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100日後にデビューするYouTuberを見つけたので盗撮してみた #19

「あいつ完全に仕事サボってますね」

『キコーナ』に入っていったたつやを見て丸山は呟いた。『大阪王将』の隣にある大きなパチンコ屋だ。

食事中に話しかけられるのは気が悪いだろうと、私たちはいったんお店を出ることにした。
駐車場に停めた車の中で、たつやが店から出てくるまで、どういう風に接触するかを話し合った。
間もなくして、たつやは出てきた。私たちも車を出た。
追いつく間もなかった。たつやは一直線にパチンコ屋へ入店した。

「どうします? とりあえず入ります?」
「うん」

自動ドアが開いた瞬間、ジャンジャンバリバリと無数に重なり合った甲高い音が鼓膜を震わす。入り口から手前はパチンココーナーだった。派手な筐体がずらりと並び、多くの人々が猫背になり、目を光らせながら右往左往と行き交っている。
中央通路を歩くたつやの背中を私たちは追った。店員とすれ違ったとき満面の笑みで「いらっしゃいやせー!どうぞ!」と言われ、どうぞってなんやねんと思う。

広々とした店内の奥はガラリと雰囲気が変わった。照明は暗く、遊戯台も直線状だけではなく曲線状や円状に並んでいたりする。パチスロコーナーだ。たつやはそこへ向かった。

台を選ぶ雰囲気は無く、たつやは迷いなく進む。ある一角にやたらとコインを獲得している台があった。遊戯台の上の棚に2箱、席の後ろに別積みで2箱、カチカチにコインを盛った箱が置いてある。
ええなあ、と眺めていたらその席へたつやが座って打ち始めた。
私は丸山と目を合わせ、とりあえず喫煙スペースへ向かった。

「あいつめっちゃ出してるやんけ」

まずはそこに驚き、私たちは笑う。

「5000枚はあったっすよ」
「仕事サボって正解やな」

投資額は分からないが、5000枚は換金したら約10万円分の枚数だ。

「職場にチクリましょうよ」
「ほんまやな」
「どうします? 僕らも打ちます?」

丸山は冗談のつもりで言ったようだが、私は否定しなかった。
ただし、打つのは丸山だけだ。

「あいつディスクアップ打ってたやろ?」

パチンコもスロットも台によってスペックが違う。コンテンツやそのスペックによって、客は今日打つ台を決めるのだ。
たつやの打つ『ディスクアップ』という台には一つ大きな特徴があった。

「とりあえず丸山君は、たつやの隣で打って」
「えー、出る気しないっすね」

当たっている横の台は当たらなさそう、という心理はパチンコユーザーのあるあるだ。
が、今はそんなことどうでもいい。

「とにかく2回ビッグ引くまで頑張ってや。で、1回目はわざと目押しミスってみて。全部」

スロットには基本的にレギュラーボーナスとビッグボーナスの2種類がある。どちらも当たりだが獲得枚数に差があり、ビッグボーナスの方が多い。

『ディスクアップ』の特徴はこのビッグボーナス中の打ち方にあった。
何度かに一回、レバーを引いた瞬間ドラムを叩くような効果音が鳴り、台から「フォウッ」と音声が発生するときがある。
このとき、真ん中リールの青い『7』をある位置に正確に止めると、コインを増やすのに有利な状況になる。
いわゆる「目押し」が必要で、それができるか否かで最終的な結果に差が出るという仕組みだ。

丸山のスロット歴は長く、この「目押し」の技術も見事だった。その男に私は、わざと目押しを失敗しろと指示した。

「なるほどっすね」

丸山は私の意図を察したようだ。

「今日撮影あるはずやからそれまでにはやめるやろ。あと3時間あるし。やめへんかったら撮影ドタキャンするってことやからササノにチクったんねん」

軽口を叩き、私はその場をあとにした。私の思うような展開にならなくても、おそらく丸山はたつやとの接触に成功するだろう。
たつやがパチスロ好きだったとはツイている。丸山に缶コーヒーを奢り、私はその場を後にした。

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