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詩集「声を聞かせて」

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あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
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2019年6月の記事一覧

優しさが眠る頃

歌うことも
風を読むことも出来ずに
ぼんやり
ぼんやり
今日を眺める

約束も
永遠も
忘れてしまった
残ったものは
記憶の断片

誰かの優しさが眠る頃
私は
たぶん
ひっそりと泣く

23時53分

虫除けの小さな箱型の
ジジジジジという音
目覚まし時計は
決められた時間まで
密やかな呼吸を続ける

今日も夜にひとりきり

気だるさを知らんぷりして
どこにも行かないで
指先 見つめて

増えていくばかりの

雨が降りそうで
降らなさそうで
お気に入りの傘は
今日も出番がないまま

どこにも行けない
どこかに行きたい
どこにも行かない

どれも選べず
あなたの手も握れず

増えていくばかりの言い訳