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お金のむこうに人がいる-マンガ家投資編-


僕はマンガ家に投資している。

今、眉がピクリと動いた人もいるかもしれない。

「けしからん!」
「頑張っているマンガ家を食い物にして、儲けようとしているのか!」

いやいや、ちょっと待ってほしい。まずは落ち着いて聞いて欲しい。
ここに、半年に一回開催される「株主総会」に提出された報告書がある。

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これは、マンガ家のわくまる(惑丸徳俊)さんが書いた活動報告書だ。

○そもそも、投資は未来のためにある。

詳しくは、自著「お金のむこうに人がいる」に書いているのだが、本来、投資の目的は、お金儲けじゃない。お金儲けは結果だ。

そもそも、投資というのは、未来のために労力を使うことだ。

だからこそ、勉強は自分への投資と呼ぶし、図書館や道路を作ることを公共投資と呼んでいる。
民間の投資の目的も、未来の生活を豊かにすることだ。
たとえば、介護ロボットを作る研究をする(この行動自体も投資と言える)。
だけど、その研究をしていても、すぐにはお金を稼げない。
かといって、バイトしてお金を稼ぎながら、研究を続けるのは効率が悪すぎる。

じゃあどうするか?

会社を作って、その考えに賛同してくれる人(投資家)にお金を入れてもらう。
そのお金から給料をもらって、研究開発に専念する。
介護ロボットが完成した未来は、みんなの労力が減って、他のことに時間を使うことができる。
洗濯機や掃除機ができて、家事が楽になったのと同じだ。

つまり、投資に回るお金が、未来の生活を豊かにする。

投資と聞いて、株の売買を連想すると社会に役立っている気はしないが、本当の投資は、未来の社会をよくするための活動だ。
この未来の社会をよくする投資と、お金を儲ける投資は離れた世界の出来事ではなく、地続きになっている。
将来、介護ロボットによって生活が便利になって、そのロボットにお金を払う人が増えれば、投資していた人たちも儲けることができる。

○佐渡島さんの「マンガ家支援ファンド」構想

マンガ家への投資は、株式会社コルクでマンガ家の育成をしている佐渡島庸平さんとの会話から始まった(佐渡島さんとの出会いはこちら)。

「コルクでマンガ家を育成しているんですけど、彼らの多くは、生活するために会社で働いていたりアルバイトしていたりします。
あと一歩で、一人前になれそうな人たちには、毎月固定給を払って、マンガに集中してもらいたいんですよね。
マンガ家支援ファンドみたいなもの作れないですかね?

5年間、固定給をマンガ家たちに支払ってもらえれば、将来、コルクでマンガを出すことになったら収入の一部を支払いたいと言うことだった。

証券会社で働いていた僕の視点から見ると、この投資にはいくつか問題があった。
通常、投資をする場合、投資を決めた時点でお金を支払う。
しかし、この投資だと毎月決まった額を支払わないといけない。
投資家の気が変わったり、払えなくなったりすると、マンガ家は元のアルバイト生活に戻ってしまう。やるからには5年間確実に支払いたい。
5年分まとめて投資家に払ってもらうという方法もあるが、これには、別の問題が発生する。
使わないお金を長い間眠らせておくから、投資効率が悪いのだ。
また、マンガ家の投資だけだとリスクが高くて、お金が集まりにくいという問題もある。
そこで考えたのが、安定的な投資と組み合わせることだった。

はじめに、まとまった額の投資資金を集めて、安定的な配当を生み出す会社に投資する。
その会社が生み出す配当全てを、コルク所属の漫画家2人の給料に当てる。
5年間給料を支払う一方で、10年間コルクが得た収益の一部をもらうという内容にした。(マンガ家たちがコルクを辞めてしまうともちろん収益は入らない。この投資はお互いの信頼のもとに成り立つ)

この内容で、2人のマンガ家を支援することにした。

○マンガ家に投資する人は集まるのか?

