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これは支援じゃない。むしろアフリカからもらっている

むしろ、(アフリカの)彼らからもらっている方が多いです

アフリカ支援をしている銅冶勇人の言葉だ。

会社の後輩でもある彼のエピソードは、このnoteでも少しだけ紹介したことがる。

今は、独立して、CLOUDYというアパレルブランドを立ち上げている。そして、その収益の一部をアフリカの学校支援に使っている。

ガーナの子供達

この話だけ聞くと、レインボーのSDGsバッジをつけて、「社会貢献をやっている感」を出している数多の企業と変わりない。
彼が違うのは、アフリカの課題を自分ごととして「引き受けて考えている」のだ。ただ、寄付や支援をするのではなく、アフリカの人々の自立を目標にしている。アフリカの人たちと一緒に未来を見ている。

アフリカの産業を育てるためにも自社製品の大部分はアフリカで製造している。さらに、学校支援についても、最終的には支援なしでも公立の学校として運営できる道筋を考えている。

「任せて文句をたれる」ではなく「引き受けて考える」

宮台真司

僕の尊敬する社会学者の宮台真司さんがよくおっしゃっている言葉だ。

この言葉だけでなく、他の宮台さんの言葉を聞くにつけても、宮台さんの説く理想を実践しているのが、銅冶勇人という男なのだ。

いつか宮台さんに彼を紹介したいと思っていた。

そして、今回、「経世済民オイコノミア」で銅冶さんをゲストに迎えるにあたって、宮台さんも一緒にお呼びした。

もちろん、それだけではない。アフリカビジネスの話を聞きながら、国の富とは何か、豊かさとは何か、働くとは何か、何のために学ぶのか、そういったことを根本から考えるためにも宮台さんのお話を伺いたかったのだ。

オイコノミアの放送で、どんな話をしたのか、概要を紹介したい。

まず、銅冶さんが活動しているガーナという国。

ガーナの概要

2005年以降はGDPが右肩上がりに上昇していて、失われた20年が30年に延長した日本とはえらい違いだ。

ところが、銅冶さんに言わせると、生活が豊かになっているのはごく一部の人たち。
平均値で見ると賃金とともに物価も上がっているのだが、多くの人にとっては収入は上がらず、物価高だけをくらって、生活は厳しくなっているという。

この写真は、ゴミ捨て場ではなくて川だという

地域によっては、外国から引き取ったゴミであふれていて、その周辺で暮らす人々の平均寿命は30代だったりする。
善意として世界各国から送られてくる衣類は、繊維産業の発展を奪い、さらにこのゴミの山の一部となっている。

アフリカの貧困の連鎖 出所:銅冶勇人

こうした惨状を目にした銅冶さんは、上の図のような負の連鎖がガーナに存在していると考え、
「技術や能力が身につかない」
「学校に行けない」
という問題を解決しようとしている。

前者については、アフリカの伝統的な柄をつかった衣類やバッグなどの製造を行なっている。
決められた時間仕事するという働き方に慣れていない彼らを育てるには、さまざまな苦労もあるようだ。一方で、歌い踊りながら楽しそうに働く彼女たちの様子を見ると、効率を追求することが当たり前になっている考え方が正しいのかとも思ってしまう。

歌い踊りながら工場で働くガーナの女性たち

学校を建設して、教育環境を整えることにもさまざまな問題があるようだ。学校教育を受けた経験のない両親にとっては、学校で勉強することが異常な行動に映るし、家の手伝いを優先して欲しいと考えるのも無理はない。

彼は嬉しそうにこんな話もしていた。

最近こどもたちにもどんどん知恵が出てきてるんです。
一回、給食を配る列に並んで食べ終わっているのに
綺麗にお皿を洗って、また並んでいる奴がいるんです。
いい意味で成長しています。

銅冶 勇人
資料提供:銅冶 勇人
資料提供:銅冶 勇人

時間通り働かなくて当たり前、教育を受けなくて当たり前のガーナ。
彼らは葛藤しながらも、働くことや学ぶことの意味を考えている。
日本にも過去そういう時期があったと思うが、今となっては何も考えずに学校教育を受け、会社で働いていないだろうか。
この番組を機会に、視聴者のみなさんに考えてもらいたいと思った。

さて、番組の後半では、古巣のゴールドマンサックスで僕が銅冶さんと一緒に働いていたときの話になった。

外資系金融みたいな会社だと個の能力が試される。
英語はできて当然だし、難しい金融商品を扱うための知識や、会計の知識、マーケティング能力だって必要だ。

と、普通は考えがちだ。実際、僕もそう思っていたし、そういう努力をしてきた。

収録後の銅冶勇人さん(左)と筆者(中央)と宮台真司さん(右)

ところが、銅冶勇人はそういう努力はしない男だ。不得意なことは周りを頼りながら高いパフォーマンスを上げていた。

ここでも彼は、宮台さんの掲げる理想を実践していたのだ。

英語ができないなら、英語ができる友達がいればいいんです。

宮台真司

そして、ここからが肝なのだが、チームで活動することのメリットは、力を受け渡すことにもあると宮台さんはおっしゃる。「君がいると力がもらえるよね」という存在。
まさに、銅冶勇人はチームにエネルギーを与えてくれる存在だった。

在職中、年に一回長期休暇をとることができた彼は毎回アフリカ支援に行っていた。

しかし、それは彼にとってはエネルギーを補充しに行っていたのだという。

宮台さんから教えてもらったのだが、定住生活を営むようになってから、我々は”祝祭”によって、外部の人からエネルギーをもらっていたという。

アフリカに行くことは、彼にとっての祝祭だった。

彼は、自分が支援をしてあげているとは感じていないようだ。

むしろ、(アフリカの)彼らからもらっている方が多いです

銅冶勇人

これは本心だろう。

そして、最後に宮台さんが解説をしてくれた。

交換は絆を壊す方向に動くが、贈与と反対贈与のメカニズムはむしろ、絆を作る方向に動くんです

宮台真司

銅冶勇人とアフリカは完全に絆で結びついている。

番組の最後では、銅冶さんにエネルギーを与えている現地の動画をいくつか紹介した。

経世済民オイコノミアを配信しているビデオニュースドットコムは、月に8本ほどのニュース動画が配信される550円/月の有料コンテンツですが、今回の動画一本だけでも、その価値はあると思っています。

是非、多くの方にこの動画を見て、エネルギーを受け取ってもらいたいと思います。

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読んでいただいてありがとうございます。
田内学が、毎週金曜日に一週間を振り返りつつ、noteを書いてます。新規投稿はツイッターでお知らせします。フォローはこちらから。


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