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YOASOBIが示す日本経済復活への挑戦

ビルボード1位に輝いた日本語楽曲

YOASOBIの楽曲「アイドル」が米ビルボードグローバルチャートで首位になったとヤフーニュースで知った。
どうやら、テレビアニメ「推しの子」の主題歌らしい。なんだその曲は?と思って聴いてみたら、聴き覚えのある曲だった。
そして、ついでに原作のマンガも読んでみたら、第一話から意外な話な展開で、、、
書くと長くなるので、泣く泣く割愛する。

この首位獲得は、ビルボードグローバルチャートのGlobal Excl. U.S.部門での快挙だ。
このランキングは、世界200以上の地域からのダウンロードとストリーミング・データを集計したもので、アメリカを除く地域のデータで構成される。
2020年9月から集計が始まって以降、日本語の楽曲が首位を獲得したのはこれが初めてだ。

ただし、アメリカを含むGlobalチャートでは6位に落ちてしまう。
これはアメリカ本土の影響力の大きさを物語っている。
アメリカは世界最大のGDPを誇り、全世界のGDPの4分の1を占める。つまり、アメリカの市場を制することは世界を制することと同義だ。

さて、ここで一つ疑問が浮かぶ。
日本のGDPは中国に次ぐ世界第3位で、全体の5%を占めている。
それなのに、どうして日本はこれまでアメリカを除いたチャートで首位になれなかったのだろう?
これは、逆に日本の経済規模の大きさが足かせになっていたからだと思われる。

ガラパゴス化できなかったBTS

現在、この記事をiPhoneで書いている。しかし、20年前、僕が新社会人だったころ、日本で海外製の携帯電話を使う人は稀だった。
SONYやNEC、パナソニックなどの日本製の携帯電話が主流で、これらの機種は「ガラパゴス化」が進んでいると言われていた。

ガラパゴス化とは、日本のビジネス用語のひとつで、孤立した環境で製品やサービスの最適化が著しく進行すると、外部の製品との互換性を失い孤立して取り残されるだけでなく、適応性と生存能力の高い製品や技術が外部から導入されると、最終的に淘汰される危険に陥るという、進化論におけるガラパゴス諸島の生態系になぞらえた警句である。

wikipediaより

当時の日本には、世界標準とは異なる日本独自の規格が存在しており、グローバル企業が参入しにくい状況があった。
しかし、国内市場が十分に大きかったため、日本製の携帯電話が海外で使用できなくても問題にならなかった。
日本企業は、日本の消費者のニーズを満たすことに焦点を当てていた。

大規模な国内市場を持つ国は、国内市場だけを考慮すればよいが、その他の国は国際市場を考慮しなければならない。
以下のデータは、主要国の貿易依存度(GDPに対する貿易額の割合)を示している。

  • ドイツ 71%

  • 韓国 68%

  • イタリア 53%

  • カナダ 50%

  • ロシア 45%

  • フランス 44%

  • イギリス 34%

  • 日本 30%

  • 米国 20%  (出典:UNCTADによる統計)

国内市場の大きなアメリカや日本の貿易依存度は低いが、国内市場が小さい国の貿易依存度は高い。

これは、そんなに難しい話ではない。
長崎出身の福山雅治が長崎弁の歌を作らない理由と同じだ。
より多くの日本中の視聴者にアピールするために、彼は、標準語の楽曲を作っている。
それと同様に、BTSは韓国語だけでなく、英語の楽曲も作成した。
国内市場の規模が小さい韓国のような国は、利益を上げるためには初めから広い市場を視野に入れる必要があるのだ。

BTSだけでなく、他の産業においても韓国は世界市場を見据えた商品開発を行ってきた。
その結果、過去30年間で韓国の輸出額は約10倍に増加した。
一方で、日本の輸出は3倍程度の増加に留まった。

しかし、これは輸出が増えなかったというだけではない。
日本が「ガラパゴス化」した製品を作り続ける間に、広大な市場を見据える外国メーカーは、大規模な資金を研究開発に投入し、次々と優れた製品を生み出すことができた。
そして、その結果、Appleは非常に使いやすいiPhoneを開発し、一気に日本企業を追い越したのだ。

YOASOBIが壊した英語の壁:僕たちの挑戦

日本の経済規模が大きいというのは、国内だけでもある程度自立できるという面もあるのだが、閉鎖的な環境を生み出すという弊害もある。

例えば、最近ようやく注目が集まり始めたジャニーズの問題もその一例だろう。
閉じられた社会である日本では、権力が一部の人たちに集中しやすい。
国内メディアだけに頼らざるを得ない状況で、タレントたちがその力に抵抗するのは難しい。
本来なら不正や不道徳な行為を暴くはずの報道も、権力の前に屈してしまう。

もし、日本の市場規模がもっと小さくて、ジャニーズが世界市場を相手にしなければならない状況だったら、一部の権力者が横暴な行為を続けることは難しくなっただろう。
もっと早くにBBCなどが問題を発見していたかもしれない。

これからの日本市場は人口減によってどんどん小さくなっていく。
その結果、ますます世界市場を見据える必要が増えていくだろう。
それにはやはり英語力が必要だ。
これまで6位が最高だったYOASOBIが1位に輝いたのも、彼らが英語版の曲をリリースしたからだ。
英語圏に向けての発信が始まったことで、もともとの日本語の楽曲にも注目が集まった。

英語が話せれば、市場は10倍になる。
YOASOBIのように我々も世界市場を見据えて物事を考えるべきだし、英語が話せるようになるべきだ。
これは僕がわざわざ言わなくても、誰もが感じていることだけど、日本にはまだ英語を話せる人が少ない。

これもまた、日本の市場規模が大きいからだ。日本で生活していれば、英語を必要としないからだ。
アメリカの映画を観たい、スティーヴンキングの小説を読みたいと思う時でも、ふつうは英語を理解する必要がある。
ところが、なまじっか日本の市場規模が大きいために、ほとんどのものは日本語に翻訳されている。それにより、英語を学ぼうとする機会が奪われるのだ。

英語ができれば、10倍の市場にアクセスできるとわかりながらも、面倒くさいと思ってずっと日本語にしがみついてしまう。
残念ながら、それが日本人なのかもしれない。
これだけ英語が大事だといいながら、この記事を日本語で書き続けている僕のように、、、、

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読んでいただいてありがとうございます。
田内学が、毎週金曜日に一週間を振り返りつつ、noteを書いてます。新規投稿はツイッターでお知らせします。フォローはこちらから。


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