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今日あったクソみたいな出来事

 今日私はメガネ屋に行きメガネを新調し、古着屋に行きウィンドウショッピングをし、喫茶店に行ってコーヒーを飲み、美味しいフレンチトーストを食し、短い時間ながら友人と語った。
 珍しくまあ無駄にしなかったなと言える日を過ごした気がする。無駄な一日が悪い訳ではないと思ってはいるが、やはり無駄な日々が続くとさすがにこの私も参ってしまい、いい加減この狭くて暗い巣穴から出てなにかせねばという気になってくる。
 軽く茶をしばいたその帰り道、駅で珍しいガチャガチャを見つけた。絵本シリーズのノンタン、同じくそのねずみくん、喫茶店の何かしらが貰えるやつ(?)、あと一つはなんだったか忘れてしまったが、その4つが地下道の端に並んでいた。
 その中の一つの喫茶店のやつのガチャガチャでは、喫茶店にあるようなイス、押すと光るKEY COFFEEの看板、レトロなボードゲーム(?)、そして灰皿とマッチとコーヒーの入ったグラスとコースターのセットの4種類のミニチュアからランダムに排出されるという、なんとも私からすれば魅力に溢れたものだった。昨今ガチャガチャが流行っていると小耳に挟んではいたが、いざ目の前にすると回してみたくなるものである。さあいざ回さんとするも、小銭がない。はてこれはどうしたものかと思い、自動販売機があったのでそこで小銭に変えようとした。しかしこれまたどうしたものか、1000円札しか使えない自動販売機しかないではないか。5000円札しか持ち合わせていない私からすれば街で配られるティッシュの方がこのバカみたいにでかい機械よりもまだ役に立つというものだ。しかし話すことも出来ない自動販売機に無駄な説教を垂れていても仕方がないので、渋々100円ショップで使うかどうかも分からないような適当な物を買い、百円玉を財布いっぱいに手に入れガチャガチャへと向かった。

 今度こそさあ回すぞと百円玉を5枚入れ、ハンドルをぐるぐると回した。このガチャガチャを回す高揚感とワクワクたるや去年の正月以来ではなかろうか。去年の正月はカービィのガチャガチャを回した気がする。今頃はどうせ家のどこかに転がっているだろうがそんなことは今は関係ない。
 そうこう考えているうちに出口にカプセルが落ちてきた。蓋を開けカプセルを取り出し、テープを剥がして中身を開けた。
 そこにはマッチなどのセットが入っていた。ボードゲームが欲しかった自分からすれば少し残念ではあったが、まあいい全部可愛くて何が当たっても後悔は無いと思っていたから問題ない、と中身をじっくり見ることにした。
 ふむふむ、こういうものが入っているのか、と眺めていると、何やら様子がおかしい。この種類の中身なら、マッチ、灰皿、コースター、ストロー、コーヒーのグラス、そしてコーヒーの中身の黒い塊がひとつずつ入っているはずである。しかし実際はどうだろうか。まずマッチ箱がひとつ、これは良い。次にコースター、これも間違っていない。次に灰皿、次にストロー。ここまでは何も文句はない。問題は次の中身である。謎の黒い塊が2つ。それで終わり。やっぱりおかしい。しかし何度観てもこのコーヒーの中身のような黒い固まりが2つ。アイスコーヒーのグラスなどどこにも見当たらない。これは一体どういうことなのだろうか。確かに私はコーヒーが好きだ、毎日飲んでいる。そんな私にはコーヒーだけをやろうと神様がお思いになったのだろうか。だとしたらいらぬお世話というものだ。私はグラスに入った飾るためのコーヒーを望んでいるのであり、グラスに入っていない謎の黒い塊を2つ欲しかったわけではない。いくらコーヒーが好きな私でもさすがにこれには参ってしまった。これでは部屋に飾れないではないか。グラスがふたつならまだしも、黒い塊ふたつなど、誰が部屋に飾るのだろう。しかし当たってしまったものは仕方がない。文句を言ってもお金が降ってくるわけでもない。この500円かあれば飯が食えたのにと思いつつ、私は酷く気持ちを沈ませ地下鉄に乗り、暗くて狭い巣穴へと戻った。

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