配当部分だけで2人に給料を支払わないといけないから、かなりの額を集めないといけない。
目標額に達するかどうか不安だった。

ところが、外資系証券で働く知人たちに声をかけたところ、たったの2日で目標額が集まったのだ。
通常の投資の話をする場合、いつも利回りを気にしている彼らが、この投資については全く利回りを気にしなかった。
誰の役に立っているのかよくわからない利回りの高い投資よりも、よっぽど魅力的に映ったらしい。
この投資のゴールは、彼らが一人前になって、将来描いたマンガで人々を感動させることだ。その漫画にお金が支払われ、金銭的に儲けることができる。仮に儲けることがなかったとしても、2人のマンガを挑戦させてあげることはできる。
誰かのためになることがはっきりと分かる投資なのだ。

この投資によって支援することになったコルク所属のマンガ家の一人が先ほどの活動報告書を書いたわくまるさんだ。もう一人がホリプー(高堀健太)さんだ。
ホリプーさんの書いたマンガを見させてもらって、僕は驚いた。
あの時のマンガだ!

半年ほど前だっただろうか。noteで掲載している彼のマンガを見たことがあった。
そのマンガに惹かれて、初めてnoteでサポートをした。お金を払ったのだ。このマンガ家がいつかデビューして欲しいという思いを込めて。
そのときのマンガ家を支援することになったのだ。なんという偶然だろうか。
人は繋がるべくして繋がるのかもしれない

僕の顔画像は、まさに応援したいと思っていた彼に描いてもらっている。

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○マンガ家に投資した結果は?

そして、この投資を初めてすぐに、一つの結果が出た。

何もマンガが売れることだけが結果ではない。

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彼がマンガに専念できるようになったことで、ある珈琲店の経営危機を救ったのだ。
ネットニュースでも話題になった。
https://www.buzzfeed.com/jp/reonahisamatsu/janaicoffee

こんなこともあった。マンガ家2人とも“うつ”になってしまった。
そのときの半期の活動報告がこちらだ。

○わくまるさんの活動報告

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○ホリプーさんの活動報告

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○「マンガ家投資ファンド株主総会」の雰囲気

「株主総会」というか、活動報告会は、コルクの役員の長谷川さんと漫画家さん2人、そして投資をしている人全てで行われる。
お金儲けが目的の投資なら、

「利回りがどうしてこんなに低いんだ。どうにかしろ」
「従業員を切って、利益を増やせ」

という話が飛び交うだろう。お金ばかりを注目してしまう。
ところが、投資先の”人”が見えているこの株主総会は全く雰囲気が違う。

「実は、僕もうつになったことあるから、わくまるさんやホリプーさんの大変さ分かるよ。僕のときはこうやって乗り越えたよ」
「わくまるさんがうつから抜け出すときの、カーテンから差し込む光の描写、すごく伝わってくる!」


と言った感じだ。

投資家の誰もが、純粋に彼らが将来活躍していることを祈っている。彼らの活躍によって多くの人々が幸せになる。その結果として儲かればいいのだ。これが本当の投資なのではないだろうか。

○マンガの力は無限大

マンガの力は偉大だ。僕が書いた本もいつかはマンガ化して欲しいと思っている。とっつきにくい経済の話もマンガにすることでわかりやすく伝えることができる。
このnoteで公開されているが、コルクでは高井浩章さん著「お金の教室」をマンガ化している。ピケティの話だってマンガで伝わる。https://note.com/hirotakai/n/n818acbe95bcf

今、ホリプーさんとわくまるさんは、二つの漫画制作に関わっている。

REACH—無限の起業家— https://newspicks.com/news/6106009/body/「Googleに企業を売却した初めてに日本人」の話だ。

お化けと風鈴 https://manga.line.me/book/viewer?id=Z0084744
「僕の不倫相手は死んだ女性だった、、、」というコピーだけでゾクゾクする内容だ。

マンガ家に限らず、クリエーターが夢を叶えるには、どんなに才能があっても、生活のためにお金を稼ぐことから始めないといけないことが多い。本当にやりたいことを始めるまでに時間がかかってしまう。
こうした投資が広がって、投資家とクリエーターがともに同じ夢を見ることができるなら、もっと生き生きとした社会になるのではないだろうか、と僕は思うのだ。


今回、ホリプーさんは僕の本の出版祝いに、こんなイラストを描いてくれた。

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数年前、自分の本を出す夢を持っていた僕が、noteを見ていた。マンガ家になる夢を持っていたホリプーさんの漫画にいいねを押した。
そして今、僕の著書「お金のむこうに人がいる」の出版を祝って、マンガ家ホリプーが僕の絵を描いてくれている。

こういう出会いがあるから、生きていることが面白くなるのだ。


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著書「お金のむこうに人がいる」では、経済の本質を問う14問の3択クイズを出しています。お金の奴隷になっている大人ほど正答率が低いようです





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