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詩集「声を聞かせて」

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あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
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2022年11月の記事一覧

泣いたのは

泣いたのは

ねえ
彼女が泣いたのは
誰のせい

ねえ
彼女が泣いたのは
ねえ
なんの為

触れるはずの指先は
冷えて固まったまま
彼女の涙を拭えずに

ねえ
こぼした涙の行先は、どこ

ねえ、ほら、ねえ
声が失われていく

声を、聞かせて

声を、聞かせて

思い出が遠くなる前に
嫌いになってしまう前に

もう一度
声を 聞かせて

友達のままでいいから
もう一度
声を
聞かせて

優しい人

優しい人

いつだって
あなたは優しい人だった
いつだって
あなたは正しい人だった

忘れられた約束
波間にかき消された、声

繋がっていたはずの手は
いつの間にかほどけて

あなたは
ただ
優しい人だった

あなたも、わたしも

あなたも、わたしも

月のきれいな夜でした
触れられない距離を
三センチ残して

きっと いつか
思い出すのでしょう
こんなにも
切なくなった日のことを
他人事みたいな顔をして

あなたも
わたしも
ひとつにはなれずに

温もりのある場所

温もりのある場所

正しい人の
正しい声が
聞こえる場所はどこですか

心の先からしんと冷えて
自分を
未来を
見失いそうです

正しい人の
優しい声は
いつかのどこかに
今もあるのでしょうか