マガジンのカバー画像

詩集「声を聞かせて」

144
あなたの声をきかせて。 そしてこっそり私の声をきいて。
運営しているクリエイター

2019年2月の記事一覧

ないものねだり

行かないでほしい、と
告げていたら
きっと
何かは変わっていたのでしょう

わたしも
あなたも
ふたりでいることに
臆病になり過ぎていた

光のあたる優しさに意地をはって
あるものに目を向けないで
ないものばかりに目を向けて

あなたに
もう少し
甘えられたら
きっと
何か変わっていたのでしょう

あの日のこと

夜が冷たいのは誰の為でしょう
夜が優しいのは誰の為でしょう

誰かのため息
彼等の悲しみ
私の少しの涙

あの日
泣き笑いで
呼吸をしたら
今、何か
変わっていたのでしょうか

君と恋を

見つめたままでいよう
遠くから

永遠の
約束なんて出来ないから
このまま
見つめたままでいよう

君を
この恋を

眠りましょう

眠りましょう
明日はすぐそこ

眠りましょう
誰かの温もりを思って

いつだって
繋がれた手は
きっと
きっと
真実であり優しさだった

雨はまだ

夜が雨を降らせて
星も月も
見えなくなってしまった

告げられた別れの言葉は
きっと
精一杯の優しさ

泣いたのはあなた
泣けなかったのは私

雨はまだ止まない

カタカタと鳴る

カタカタと夜が鳴る
寂しそうに俯いて
悲しそうに強がって

私はどこへ行くのでしょう
彼等はどこへ行くのでしょう
言葉も交わさないまま
次の約束もしないまま

カタカタと明日の声がする
遠くの方で
星に紛れて

カタカタと鳴る

待っている

満ち足りているはずの日常と
大事な事は
いつも
昨日の中にあるような気がして
寂しくなる、夜

子供の頃を過ぎた大人でも
悲しみも虚しさも
平等にやってきては
夜の隅っこで、泣く

そして
何もなかったように
密やかに待つ
朝焼け

優しくて悲しい

好きですと告げても
ただ黙って
笑っているだけの人でした

好きだった
その優しさを
見失ってしまった
あの雨の日
あなたの背中も
わたしの恋も
どこか寂しそうで

あなたは
優しいけれど
悲しい人でした

あなたは

寂しさ

とても綺麗な夕焼けと
君の横顔を
密やかに
眺めていた

またね、の一言が
どこまでも澄んで
君の寂しさを
はじめて知る

離れた手は
きっと
もう
出会わない

手紙

しまったはずの思い出を
引っ張り出しては
昨日も
今日も
出さない手紙を
ずっと書いている

そうそれは明日も

届けたい相手は
あなたではなく
遠い日のわたし

後悔しないはずだった答えを
遠く遠くにみて
ほんの少し
胸がチクリと痛んだ

誰と

あなたに会いたいと願った今日は
ほんの少し
何かから逃げたくなった今日でした

雨の音が
悲しく
寂しく
今日に色をつけていきます

あなたは

誰と居るのでしょうか