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ものを書くときは、ずっと背伸びをしている。その背伸びがいつか役に立つ。かもしれない

部屋を片付けていると、昔書いた小説が出てきた。
「うわぁ・・・」ルーズリーフに鉛筆で書き殴られたものを見て、この字は間違いなく自分のものだと思うと共に、怖いもの見たさから開いてみた。

「うわぁ・・・」しまいきれていない風呂敷が残る大袈裟めいたファンタジーや、星新一に中途半端に感化されたであろう後味の悪いショートショート、大した経験もないのに恋に不安を覚える女の子の恋愛話。自体験をパロディした奇譚。

「うわぁ・・・」自分は今も昔も、何も変わっていないなと思った。

この時の自分は、うんと背伸びをしている。
数センチくらい背伸びをして、世の中のことを知った風な顔で何かを書いている。ものを書くときは、そのことについて知っていなくてはならない。主人公が何を得て何を失っても、その全てに責任を持たなくてはならない。

あのとき趣味とはいえ、文芸部に所属し、書いたものを友達と見せ合って、わずかばかり「物書き」の目をしていた(?)私は、少なくとも世界をそういう目で捉えていて、なんらか思いついたか体験したことは「これを物語に活かそう」と前向きに捉えていたに違いない。ポジティブだかネガティブだかわからないが、絶望するようなことはない話だ。

その後、背伸びをする余裕がなくなった私は、ちょうど自分が書いた小説のように、人にはお見せできないくらいドタバタと日常を生き、意味のないことでクヨクヨクヨと悩み、気長に誰かを好きになっては自分のどうしようもなさを嘆いている。成長してるんだか退化しているんだかわからないが、

「今あったことを、自分が書くもの(語るもの)にいつか活かそう」
この考えは、何かのヒントになるのではないかと思う。

そう思いながら、過去に書いたものたちを、家族の誰にもバレないように
引き出しの奥底にしまっている。バレたときは燃やすか自分が燃えるしかない。

2021.08.17

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