医療療養病棟の集患支援事例

療養病棟入院基本料2を届出しているB病院では、入院患者における医療区分2・3割合で50%以上の実績が必要ですが、医療区分1の患者が多く入院していたので医療区分2・3の割合が50%前半のギリギリで稼働していました。療養病棟入院基本料は疾患や状態、処置の内容などにより医療区分2・3に該当する患者を受け入れる特徴があるので、処置の喀痰吸引の回数などで医療区分2・3に該当している場合は、入院期間中に医療区分1に下がるリスクがあります。このような特徴を踏まえて療養病棟では医療区分2・3割合の実績をクリアする為の患者を集める必要があり、B病院では法人内の急性期病院からの患者受け入れメインで対応していました。


※令和4年3月4日版 厚生労働省保険局医療課 令和4年度診療報酬改定の概要 入院Ⅱ(回復期・慢性期入院医療)より引用

しかし、法人内の急性期病院からB病院に紹介される患者は喀痰吸引で医療区分2・3に該当する患者の紹介が多かったので、入院後に医療区分1へ変更になるケースが多く、医療区分2・3割合の実績が50%台から抜け出せない大きな要因となっていました。法人内の急性期病院から喀痰吸引患者の紹介が多かった理由としては、転院調整を行う担当部署の知識不足に問題がありました。法人内の急性期病院の紹介業務を行う担当部署への対策としては、医療区分2・3に該当する患者の認識擦り合わせを行う目的で療養病棟のスタッフと急性期病院の転院調整を行う担当部署で療養病棟内のラウンドを実施しました。療養病棟ラウンド時に医療区分2・3の対象患者を実際に目で見ながら、療養病棟スタッフの医療区分チェックを行う視点を共有したことで、喀痰吸引以外の医療区分2・3該当患者を紹介できるパターンが大幅に広がり、お互いの転院調整業務がスムーズに実施できるようになりました。医療区分2・3に該当する患者が治療の継続により入院途中で医療区分1に下がってしまう課題に対しては、看護側の業務負担軽減に繋がるメリットがあったとしても入院基本料の医療区分2・3割合ではマイナスになるので、処置ではなく疾患や状態で医療区分2・3に該当する患者の受入を優先するルール決めを行いました。疾患や状態の患者を集めるうえでは、法人内の急性期病院だけでなく、地域の病院やクリニック向けの集患強化も併せて実施しました。医療区分2に該当するパーキンソン病関連疾患の紹介患者を増やす際には、B病院の二次診療圏内の神経内科を標榜している病院やクリニックを医療介護情報局というデータベースを活用して可視化し、営業リストの作成後に看護部と事務で定期的な訪問やFAXなどによる空床状況の共有を行ったことにより、患者獲得に繋がりました。

また、医療区分2・3割合を重視するあまり病床が空いていても転院患者の受入を断るケースも多く発生していました。医療区分2・3割合の50%ギリギリで稼働していたことにより受入制限が定期的に発生していましたが、医療区分2・3割合が80%近くまで改善したことにより転院受入依頼を断るケースは発生しなくなりました。B病院のように医療区分2・3割合の実績要件をクリアするために空床が発生することはあるべき姿ではないので、看護部と事務部で協調して医療区分2・3の患者を集めるための戦略立案や実行が必要になります。

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