」
「そうです…」
さくらも一緒に見ているが…
「…ちょっと、詳しく解析できませんか?」
「ん?何か気が付いたかい?気になることでも?」
「はい…」
「よしわかった、ちょっと彼女を接続してもらっていいですか?」
そう言ってさくらを防犯システムに接続する手順を踏む。そしてしばらくして…
「…これ」
「何か気づいたか?」
「ええ、この前カイさんの店で違法改造されたドロイドが持ち込まれて、違法改造だから受けられないってことがあったって話がありましたよね?」
「それが何か関係あるのかい?」
「その個体、スノさんがデータ取っててそのデータをもらったのですが、それに似てるみたいなんです」
「え?なんだって?」
「カメラの画像から推測すると、一致率はおそらく90%ぐらい…」
「…怪しいな。明日金曜日だけど、いつも何時ぐらいに来るんだい?」
「大体19時ぐらいですね」
「よし、こうなったら直接捕まえるしかないな。やってみよう」

---金曜日、レイアと私服姿のさくらが防犯センターで準備をしている
「へへ、さくらの私服姿なんてなかなか見られないよな」
「なんか恥ずかしいです…普段こんな服装しないですから」

「まあ相手に悟られないようにするのがこういう場合の基本だからな」
「まあそうなんですけど…まさかこんなことに」
「ま、たまにはいいんじゃないかい?」
「ええ…」

そして準備が終わり、防犯カメラの兆候を見ながら待っている。
「そろそろくる時間だけど、なにか怪しい兆候はあるか?」
「…出現パターンからするとおそらくあのへんのはずなんで…ん?」
「どうした?」
「あれ、あの小さな影です!間違いない!」
「よし、気づかれないように見張ってくれ」
「はい!」
さくらが距離を保ちながら人影をそっと追いかけている、そして店を出ようとしたとき…
「あの、ちょっと…」
さくらが声を掛けた瞬間、逃げようとするが…
「ちょっと!待って!」
人影はふらつきながら走るが、あっという間にさくらに追いつかれてしまう。そしてその人物を羽交い締めにする。
「(ドロイドの反応だ、そして個体データも一致する、間違いない…)」
レイアも飛び出してきて、右手に持った警棒をその人物に押し付ける。そうすると人物はぐったりして止まってしまった。
※警棒にはドロイドを強制停止させる電磁波を発する装置があり、押し付けることによって電磁波を発して強制停止させることができる。
「…やっぱりドロイドか、間違いなかったな」
「ええ、前言っていた個体で間違いないようです」
「そうか…違法改造にしては店の防犯システムをごまかして万引きなんて何がそこまでさせるのか…」
「これから調べます?」
「ああ、再起動すると危険そうだからデータだけ抜いて調べるか」
「了解、じゃ個体はパトカーに乗せます」

---数日後、署にてレイアと春香が話しをしている。
「どうでしたか?事件の結果は」
「見てるとこれはいわゆるクレプトマニアっぽいやつなんだよな。盗むのが癖になってしまっているっていうやつ。ここだけじゃなく周辺の万引き事案はこの子がやったことがデータ解析で分かったよ」
「でも、なぜドロイドが…」
「どうやらマスターがそういう気があって、けしかけたようなんだよな、ドロイドに防犯装置をすり抜けるように細工をして…」
「そのマスターはどうなったのですか?」
「持っていたスマホから簡単に身元はバレたよ。母親と一緒に住んでたんだけどすでに死んでいてその遺体を山に埋めた死体遺棄とそして死んだのを届けてなくてその間年金を不正受給、そして今回の件だな」
「そうですか、あとさくらさんから聞きましたけど逃げる際にふらついていたのは…」
「どうもフレームがおかしかったようだよ。引き取ったカイさんの話だと時々あることだそうだな。コドモロイドだったから無理な作業をさせてたりするとこうなることがあるって言ってたよ」
「ちょっと、可哀想ですね…」
「ドロイドもマスターを選べないし、なまじ人の形してる物だから可哀想という感情が先走ってしまうがな…」
「まあそうなりますよね…」

---同日、ドロイドショップ「からくりBOX」にて
「あー、コレはだめだな、廃棄処分だ」
「え…元々いわくつきの物だとは聞きましたけど…なぜなんです?」
「コレを見てくれ」
そう言ってカイ店長がルークに透視装置の画面を見せる。
「…フレームが曲がってる」
「そう、こうなったら直すのも難しいし、手間もかかるからよっぽどレアな個体でもない限り廃棄処分だよ。せいぜい使えるのは制御ユニットぐらいなもんだな、それだけ取り出して処理業者行きだ」
「ちょっと、かわいそうな気もしますけど…」
「まあたまにそういう個体を引き取って自分で直す人もいるが、うちら商売でやってるとそんな情はかけてられんよ」
「まあそうですけど…なんでこんなことになったんです?」
「レイアさんから聞いたが、どうやら親の介護をさせられてたそうだよ。介護なんて下手すると大人型でも適正なプラグインがないとフレームが駄目になることがあるのにコドモロイドだとなおさらだ」
「子供に介護…ですか」
「コドモロイドって中古だと安いせいかよく年寄りが買い求めることも多いんじゃよ。最初は話し相手ぐらいなのが次第に家事や介護とかやらせるようになる。そうするとこんな悲劇が起きるんじゃ。この業界に長くいるとそんな事例は沢山見てるよ」
「そうですか…」
「ところで、この前ドロイド取扱主任者の試験があったと思ったが、どうだったい?」
「ええ、無事合格しました」
「おめでとう。これで取り扱える仕事は増えるからな。早速だがマシュさんところの導入を任せるぞ。ちょっとした大型案件になるが大丈夫かい?」
「光栄です。ありがとうございます」
「まあこれからいろんな事例を見ることになると思うが、頑張ってくれ」
「はい!」


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