「ヒトノカタチ」STORY-7:僕は何者か・・・
---ある初夏のアオキガハラ、行方不明者捜索のためにレイアとさくらを始め人員が集まっている
「まったく、毎回俺が指名されるんだよなあ」
「まあまあ、自分が一番センサー性能が高いですし、そのマスターですからね」
「それはそうと、今回もマッサンが参加してるんだよな」
そう言ってるとセンサーユニットを抱えた正がやってくる
「おはようございます。今回もまたセンサー要員として参加です。さくらさん、お互いに頑張りましょう」
「こちらこそ。まあ毎回仏様が出てくるだけにドロイドでも気が滅入りますけどね」
「じゃ、2人共配置の設定に入ろうか。さくらがAブロックで、正がBブロック。あとは…」
そう言ってレイアが各人のエリア分けを淡々と進める。
「わかりました。捜索始めますか?」
「よし、捜索初め!」
そう言うと各人は持ち場に散らばっていった。
---捜索開始から1時間後
「うーん、今回は案外見つからないもんだな。毎年仏様が出てくるもんだけど」
モニターを見ながらレイアがつぶやいている。しかしその時だった
「さくらです、何か人型の反応が…しかし生体反応ではないようです」
「んー?それは確認したほうがいいな」
「了解しました」
そこから30分後
「見つけました!一応首つってるように見えますが…人間ではないようです。ドロイドのようです」
「ドロイドが首つってる?どういうことだ?」
「ID反応が帰ってこないとこを見ると割ってる可能性が高いです。おそらく首つったまま電池切れになってるようです」
「了解、回収班を向かわせるから準備してくれ」
「了解しました」
---そうして捜索が終了し、各人が集まってくる
「さくらの見つけた方は回収班が回収してこれから解析にかける。それでどこまでわかるか…」
「はい、木の下にはバッグらしいものがおいてあったのですが…それ見るとスケッチブックがたくさん入ってました」
「ほう、だとすると…割ってから何かに目覚めたのかな…まあそこも解析でわかるかな」
そうしていると正が割り込んでくる
「今回仏様と出会わなくてよかったですよ、まあ別のグループは出会ったみたいですが」
「そうだな、今回もご苦労様」
---数日後、署内のドロイド解析室にて
「さて、見る限りだと成長パッケージの成れの果てっぽい感じだけどな…」
「そうですね。割っていた部分は外せましたので起こしますか?」
「そうしてくれ、話を聞いてみる」
そういって解析室のドアを開けて入っていく
成長パッケージ---人間が成長するかのようにドロイドのボディを変えてあたかも成長したように変えていく販売形式。行為そのものは違法ではないが、人間味を追うあまり違法改造の温床になりやすく、また使用済みのボディが不法投棄されるなど問題も多い。
「…はっ!ここは…?」
「おはよう、目覚めはどうかい?」
そういうと解析対象が泣きながら
「…うっ……やっぱり死ぬことはできなかったんだ…自分は作りのもだから…」
「タイミング悪かったな。IC乗車券の履歴だと捜索の前日に入ってる。長時間たってれば朽ちて壊れるということもあり得たが、電池切れだけで済んだのはラッキーだったよ」
「…うっ、あともう少しで完成だったのに…大作描いてたのに壊されて…」
「芸大行きたくて渾身の大作描いてたんだろ?メモリーの解析で分かったし、バッグの中にスケッチブックがたくさんあったけどそれが創作の支えだったんだろう?まあすぐに君がドロイドだってことがバレて大騒ぎになるだけかもしれないけどね」
「…はい」
「もう親は違法改造した罪で書類送検された、と同時にあんたも自由の身になる。ただRSCは元に戻すからドロイドとして生きていくことになるけどね」
「…はい、私はどうなるのですか」
「捜査に必要なデータは取れたから君はドロイドショップに引き渡されることになる。そこからどうなるかは次のマスターが決めることだ」
「…僕は何故生まれたのでしょう…」
「まあ子供の身元引き取りの審査に通らなかったからその代わりにってところかな。よくある話だよ」
「…そうですか」
「君がこれからも存在を許されたのは運が良かったというか、運命だと思ってくれ。通常なら即廃棄もありえたよ」
「…はい」
---ドロイドショップ「からくりBOX」にて
「じゃ、いい次のマスターが見つかるといいね」
「大丈夫じゃよ、このモデルならたとえ全リセしても買い手はつきやすいから」
「そうかい、じゃまた」
レイアが立ち去った後、カイがモニターを見つめながら
「…事前データでも見てたが、これは全リセするには勿体ない経験値データだよな、幸いまだメモリーに余裕はあるからこれを生かしつつなんとかできないか…」
そんな考えをしていると、ふと気づいた
「そうじゃ!そういえばランカ先生が助手として使いたいから良さげなモデルを見繕ってほしいって言ってたな。ちょっと会わせてみるか」
---その数日後、フジ学園の美術室、美術の授業で
「はーい、それじゃ新しい助手ドロイドさんをご紹介します~入って来て~」
美術担当のランカ先生が授業の前にみんなの前で新しい助手さんの自己紹介をする。
「紹介します、正治くんです」
「どうも、正治です」
ざわめきが起こる
「(なんかすごいイケメンじゃない?いい個体見つけたんじゃない?)」
「(確かジュカイで見つかった子とか聞いてるけど、よくこんな個体が出てきたわね)」
「静かに!まあいろいろあってここに来たわけなんだけど、今後ともよろしくね~じゃ、授業を始めます」
---その1ヶ月後、定期チェックのためドロイドショップ「からくりBOX」にて
レイアと正治、そしてランカが一緒に話をしている
「おう、また会ったな。調子はどうだい?」
「ええ、学校での生活は楽しいです」
「いい仕事してますよ。なかなかいい出物で良かったです」
「校内じゃ結構イケメンで優しくしてくれるから案外評判になってるとか?」
「ええ、意外と知ってますね…」
「生徒の中に緑髪の子がいるだろう?その子から色々聞いてるよ」
「あの子とお知り合いでしたか、絵は上手いし何かとムードメーカーだからいい子だなとは思ってました」
「そうよね~美術部での評判もいいし」
「美術部も案外有望な子もいるし、楽しいのでよかったです」
「まあドロイドが人間の芸術に口挟むっていうのもなんかアレだけどな」
「えー、これ私のこと言ってる?」
「まあ、マスターの作風は理解できる人を選びそうですし…」
「そんな事言わないの!」
「まあ、確かに俺も完全には理解できないけど、芸術なんて自己満足な部分もあるからそれは理解してますよ」
「あら、そんなこと言ってくれるんだ〜良かった」
「ま、お互いいい関係でいられてよかったよ。いい掘り出し物だったな」
「そうですね」
3人の談笑が続いていた。
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