病床管理支援事例(入院時支援加算の活用)

一般病棟入院基本料を届出しているA病院では、看護部だけでなく病院全体での在院日数の管理に対する意識が低かったことで、入院期間Ⅱ越えの患者が増えてしまい、収入が伸び悩んでいました。DPC病院では、入院期間により1日当たりの入院単価が変わってしまうため、DPC制度に則った在院日数の管理を行うことが重要です。在院日数については、診療報酬改定の度に短縮傾向であり、平成30年診療報酬改定では入院時支援加算が新設されています。入院時支援加算は入院前から外来で患者情報や服薬中の薬剤の確認などを行い、円滑な退院支援で在院日数の短縮に繋げることが目的で新設され、入退院支援加算に上乗せ算定できる加算です。少し古い調査結果になりますが、令和元年度入院医療等の調査で入院時支援加算の届出状況を確認すると、急性期一般入院料1を届出しているn数570施設のうち、72.1%が届出している調査結果があります。届出していない残りの病院は、入院時支援加算を届出できない産科病院も入っているため、積極的に届出している病院が多いと推測できますが、A病院は入院時支援加算には全く取り組んでいませんでした。

※中医協総-1 元.11.29 入院医療(その3)より引用

A病院が入院時支援加算を届出していなかった主な理由としては、入院時支援加算に関係する看護部や薬局、栄養科のそれぞれの部署が追加で発生する業務の負担を嫌がって自然と回避していたことが挙げられます。入院時支援加算の点数は決して高くないので、業務負担の割に稼げていない感覚に陥ってしまう可能性もありますが、入院時支援加算は他の診療報酬に関連する項目が意外と多い加算です。入院時支援加算の項目に設定されているアやイでは総合評価加算、ウでは褥瘡ハイリスク患者ケア加算、エでは栄養サポートチーム加算、オでは病棟薬剤業務実施加算、カでは入退院支援加算などに関連しています。特に病棟薬剤業務実施加算などは単価が高い代わりにハードルも高い加算ですが、直近の診療報酬改定で人員配置基準が緩和されたため、検討しやすくなっています。


※中医協総-1 元.11.29 入院医療(その3)より引用

付加価値が高い入院時支援加算をDPC病院が取り組むことは、在院日数短縮による係数評価での収益増や患者満足度向上、病棟スタッフの業務負担軽減に繋がるなど多様なメリットがあるため、総合的に考えると取り組むメリットは高いです。このようなメリットをA病院の医事課から看護部へ説明し、医事課と看護部で協力して院内でのコンセンサスを得て、病院全体で入院時支援加算を取り組むことが決定しました。入院時支援加算を実際に取り組む際には、パスの作成や整備を行うと同時に、DPC分析ソフトを医事課が活用し、A病院と同規模病院である他院のパスをベンチマークし、在院日数の最適化に繋げることが可能になりました。他院のベンチマークデータを活用したことで、過剰な検査や投薬も見直すことができたので診療内容の標準化にも繋がりました。

また、A病院ではDPCの知識が無い一部の医師が退院許可だけでなく退院日まで決めていたので、入院期間Ⅱを超えるケースが多発していました。独裁的な対応をする医師に対しては、医事課で複数の他院とのベンチマークデータを準備し、A病院の在院日数が最適ではないことやDPC制度を踏まえた在院日数の重要性を看護部から丁寧に説明し納得してもらったうえで、全病棟の退院調整に関する権限を看護部に集約しました。これにより意味のない入院期間Ⅱ越えの入院患者が発生することは一切なくなりました。大半の病院は看護部が退院調整の権限を保有していると思いますが、A病院のように在院日数の重要性を把握していない医師が退院調整の権限を持つことは減収リスクが伴います。もし、A病院のような体制で稼働している病院があれば、看護部と事務部で協調しながら適正な病床管理に繋げていただきたいです。

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