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『海のはじまり』最終話。いつか届く手紙


今年の夏の月9『海のはじまり』終わりましたね。はじまる前からずーっと楽しみにしていたのです。終わってしまって寂しい。

キラキラ輝く恋のパワーに満ち溢れた夏ドラマも素敵だけれど、このドラマはそうではなかった。丁寧に、静かに、ただ生きていくことを、だれもが生きていたことを、伝え続けてくれるドラマだった。最終話を観終えた勢いで、感想のようなものを書きます。「いつ恋」の話もしたくなっちゃって、長くなりました……


賛否両論、いろんな人がいた


このドラマにはいろんな人がいた。

主人公、恋人、家族、大学時代の元恋人、その娘。元恋人の大切な人と職場の人。元恋人の家族。娘の担任の先生。会社の先輩。写真屋さん。美容師さん。

いろんな人がいた。全員の名前は分からなくとも、主人公たちと目を合わせて会話をしていた、たくさんの人がいた。

よく分からない感情もたくさんあった。お母さん、娘を失って悲しいのは分かるけど、それを全面に出して娘を支えてくれていた人にあんな拒絶をするのはどうかと思ったし、新たな暮らしに向かっている海ちゃんに寂しい寂しいと言って泣いたりするのもどうかと思った。

そもそも水季は、夏くんに選択肢を渡すために黙って産んだのに、亡くなったあとに全部丸投げ状態ってどうなのよ……とも思った。葛藤はあったと思うけど、あれじゃ夏くんとの交渉的な部分を母に丸投げじゃないの? と、どうしても感じてしまった。

ひとつのドラマで、こんなにも感想が出てくるのがすごいと思う。最後まで全部みたドラマって、「感動した」「みんな幸せになってよかった」「おもしろかった」という感想がまずあふれてくると思う。だってひとつの季節に十何時間もかけたドラマだから。共感できて、感動できて、いいドラマだった、とすっきり思って終わりたいから。

けれどこのドラマには、良かった、だけで語りつくせない感想があった。もちろん感動したし、夏くんいいやつだなあと思ったし、コロッケ食べる弥生ちゃんが世界一かわいいって確信したし、あんまり登場しないのに大和が最高な弟すぎて彼が思い悩みながら生きていく主演の続編お願いしますって思った。(大和への気持ちが溢れすぎている)

けれど、なんだそれ! 理解不能! みたいな、ちょっとした怒りのような、モヤモヤのような感想も残った。それがすごい。

全部しっかり理解することはできないけれど、こういう人いるよな~そう思うこともあるのかな~みたいな、あきらめのような感想。それは、リアルな人間関係そのものだった。だからこのドラマって、語りつくせない。そういう世界で、家族と、家族じゃない人と、毎日生きているから。ぜんぶきれいな物語として、全然語りつくせなかった。賛否両論、その気持ちもぜーんぶ分かる気がするし、いろんな感想が入り乱れてておもしろい。そんなドラマだった。


いつか届く手紙


ここからは『海のはじまり』の話だけではないのだけれど、あるドラマの「手紙」が好きすぎるという話をしたいのです。長くなってすいません。

『海のはじまり』最終話で、水季が夏に残した手紙が読み上げられた。古川琴音さんの声って、その存在する姿って、ほんと強くて儚い、唯一無二感がすさまじかった……ボロボロ泣ける。

わたしはドラマで登場してくる手紙が好きだ。いま目の前にいないのに、その人とお喋りをするときよりもその人の気持ちがこもっているような気がして、便箋を通して表情が見えるような気がして、そんな手紙というかたちで言葉が届くのが好きだ。自分宛じゃないのに、ボロボロ泣いてしまう。

特に、みなさんご存知の名作ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』に登場する手紙が好きだ。第1話で主人公の母(満島ひかりさん)が娘に宛てた手紙。これがもう、なんとも好きすぎて、何度も何度も、心の中で繰り返してきた。あのドラマは手紙のシーンに限らず、空で言えてしまう台詞が多い(いつ恋ガチオタ)

「葡萄の花は葡萄の味がする。バナナの花はバナナの味がする。愛するって、心から心へと残していくことだと思う」という言葉が印象的な手紙。

あのドラマを観ていた当時、わたしは社会人になりたてで、一人暮らしを寂しいと感じることもないくらいに忙しく働いて、深夜に職場で自然とこぼれてしまう涙を服の袖で雑に拭いて働いていた。社会ってこうなんだ、こうやってみんな大人になるんだ、そう思ってなにも感じないように働いていた、と思う。あの頃に唯一録画してみていたのが『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』というドラマだった。(有村架純さんが好きだからという理由だけで)

睡眠時間を削って第一話をみて、ボロボロ泣いた。心で泣くってこういうことだ、と思い出した。

「たくさんの人に出会ってね。自由に見て、自由に話して、自由に手に取って自由に歩いて、好きなように生きて。それはあなたが心に持って生まれた大切な宝物だと思う」

手紙で読み上げられた言葉が、ぜんぶ心を締め付けた。自分が育った場所、育ててくれた人、一緒に笑って生きてきた人、がんばりすぎる自分。自分が大事にされていること、大事にして生きていきたいこと。いまの自分は全部ないがしろにして生きていて、悲しいような、情けないような気持ちだった。

最終話で主人公が母に宛てた手紙も好きだった。「努力って時々報われる」何度もあの言葉をお守りにした。

あれからずーっとあのドラマに支えられている。いま見返すとあの頃とは違う響き方がする。好きなドラマってずっと好きだし、もっと好きになっていく。あの頃に出会えてよかったなあ、と思う。

『海のはじまり』最終話の手紙も、きっとがんばってだれかと生きている人の救いになるのだと思う。半分くらいしか分からなかった海ちゃんにも、きっといつかぜんぶ届いて、寄り添い続けるのだと思う。


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