スキルアップの前にまずビジネスゲームに参加しよう
仕事って年数を重ねるごとに高い目標を課せられて大変ですよね。本人が望むか否かに関わらず、大抵の人は管理職を目指すことが暗黙の了解になっています。現時点の自分の能力と管理職に求められる能力のギャップを感じた時、事務だけしたいとか個人で完結する仕事がしたいとか考えがちです。でも事務や個人プレイの仕事だって適性が必要ですし管理職と比べて上とか下とか言えるものではなく、あくまで役割の違いです。そもそも所属部門が事務部門だったり役職がエキスパート/IC職でないと異動しない限りこれは実現できません。異動したところで経験がある前提ですからどの道プレッシャーはありますし、決して楽になれる道ではないのです。
では今の部署で昇進するためにスキルアップをしよう、となります。パッと思いつくのは専門分野の勉強をするとか資格を取るとかです。しかし実際チームを組んで仕事をするときに必要なのは個々の知識ではなく、チームを取りまとめたりメンバーのタスクコントロールをするスキルだったりします。磨くスキルを間違えるとその部署で登らないといけない山に登ることができません。今自分はどんな山に登り、何の役割を求められているのかをまずは理解することが大切です。
仕事とはゲームそのものです。仕事のしやすさはゲームのルールを理解しているかどうかでかなり変わってきます。スキルアップの前に自分が所属する組織のルールを把握し、ゲームに参加しましょう。
"能力"があるかではなく"役割"を遂行できているかが昇進の要件
皆さん昇進に必要な要件って何だと思いますか?
所属部門の業務への深い理解
豊富な業務経験
トップレベルの営業成績
上記のようなものが浮かぶかもしれません。しかしながらこのような能力があるからと言って順当に昇進できるかというとそうではありません。例に挙げた事柄がすべて当てはまる人は「優秀な人」ではありますが、「昇進できる人」ではないのです。優秀な人が昇進しやすい傾向にあるのは確かですが、昇進する人が必ず優秀な人とは限りません。会社には役職がツリー上に用意されており、各々の役職で満たすべき要件が定められています。昇進とはあくまで現状の役職で定められた要件を十分に満たしており、一つ上の役職についても問題なく役割を遂行できると判断されたときに認められるものです。
つまり昇進を目指して部門の中でトップの評価を得ようと努力することは少し焦点のずれた対策だと言えます。もちろん良い評価を取れればボーナスは増えるでしょうし自然と評価の良い人は昇進候補になりやすいのは事実です。ただそれはやや近視眼的な発想です。もしあなたが今マネージャーの一つ手前のポジションであれば、考えるべきはマネージャーが満たすべき要件です。部署の複数あるレポートラインのうち一つを取りまとめるのがマネージャーというポジションだと仮定します。その場合あなたの個人の成績が良くてもそれだけではマネージャーの要件を満たせていません。マネージャーはレポートラインの仕事を管理し、配下のメンバーが動きやすいよう利害関係者との調整を行う人です。昇進したければ調整の場に顔を出し会議で発言する、新人メンバーが仕事をしやすいようタスクをかみ砕いて指示する、などを実行し評価者へアピールする方が効果的でしょう。評価者も人間なのですから「この人に任せて大丈夫」という確証が欲しいのです。役割を意識してアピールできている人の方がゲームを理解していると判断されやすいと言えます。
レポートラインを意識せよ
先ほどレポートラインという言葉を使いましたが、会社は基本的にピラミッド状に意思決定や報告を行う構造になっています。社長の配下に複数の役員がいて、役員がそれぞれ部門を持ち責任を負っています。それぞれの部門の下には複数の部や課があり、そこにも部長/課長という責任者がいます。その下にも業務ごとに複数のチームがありそれぞれ管理する人がいます。組織構造や役職の名称は会社ごとに様々ですが、各々の取りまとめに対し複数のレポートラインが存在するという構造は不変です。
自分はどこのレポートラインに所属しているかを意識し、その責任者である上司に対し適切なふるまいを心がけましょう。そんなの当たり前じゃん、と思う方もいるかもしれませんがこれは単なるマナーの問題ではありません。適切なふるまいというのは上司に逆らわないという意味ではなく、決裁権限を見誤るなという意味です。大なり小なり組織は常に何らかの意思決定を行っています。その際決定権を持つ責任者が必ずいます。その人を通さずに勝手に決裁を行ってしまうのは重大なルール違反です。
よくおじさんビジネス用語で「仁義を切る」という言い方があります。加齢臭漂う言葉で抵抗がある方もいるかもしれませんがこの言葉の意味することは重要です。会社は個人の勝手な判断を良しとしません。レポートラインには忠実に報連相をするよう心がけましょう。あくまでそういうルールなのです。逆にそこを守ればゲームから追放されることはないのです。腑に落ちないとしてもゲームのルールだと考え割り切りましょう。
楽したいなら昇進しよう
ここまで読んで「なんだかビジネスって縛りが多くて面倒だな」「やっぱり平社員のままでいいや」と思われた方がいるかもしれません。気持ちはわかります。ただ、決定権のない社員で居続けることは同時にいつまでも他人に生殺与奪の権を取られたままだとも言えます。おどろおどろしい表現かもしれませんが、例えば上司が無茶な仕事の振り方をしてきても拒否できないということでもあるのです。それに年齢を重ねると自然とエントリーレベルの仕事の選択肢は少なくなります。同じ能力なら若くて将来昇進してくれそうな人を採用したいというのが世間の本音です。結局前に進むのが最善の策になります。
管理職って大変な面ばかりクローズアップされがちですが裁量を得るということは一定の自由を得るということです。それに配下のメンバーに働いてもらえば自分一人よりも大きな成果を得ることが可能になります。むしろメンバーでいるときよりも楽になる場面は多いのです。ルールに慣れるまでは大変かもしれませんがゲームと割り切って楽しむくらいの気持ちでいきましょう。
皆様が当記事を読んで翌営業日からの仕事に何らかの気づきを得ていただけたのなら幸いです。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?