ヤナ・ワインスタイン他『認知心理学者が教える最適の学習法』

認知心理学の観点から見た効率のいい学習方法についての具体的な提言。
いくつか、興味を惹かれたトピックを引いておく。

まず、教科書、参考書の再読、再々読は、流暢に読めるようになるだけで、そこに書かれている内容を応用的な知識として身につけるための学習効果はほとんどない。
流暢に読めるようになることで、そこに書かれていることをより理解できた気になるが、これはバイアスである。じっさいにテストしてみれば分かる。一度だけ読んだ場合と、二度、三度と読んだ場合とで、結果にほとんど差は出ない。
それではどうすればいいか。一度理解したことを定着させるには、それを「別の文脈で想起する」とよい。具体的には「練習問題に答える」「在るトピックについて知っていることをすべて書き出す」とよい。

人の注意力は、分散できない。つまり「マルチタスク」「ながら学習」は集中力を阻害する。一点に集中して注意力を発揮しないと確実に学習効率は落ちる。
「マルチタスク」が通用するのは、例えば「音楽を聴きながら車を運転する」というような、一方の作業についてもはや意識する必要がないような場合に限られる。注意力を要求される学習という場面では通用しない。

気が逸れるー気持ちが想像の世界に漂い出す「マインドワンダリング」は、現在やっている課題が「易しすぎる」か「難しすぎる」とき起こりやすくなる。
頻繁にマインドワンダリングが起こるようなら、それは課題の難易度が適切ではない指標になる。課題の難易度を見直した方がよい。

さて、著者たちは以下の6つの学習法によって学習の効率を高めることができるという。

  1. 分散学習

  2. インターリープ(交互配置)

  3. 精緻化

  4. 具体化

  5. デュアルコーディング(二重符号化)

  6. 検索練習

まず学習を計画するときは、「分散学習」「インターリープ(交互配置)」を心がけるとよい。
学習に同じ時間をかけた場合、詰込み型の学習は効率が悪い。一日一時間やるより、二日で三〇分ずつやった方が、記憶の定着は強くなる。それは、一度学習した内容を、時間を空けて想起するという手続きで、記憶が強化されることによる。
インターリープ(交互配置)とは、例えば数学なら代数と幾何学をそれぞれ集中して学習する「ブロック学習」よりも、代数の問題をやって、次に幾何学の問題という具合に、交互に取り組んだ方が、全体の理解がスムースになるということだ。インターリープによって、なぜ学習効率が上がるのか、その具体的なメカニズムはまだあまり解明されていない。

次に理解を深めるためには「精緻化」「具体化」「デュアルコーディング(二重符号化)」の学習法が有効だ。
精緻化とは、「記憶していることに何か情報を加える」ということを意味する。そのことによって、思考の整理、接続、統合が促される。具体的には、自分が理解していると思っていることを説明する「自己説明法」がある。じっさいに説明してみると、自分でも論理が通らないところがあることが自覚されて、その点についてより深堀して考え、調べることを通して、知識がより精緻になる。
具体化とは、抽象的な考え方や概念に具体例を考えることだ。具体例はまったく異なる文脈のものを複数考えることを習慣づけるといい。
デュアルコーディング(二重符号化)とは、例えば図やグラフなどを言葉の説明に変換したり、逆に言葉で説明されていることを図やグラフに変換したりすることを指す。

最後に、記憶を強化するには、「検索学習」が適している。
検索学習とは、過去に学んだことを記憶の中から引き出して、それを今また考えることを指す。具体的には、テスト問題に取り組むことが最も効果が高い。

記憶の中にある情報を思い出すとき、私たちはじつはその都度記憶を変化させている。そのことが、記憶の持続性と将来の使用に対する柔軟性を高める効果をもつ。
記憶は様々な文脈でー様々な「テスト問題」を通してー想起するほど、その柔軟性が高まり、使い勝手がよくなるのと同時に、より長く定着する。

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