門間紅雨

29歳。いつか自分の書いた小説を本にして出版するのが夢です。

門間紅雨

29歳。いつか自分の書いた小説を本にして出版するのが夢です。

最近の記事

先生の宿題

 催花雨、という言葉を教えてくれたのは先生でした。 「春に花が咲くのを促すように降る雨のことを催花雨というのです。でも一体何を根拠にそんなことがいえるのでしょう」  随分と雑な問題だと思いました。たとえ出題したのが今際の際だったとしてもです。 「晴美さん、宿題ですよ」  先生は随分久しぶりにそんな言い方をしました。  学生時代、私は面白みのない生徒でした。器量も良くなく、賢くもなく、運動もできず、引っ込み思案の、ただ先生のことが大好きな一人の生徒でした。  先生の

    • ロングホープ・フィリア

      菅田将暉さんの『ロングホープ・フィリア』という曲が好きで、とにかく落ち込んだ時によく聴きます。 ひしゃげた心に生命力が戻り、再び立ち上がる勇気が湧き上がってくるような歌です。 夢に向かって必死に藻掻く人の背中を押すような歌で、そんな人におすすめしたい一曲です。 曲の中に「願わなきゃ傷つかなかった 望まなきゃ失望もしなかった」という歌詞があるのですが、ここを聴くと私はいつも、ついじんわり涙が滲んでしまいます。電車の中とかでも。 最近は、よく小説を書いています。 子供の頃か

      • リグレット・ビール

        三年ぶりに会う桐島はなんだか横に大きくなったように見えた。 注文を済ませて待っていると、しばらくして透き通る金色の液体の上にこんもりと密度の高い泡が山のように盛り上がったビールグラスが登場した。 思わず、うわあと歓声を上げてしまう。 居酒屋の重いジョッキのビールも、家の冷蔵庫でキンキンに冷やした缶ビールも捨てがたいけど、やっぱりこの店のグラスビールは別格だ。 対面の席に座る桐島も、こんもりと泡の盛り上がったグラスを見て、まるで子供のように目を輝かせている。 そういうと

      先生の宿題